「多くの人が鑑賞し、改めて動物に対する意識を考えるべき」ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日 KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
多くの人が鑑賞し、改めて動物に対する意識を考えるべき
横浜アバック座にて試写会鑑賞。まだ2021年は始まったばかりだが現時点は1番心打たれ好きな作品である。
主人公の少女ミアは父親が南アフリカでライオンファームを経営することになりロンドンから移住する事となる。国を跨いだそして都会から田舎への引っ越しとなるため学校でも馴染めず、そして家族にも強く当たり不満な生活を日々送る。
当初はライオンにもそしてライオンの赤ちゃんにも興味を示さなかったがホワイトライオンのチャーリーが生まれ、時間が経過すると共に互いが心惹かれ合いそして親友となる。
ただやはり問題も付いてくる。成長するにつれて体も大きくなり力も強くなる。襲う事が目的ではないとはいえ、人間をそして家族を襲ってしまう事も時折出てきてしまう。そのような一つの出来事が大惨事を招きかねない。3年経ったあたりで父はチャーリーを売り払うことを決断する。
ただここでミアは大きな問題と遭遇してしまう。
ライオンファームはライオンを育て購入希望者に売るのがもちろん目的ではあるが、その購入者がライオンをどう扱うかまでは関与できない。
父からはサーカスや動物園に売ると聞いていたが、実際はハンターに売り彼らは買ったライオンをハンティング別名缶詰狩りをする事だけを目的とした取引しかせず、購入者の多くがそれが目的だということを知ってしまう。
それらのハンティングは南アフリカでは合法とされており世界中の多くが南アフリカに集まり行われるそうだ。その為これらの取引で儲けたお金が南アフリカの国の経済を支えているという。
そこでミアはチャーリーと共に逃げ出し、そしてライオンをはじめとした動物園にを殺す事を許されていない自然保護区に送り届ける旅に出る。
この作品は前半はミアとチャーリーの人間と動物の友情を温かくそして美しく描かれている。
そして後半になると缶詰狩りの問題が主となりミアとチャーリーが生き延びる為に必死になる強さが描かれている。
前半は温かい気持ちで見る事ができ、時にはミアの暴走に大人目線で呆れてしまうシーンもあるが、後半になるとこちらも事情を知ったが故にこのミアの勇気ある暴走を応援する気持ちに変わって見てしまう事となった。
南アフリカの経済を支えており、これらが完全に規制されれば南アフリカ国民が苦しむ事の問題ももちろんあるだろうが、そんな人間の問題に動物の命が奪われていい理由なんてのは何一つない。
難しい事かもしれないが南アフリカの経済を安定させる事は他にも方法はあるだろう。
こういう問題は多くの人が実情を知り声を上げる事が問題解決への近道に思う。
そういう意味でもこの作品は世界中の多く人が鑑賞し、そして改めて動物に対する考え意識を改めて考えなくてはいけない。
エンドロールで現在は2万頭までライオンは減り、このペースだと20年後には絶命してもおかしくないペースだと説明される。これは絶対に許されては行けないそして取り組まなくてはいけない問題であろう。
どんなに豊かな社会になってもまだまだ原始的且つ進歩のないこのような問題を知ると本当に胸が痛くなる。
前半のミアとチャーリーの愛くるしい描写を見た後だけにこの缶詰狩問題が非常に強く憤りを感じさせられた。
また映画作品としてはCGが殆どないらしくその為迫力や時には距離感の近さから恐怖感もありとても楽しめた。
動物に対する愛とそして世界が抱える問題への憤りに対する心の移り行きもいい流れで感じることができとても貴重な時間を過ごす事ができた。