「日本各地の三組の石橋母とユウの親子。 ひとつは神奈川県に住むフリー...」明日の食卓 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
日本各地の三組の石橋母とユウの親子。 ひとつは神奈川県に住むフリー...
日本各地の三組の石橋母とユウの親子。
ひとつは神奈川県に住むフリーライター・石橋留美子(菅野美穂)。
かつては売れっ子の雑誌ライターだったが、いまは自身のブログを書く程度の、いわば元ライター。
彼女には10歳の長男ユウのほかに次男がいる。
カメラマンの夫(和田聰宏)は家事にも子育てにも非協力的。
ある日、留美子にかつての出版社から仕事の依頼が入る。
が、同時に、夫は連載写真の仕事をクビになってしまう・・・
つぎに静岡県に住む専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)。
裕福な夫(大東駿介)の実家の敷地内に夫婦の住宅を建て、優等生の息子ユウと三人暮らし。
夫は毎日、東京までの遠距離通勤。
母屋に暮らす義母とは、育ちが違うせいか、なんとなく反りが合わない。
そんなある日、ユウがイジメをしていると、被害者の母親から電話がかかってくる・・・
さいごは大阪郊外に暮らすのシングルマザー・石橋加奈(高畑充希)。
みるからに・・・の貧乏所帯、長屋暮らし。
借金を抱えながら、コンビニとクリーニング工場の仕事を掛け持ちして凌いでいる。
そんな中、経営不振を理由に工場をリストラされてしまい、追い打ちをかけるように定職に就かない弟(藤原季節)が事態を悪化させてしまう・・・
といった物語で、書いたところまでで、映画は中盤を過ぎています。
つまり、前半は、事ここに至るまでの様子を丹念に描写していて、「早く事件が起こらないかしらん・・・」と普通のサスペンス映画を期待しているとイライラするかもしれません。
ま、サスペンス映画?というような先入観を抱かせるのは、「息子を殺したのは、私ですか・・・?」というキャッチコピーのせいなんですが。
この惹句がなければ、リアルな三組の母子の物語、と観、そして、そのとおりに作られているのですが、この惹句がことで、映画にある種の謎(隠された真実、と言い換えてもいい)が沸き上がり、隠された真実が終盤、一気にあらわになってきます。
その仕掛けとして用いられているのが、三人の子ども・ユウのモノローグで、冒頭からモノローグが用いられているにもかかわらず、「母親の物語」として映画は語られ、観客も「母→子の物語」として観ることなります。
が、それぞれの母子のハナシにある種の違和感を中盤以降感じるようになり、子どもたりのモノローグにより、物語の視点が「子→母」へと転換します。
転換することで、隠された真実があらわになる・・・
なかなか上手い脚本と演出です。
出演陣では、母親役いずれも好演。
個人的には、大阪ネイティヴの高畑充希が、30歳をこえたばかりの大阪の若いおばちゃんになっていて、ビックリでした。
男優陣は、いやもう、ゲスばかりで・・・って、俳優さんたちが悪いわけではないんですが、現在の家族関係においては男性はまったく機能していない(というか役立たず、むしろ害悪)と描かれており、同性として居心地の悪いこと悪いこと。
あらすじには書きませんでしたが、山田真歩、烏丸せつこ、真行寺君枝、大島優子の女優陣も好演です。
男優陣では、静岡在住の石橋あすみの実父役・菅田俊がいい男性役を演じていました。