劇場公開日 2021年1月29日

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「瓦礫の山を前にした人達が、その後どう生きたのか。」心の傷を癒すということ 劇場版 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0瓦礫の山を前にした人達が、その後どう生きたのか。

2021年3月8日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

阪神・淡路大震災の衝撃の凄まじさは、震災そのものの被害の大きさもさることながら、日本が抱えている問題をも、私たちに突きつけました。

震災の甚大な被害を7時間後に知った総理大臣ってのは論外としても、政府対応の酷さや、自衛隊が被災地での本格的活動開始するのに3日を要した事。震災の8時間後には救援体制を敷き終わっていた米軍空母インディペンスの受け容れの拒否。

救助活動に必要なハードの決定的な不足と運輸手段の問題。レスキュー・医療の人的資源の不足。災害報道の在り方。犯罪と問題行動。

そして復興。

震災の教訓を活かして変化したところ、何の進化も無かったところ、むしろ退化したところは、東日本大震災の際に明らかになります。

PTSDなんて言葉が一般的に知られるようになったのは、阪神淡路大震災の後の事。つまりは、被災者の心の傷を癒すという事の意義・重要性が一般的に認知されていない時代に、被災者の心に寄り添って生きた安先生には、頭の下がる思いです。

安先生の人柄の描写、全般的に抑え気味で間を大切にした演出が好き。震災遊びを止めさせるために、グラウンドを「片付けた」人たちの心は、この時点で前を向いてるんですよね。

立ち上がって、前を向いて、歩き出す人々。
その支えとなった安先生自身が、心の傷を癒すという事の意味を知るのは、死の直前の事。「独りぼっちにしないという事」は、心の傷を癒すという事。「あなたは独りぼっちだ」と、過剰に騒ぎ立てて傷を付けて回る人が闊歩している世の中に御座います。「傷を癒す」とは、どんな行動を言うのかを、この映画は教えてくれます。

NHKのドラマの総集編だってことで、大して期待はしてなかったんですが、結構沁みてしまいました。

良かった、地味に。
沁みた、相当。

bloodtrail