「時には逃げることも」キル・チーム KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
時には逃げることも
正当化し殺人を行えるから兵士になるのか、はたまた戦場にいる事で人を殺すという感覚がおかしくなり無実な人まで理由をつけて殺害し興奮を覚えてしまってるのか…このての問題にはいつもこの様な感覚を覚える。
主人公のアンドリューは国を守るという正義心を持って兵士となりアフガニスタンに派遣された。
不運にも派遣されたチームが倫理観が崩壊しており、対戦国のアフガニスタン国民の罪なき者まで隠蔽工作してまで殺しが行われてる。
チームの一人が管轄する組織に密告したところ、密告がバレて虐待を受ける。
アンドリューもまた軍事関係で働いていた父に現状を相談しかけるが、同僚の虐待を見て恐怖を覚え現状を素直に相談できずにいる。
同時に父親は息子の異変を感じ、管轄する組織に密告しようと促す。
こまめに連絡が取れない以上、いつ父親が勝手に行動に出ないか、そしてその事がチームにバレて虐待を受けないか…アンドリューはその緊張感を張り詰めながら戦場で暮らす日々を送る。
この緊張感の描き方は非常にうまくてとても見入った。
特に射撃練習のシーンでは事故を装おり殺害されるんじゃないかという恐怖心を見ているこちらも刺激される。
結局アンドリューは不正が行われてるチームを第三者に報告する事ができず、自分の心に嘘をつきチームに居続ける事で最後は罪なき民間人を故意的に殺してしまう。
それがバレて収監される所でこの作品は終わる。
この不正に殺害が行われてる問題はもちろん兵士特有の問題だとは思うが、この作品で描かれている悪の圧力というのはどんな人でも経験しかねない問題であろう。むしろ経験してる人の方が多いのではないか。
小さなコミュニティ内では過ちや間違いが正当化され、それに対して異議を唱えると唱えた者が悪とされる。
黙っていればそれらの悪を強要され、結局望んでなくても自分まで悪に手を染めてしまう事もある。この様な出来事は身近な生活社会でもいくらでも起こりうる不運な出来事であろう。
この作品を見ていると悪と訴える難しさを十分に感じ取れるが、同時に黙っている事で、自分に嘘をつく事で最後は自分までもが悪として裁かれそして自分自身を大きく傷つけてしまう結果になる悲惨さも伝えられる。
自分がアンドリューと似た立場に置かれた時にどの決断判断が正しいかは分からないが、時には逃げることも大切なのかもしれない。
エンドロールではこの作品のアンドリューのモデルとなった新兵は結局3年の刑期が下った事が説明されていた。
本人は望んでない殺しを強要され刑期までついてしまうなんて非常に悲惨な出来事である。
ドキュメンタリー作品のように決してドラマ性がある作品ではないがそれなりに見応えのある作品であった。