「これぞ思春期心理学映画」夏時間 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ思春期心理学映画
素晴らしく私好みの作品で、こういう繊細な作品が大好きです。
娯楽映画だけでなくこういう作品(しかも、1990年生まれの新人女性監督の長編デビュー作)を作れる韓国映画界の底力に圧倒されます。
よくデビュー作こそ、作家の最高傑作になるケースが多いと言われますが、本作もその類の作品であり、今後の映画史にこの作品名も連なるのであろうと思える作品でした。
ある思春期の少女の夏の一時を描き、その一時が永遠の様にも感じらる、その時期特有の感性が見事にスクリーンに写し出された作品でした。
その時期、例え周りに悪い人がいなくても、絶えず怒り・焦り・悲しみ・落ち込み・苛つき・不安・悩み・反抗心という感情に覆いつくされている少女に、遥か昔の自分の思春期が重なり合い、見ていてたまらなく切なく愛おしく懐かしく感じてしまいました。これぞ思春期の心情なのでしょう。
心理学で人間にはセキュアベース(安全基地)が必要というのを聞いた事がありますが、それが家族であったり家であったり場所であったりするのだそうですが、本作の少女にとってはまさに祖父の家がセキュアベースであり彼女を見守ってくれていたのでしょう。
役者は全て素晴らしかったですが、特に主役の少女役のチェ・ジョンウンが素晴らしく、心の機微がそのまま容姿に表情に現れていて(恐らく純粋な韓国美人となる顔立ちの)子供と大人のはざまの一番純粋で魅力的な時期の表情を、奇跡的に映画が切り取れた最高の瞬間だったのでしょうね。
コメントする