「愛おしいほどの時間が流れている」くれなずめ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
愛おしいほどの時間が流れている
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友人の結婚式のために集まった昔の仲間たち。今ではそれぞれ異なる人生を歩んでいるのに、いざ顔を合わせると数年のギャップなんて存在しないかのように丁々発止のやりとりが始まるーーーー。ここに描かれた物語に共感しない人なんていないはず。これほど心を寄せてしまう背景には、本作の構成や撮り方、編集のあり方が大いに関わっているのだろう。すなわち、現在の場面では基本的にワンシーン、ワンカットが用いられ、回想になるとそれがカット割された映像へと切り替わる。記憶を浮かんでは消えていく泡沫のようなものと捉えた時、この構成が非常に考え抜かれたものであることが理解できよう。そうやってナチュラルに沁み込むからこそ、96分に及ぶ作品世界が幕を下ろす頃、彼ら一人一人がとても味わい深く大切な存在に思えた。各々の個性を際立たせつつ、全員がギュッと一体化した空気感をも活きいきと写し撮る。愛おしいほどの時間がそこには流れていた。
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