「クレヨンしんちゃんは大人の階段を登ると泣ける。」映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 みうらさんの映画レビュー(感想・評価)
クレヨンしんちゃんは大人の階段を登ると泣ける。
久々のクレしん映画。世評の良さと泣けるとの口コミから観に行ってきました。
結果、メッセージ性は非常によかったのですがもうあと少し踏み込んで欲しかったという印象。その一歩で、原恵一監督のオトナ帝国や戦国大合戦のような「泣ける」映画になっていたと残念でなりません。
場内は家族連れがほとんどで、しんちゃんのケツ出しでは笑いが起こり、吸ケツ鬼の登場シーンは怖いという声も聞こえ、非常にいい雰囲気でした。
誰かの映画評で、「クレヨンしんちゃんの映画は主人公であるしんちゃんが大人へと成長するところに泣けるポイントが詰まっている」ということを言っていて、なるほど、すごく納得したのを覚えています。
オトナ帝国では文字通りオトナへの階段を東京タワーの階段に見立て駆け上がっていく姿が印象的でしたし、戦国大合戦では、初めて死というものに直面することで大きな成長が描かれていました。
何十年も続く日常アニメで成長しない主人公が、映画で様々な経験を積み重ねていくものは、他の長寿アニメであるドラえもんやポケモンでも同じことが言えそうです。
そして、今作ではしんちゃんたちが学校に通う設定です。まさしく成長を前提とする場所で、カスカベ防衛隊の友情が描かれたら泣くに決まっているでしょう。
今作の泣けるポイントは、進学の別れと友情だと感じました。
しんちゃんの友達風間くんにフィーチャーして、物語は進んで行きますが、風間くんは優秀で真面目な男の子です。もちろん小学校受験を狙うような家庭。
そうすると、必然的に将来公立小学校にいく子どもとは別れなければなりません。
しんちゃんたちは、おそらく公立の小学校なのでしょう。それを風間くんも感じているからこそ、しんちゃんとは離れたくない。だから必死で、みんなとエリートを目指す。なぜ劇中でみんなとエリートポイントを稼ごうと必死になったのかも納得です。しかも、これは風間くんなら、エリートポイントを稼ごうと躍起になるのも当然のキャラなのでなぜこんなに必死なのか考えず、上手い伏線になっていると思いました。
この将来を見据えた風間くんの大人びた考えに涙するのです。
誰もが経験したことのある友達との別れを、風間くんを通して思い出させてくれる。そして、そんな必死な姿に涙が溢れてきます。オトナ帝国にも通じる、大人向けの
テイストです。
では、何が不満だったのか。
それは、その風間くんの考えを手紙という形で分かった上で、ラストのマラソンシーンでしんちゃんの返事が「今を生きるしかできない」的なニュアンスの解答一言だったからです。
えっ、そこはもう少し引っ張ってよ!
風間くんの必死の思いも、しんちゃんにとっては来ることのない(歳を取らない)未来の話としか受け取られていないように感じてしまいます。
そして、風間くんにありがちなノリツッコミの滑り気味なギャグで物語はぶつりと閉じてエンドロールが流れます。
これじゃ、物足りなさが勝っちゃいます。せめて、最後家に帰った時に学校の話しをみさえやひろしにするような未来を考えるシーンを入れてくれなきゃ納得できません。
これじゃ涙が出きりませんよ!
前評判が良かっただけに、このぶつ切りのエンドには納得できない。もう少し泣きたかった。
そんなこんなで、評価は3.5です。
他にも言いたいことはたくさんありますが、子ども向け映画にどこまで求めるのか難しいところもありますし、また、会場の終わった後の子どもの雰囲気はそこそこ良さそうだったので、泣けたかどうかだけで評価しました。