劇場公開日 2021年4月2日

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「綾野剛の人間的な迫力で概ね楽しめた」ホムンクルス 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0綾野剛の人間的な迫力で概ね楽しめた

2021年4月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 インターネット予約の段階で先ずあれ?と思った。一切の値引や割引を拒否して特別価格1,900円となっていたからだ。どの劇場も同じ1,900円だったから、作品の方で一律の価格にしているということだ。配給会社のエイベックス・ピクチャーズの戦略なのだろう。定価でも興行的に採算が取れると踏んでいる訳だ。それだけ作品に自信があるということで、観客としてはお手並み拝見となり、ハードルが上がる。
 結論としては、配給会社みずからハードルを上げたのも頷ける面白さだったと思う。理由はふたつ。ひとつは原作の漫画のアイデアで、読んでいないが本作品にその面白さがストレートに現れている。そのアイデアのルーツを辿ると古くはルネッサンスの錬金術師のホムンクルスという発想に至る。それだけ歴史のあるアイデアが面白くないはずがない。
 もうひとつは登場人物のユニークさで、それを見事に表現した主演の綾野剛と相手役の成田凌の怪演に尽きる。綾野剛は2017年の映画「亜人」の不死身のテロリスト佐藤役でも鍛えられた肉体を晒していたが、本作品では更にボリュームアップと同時にシェイプアップして格闘家のような見事な筋肉を披露している。生半可な鍛え方ではない。どこまでストイックな俳優なのだろうか。いまこの時間も、どこかのジムでトレーニングしているか、どこかの道を走っているに違いない。
 成田凌は「スマホを落としただけなのに」のエキセントリックな役を思い出す。本作品では同じエキセントリックでも微妙な違いがあって面白い。なんでも出来る俳優である。
 内野聖陽は流石に演技派の俳優だけあって、コミカルな演出にも100パーセント対応。こういう場面はシリアスに大真面目にやるほど面白いということをよく心得ている。
 石井杏奈には気の毒なことをした。これから当分はこの女優さんを見るたびに、あの砂の陰唇を思い出すことになりそうだ。しかし場面で言えば、石井杏奈の場面が一番面白かった。R15でなくて大丈夫なのだろうか。
 ホムンクルスが見る人間の本質がステレオタイプだったことと、終盤にやや説教臭い場面があって、そこだけが少し興醒めだったが、綾野剛の人間的な迫力で概ね楽しめた。もう一度観たい気がする。

耶馬英彦