「(劇場版は)デフォルトで「バリアフリー上映」です。」サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
(劇場版は)デフォルトで「バリアフリー上映」です。
今年130本目(合計194本目)。
アマゾンプライムなどでは先行で観られたようですが、劇場版では内容のメッセージ性に配慮してすべていわゆる「バリアフリー上映」ということです(公式サイトに記載あり)。
そのため、アマゾンプライム版の感想とはまた違ったところがポイントになるのかなと思います。
「バリアフリー上映」というのは、たとえば音楽が流れてくるところは「♪~」とか表示されたり、視覚障害をお持ちの方であれば音声で「●×が入っていくシーン」とか聞けたり(貸出できる専用の機械があるそうです)タイプの映画の類型を言います。
上記のような事情から、劇場公開は今日ですがすでに多くの感想があり、お話の流れ「それ自体」は同じであり、他の方と同じことを書いても仕方がないのでほぼほぼ省略しましょう。私自身も感想としては多少の差異はあっても多くの方の感想と同じところに行きついていますから。
ここでいう「サウンド・オブ・メタル」はやはりダブルミーニングであり、「メタル系音楽」と「機械を通じて聞こえてくる金属的な音」という意味に解するのが妥当に思えます。
さて、そのような事情のため、「音楽映画」と最初は思いますが、ストーリーの8割以上はろう者・難聴者のコミュニティの話になります。そのため、その文化の理解がある程度ないと、わかりにくいかな、とは思いました。
▼ (聴力検査を受ける時)単語を繰り返して?って聞かれるシーン
→ 聴力テストのことです。日本では身体障害者の認定基準は区分(この場合なら、聴覚)ごとに決まりがあり「ランダムなひらがな表を医師等が読んでどれだけ聞き取れたか」で決まる等級があります(ただし、詐術されやすいので、できるだけ客観的な聞こえる範囲を測定できるデータと一緒に申請することが日本では望まれています)。
▼ ろう者コミュニティで机をバンバン叩くシーン
→ 音は聞こえないか聞こえづらい(難聴の場合)ですが、音が立っていることはいわゆる独特な「震源」でわかります。このように、どんどんばんばん叩くのはこのためです
▼ 「あなたのサインネーム」
→ サインネームは、日本でもろう文化において、特定の個人を簡単な手話で表す表現のことです。似た概念でいえば「ハンドルネーム」「ペンネーム」などが近いのでしょうか。
▼ 「いや、問題ないんだ、口で読むから」
→ このような方法を「読唇術」(どくしんじゅつ)といいますが、この映画は架空のお話で撮影等もコロナ問題勃発前だったのでしょうか…。今はマスクをつけるのが常識になっているので、舞台のアメリカも、ここ日本も、読唇に頼る方がいるのもまた事実(簡単な内容なら、それで聞き取れてしまうが、全体の理解度は4割程度(相手がゆっくり話せばその率は上がり、むちゃくちゃ話されると0に近くなる)とされる)です。
これらの部分の説明がなく、また、一部を除いてアメリカ手話の字幕もないところがあるので、それは「誰が見ても」わからないのでは…と思います(日本手話(※1)とアメリカ手話はそもそも語の体系が違います)。この部分は、「日本においては」、日本でアメリカ手話を理解できる方というのはかなり少ないのではないかと思いますので(日本手話とそもそも違います。日本手話は言語的には、韓国手話や台湾手話に影響を与えたほう)、その意味で「誰も聞こえない・わからない」空間を作ることに、結果的には「成功した」とは言えるかな、とは思えます。
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(※1) 日本では、伝統的に使われる「日本手話」と、いわゆる中途失聴の方を対象にした「日本語対応手話」の2つがあります(後者は、てにをはまで全て表現する)。ただ、どちらも一長一短な面があるため、日本ではこの良い点を混ぜて使う「中間手話」というのが一般的な理解での「日本手話」です(NHKなどの「みんなの手話」や「手話ニュース」も、特段のことわりがない限り、中間手話基準です)。
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ということで採点です。
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(減点0.3) 劇場版はすべてバリアフリー上映とのことで、それは「バリアフリー」、換言すれば「機会の均等性」を保証したという意味では画期的かと思います。
そのために字幕が倍以上になっている(半分は、ろうの方や難聴の方向けのもので、(…)で、かっこ書きされている)部分があります。
また、カテゴリ的には「一応は」音楽映画なので、エンディングロールも音楽が流れますが、そこもバリアフリー上映というところも(♪~)なだけです。
(もっとも、この部分は英語で歌を歌っているだけで、聴者でも聞き取れないと無意味)
登場人物があまり多くない関係で、その(♪~)の部分、つまり音楽も長くはないですが、かといって「音楽」をテーマにしているのも事実であり、そうであれば、その配慮(どうしても、この映画のテーマは「一応」音楽であるため、それを全部(♪~)にすると、聴者はわかっても、ろうや難聴の方は確かめる方法が少なく、おいてけぼりにされてる?と勘繰られても仕方がない状況になっている点はこれは否めず、それはそれで「バリアフリー上映」の趣旨を没却しているかな、と思いました。
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