「「寂しさ」「侘しさ」をアメリカの情景で描いたという、稀有な一作。」オールド・ジョイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
「寂しさ」「侘しさ」をアメリカの情景で描いたという、稀有な一作。
前作『リバー・オブ・グラス』(1994)を、”道のないロードムービー”と自ら評したライカート監督が、今回はしっかり二人の男たちのちょっとした旅を描いています。
道中起きた様々な状況を描いてはいるんだけど、それもそこまで劇的な盛り上がりとなるわけではなく、友人同士である二人は淡々と、しかし美しい映像と絶妙な形で入り込んでくる音楽とともに、目的地である山奥の温泉を目指して進んで行きます。
冒頭の電話のやり取りからも、二人の主人公マーク(ダニエル・ロンドン)とカート(ウィル・オールドハム)が旧知の中であることは伝わってくるんですが、どうも家族よりも男同士の集まりを優先しがちなマークに妻はあきれがち。そしてカートは社会の束縛から逃れて自由に生活しているようですが、実際のところは決して恵まれた生活を送っているわけではない、といったことが、様々な描写の積み重ねから伝わってきます。
約70分と短い上映時間でもあり、映像の旋律に乗っているとあっという間に観終わってしまいます。淡々とした描写でありながらも結末に残る寂しさを含んだ余韻は意外に強く、彼らのその後を想像しないではいられません。表題である「オールド・ジョイ」の意味、そして温泉施設の醸し出す何とも言えない侘しさなど、全体的にまるで俳句のような作品でした!
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