劇場公開日 2021年7月30日

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「学園ミステリーものかと思ったら、まさかの展開な一作。」映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0学園ミステリーものかと思ったら、まさかの展開な一作。

2021年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

長年「クレヨンしんちゃん」のアニメシリーズ、劇場版の製作に携わってきた高橋渉監督によるシリーズ29作目。予告編を観ていて、「おバカ」の表現とかどうなんだろう、とちょっと心配になっていたけど、演出の手際が見事で、それほど引っかかりを感じず鑑賞できました。

たださすがの高橋監督の手腕をもってしても、今回は少々要素を詰め込みすぎた感があり、本筋とあまり絡まない描写で物語の流れが途切れるところもごく一部ありました。それでも一見して軽めな演出に非常に重いテーマを含めて提示してみせるところはさすがで、エリート教育批判に留まらず、自分も美味しい思いができるかも、と気がついた群衆が、容易に集団的暴力や足の引っ張り合いに走ってしまう恐ろしさすらも描いていました。

外部の人間からは眩しいような超エリート校に映る天カス学園は、実は内部が超エリート階層と落ちこぼれ階層に二極化されている、という設定は、『パラサイト』(2019)や『スノーピアサー』(2013)などを連想させます。登場人物達の言動の端々に漂う階層間の羨望や敵意の生々しさは、幼稚園生が私立学園に入り込んでしまった、という設定がかすんでしまうほどです。

「階層を垂直構造で図式化し、その闘争をエンターテイメント作品として描く」という試み自体には、上記二作品を含め多くの先達があるため、それ程の新鮮味はないのですが、『パラサイト』の描写に対する一つの応答として本作を捉えてみても、やはり見事な語り口と言えると思います。

yui