劇場公開日 2021年2月27日

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「西日の射した夏の夕暮れ」夏時間 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5西日の射した夏の夕暮れ

2021年5月10日
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鑑賞方法:映画館

父と弟とともに祖父の家で夏休みを過ごすことになった少女。たいして離れてはいないようなのに、疎遠な間柄のようで、ぎこちなく落ち着かない。
祖父が独り身というのが面白い。韓国映画のイメージでは、優しくて賑やかな祖母が出てきそうなものだが。姉弟の母親も離婚して、いない。
祖父の家でのまったりした夏休みの感じは、どこか懐かしい。特に、西日の射した夕暮れの感じ。吊るした蚊帳とか窓辺のミシンとか、古い日本映画の雰囲気もあり、監督が小津安二郎好きということがわかる。
無口な祖父が、夜中に一人で歌謡曲に聞き入っている姿を、少女が階段から見つめるシーンがいい。エンドロールを含めて、歌謡曲の使い方がうまいが、その辺は是枝裕和作品の影響か。
大きな出来事は起こらないが、ラストでは(予想したとおり)祖父が亡くなる。名状しがたい感情を溢れ出すような少女の慟哭が、胸に迫る。

山の手ロック