「アメリカと友情の消えてくさま」オールド・ジョイ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカと友情の消えてくさま
悲しみは使い古された喜び。車のラジオから流れる先行き不透明な政治情勢と重ねられる、友情の移ろいや消えゆく輝かしい日々のポートレート。結婚して父親になる主人公マークに対して、友人カートはバカやった昔懐かしいあの頃みたいにまた楽しく過ごせると信じている。けど、どこか違う。同じようにはいかないで、すれ違うかつての友人同士。
衣装において濃淡で表現された成熟度みたいなもの。例えばカートの水色の上に、レンガ色の半ズボンに対して、マークはそれらを濃くしたような濃紺と茶色。リュックサックにおいてもカートは赤色である一方、マークは落ち着いた印象を受ける青色という対比。犬ルーシーによく構い、面倒見が良いなんてところも少し少年のよう。それらは考えすぎかもしれないけど、カートがそうした歳月という世の中の流れにうまく適応(妥協?)できないでいるよう。
ジーザス・クライスト…スーパースター。話自体はキャンプに行くだけなのだけど歳を重ねるということ、昔に思いを馳せる。911テロに始まる暗い21世紀に、ブッシュが2期目に突入し泥沼化するイラク戦争。犬(ルーシー)と車、車内からのカット。帰還兵への風当たりの強さ。作家主義という言葉が思い浮かぶ作品を包むドキュメンタリータッチで淡々と静かな雰囲気、夢やぶれたようなどこか悲しげで虚しい空気。アメリカの田舎の風景、繁栄ではなく回復。だから静かなラストシーンがなんともグッとくる。刺さりすぎた。トロ・イ・モワの音楽、製作総指揮にはトッド・ヘインズの名前も(これ以降)ある。
For Terri and Andy
コメントする