「良い素材を沢山集めたのに、余計な味付けをし過ぎた様な作品です。」バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら 松王○さんの映画レビュー(感想・評価)
良い素材を沢山集めたのに、余計な味付けをし過ぎた様な作品です。
劇場での予告編を見て、なんとなく面白そうと思ったのと都内はレイトショーが解禁になった事もあり、初日に鑑賞しました。
で、感想はと言うと…なんだかなぁ…
いろんなツッコミどころが満載過ぎ。
最初に謝っておきますが、結構辛辣です。
名優の無駄遣いと言うか、脚本がダメ。
これだけの錚々たる名俳優が出演しているのに、何が言いたいのか、何がやりたいのかが分からない。
TVドラマ版の存在は知ってましたが見た事はなく、どんな話なのかも知らなくて、いつもは主役の脇に隠れる存在の名脇役達に様々な設定でスポットを当てよう!と言うぐらいしか知りませんが、劇場版はとりあえず単体で成り立っている感じ。
富士山の裾野にある架空の撮影所「バイプレウッド」で様々や作品の撮影が行われるが、そこに濱田岳さん監督を努める映画作品の撮影が少人数、小予算で進められ、様々な事が巻き起こる。と言うのがざっくりなあらすじですが、もういろんな事が不明瞭。
田口トモロヲさん、松重豊さん、光石研さん、遠藤憲一さんと言ったベテラン名優達が中心に話が進むかと思えば、濱田岳さんが監督を努める自主映画の撮影の話が中心になっていくけど、いろんな人達にスポットを当てようとするあまりに、誰が主になって軸になっているのかが雑。
沢山の俳優に気を使いながら、まんべんなく分配した為か焦点がボケボケなんですよね。
主役は田口さん、松重さん、光石さんの筈なんですが、話の中心は濱田岳さんと柄本時生さんの映画撮影チーム。
ここに菜々緒さんと天海祐希さんが絡んできて、膨らませつつも目的が更に不明瞭に。遠藤憲一さんも主演だと思うんですが、どうにも変な出番の少なさも気になります。
登場人物が役者でありながら、スタッフをやっていたりしてややこしい。役者が映画を撮るからスタッフを兼ねるのは当たり前だとしても、何故映画を撮るのかの理由が物凄く曖昧。
名優 役所広司さんの気持ちに応えたくて!と言う理由にしても、なんでこんな少人数なのかが分かんない。
そもそも自主制作の映画が撮影所を引っ掻き回している事にプロの俳優やスタッフが何故それを良しとしているのか?
バイプレウッドには専任の映画スタッフはおりません!と言うのなら、まだ納得が出来るがそうでもない。
映画好きが集まる理想の地みたいに捉えられてもそこは「プロ」が集まるからこそ、プロとしての行持は持ってて欲しい。
天海祐希さんがガパオライスショップをやるのは個人的な息抜きと言うのは分かるけど、女優さんとしての活躍は劇中で無いのが更にややこしくしている。
ただのガパオライスショップのオバチャンと化してるのってどうなの?
犬の「ふう」がいろんな作品の撮影中に乱入したのも「ふうが台風から俺たちを守ってくれた」なんて件もどうにもあざとい。
一番のツッコミどころは台風が去った後のスタジオの片付けを何故か俳優の方々ばかり。
「俺たちはこのスタジオが大好きだから」と言う想いがあったにしても、全く普通のスタッフがいない。もしくは率先して動いてないのはやっぱり解せないし、こういう所であざといと言うか、嘘臭さが感じるんですよね。
最初は凄く良い感じでスタートして、結構ワクワクしたんですよね。
有村架純さんの可愛らしさも際立っていて、いろいろと出てくる役者さんが登場する度になんか楽しそうな事が始まる予感がして、いろんなドラマをモチーフにしたパロディも楽しそう。
前田敦子さんや岸井ゆきのさんの登場がなんか良い感じ。
岸井ゆきのさんは先日鑑賞した「ホムンクルス」で謎の女を演じられてましたが、個人的にはユーモアな役柄が似合っていると思うだけに今作の出演がなんか嬉しい♪
役所広司さんが登場して、作品に厚みを増しているのも良い。
ワチャワチャしてるのが楽しそう!
だけど、最後までワチャワチャしてて終わり…
劇中でも言ってましたが、「蒲田行進曲」や「キネマの天地」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の様な映画の裏側なんかをワクワクして見せたかったと言う想いがあると思うんですが、どうにも響かない。
銀河鉄道の辺りも夢溢れる設定にしたかったと言うのは分かるけど、なんか安易で雑。
シンプルに言いたい事は多分「映画は素晴らしい。それを支える俳優は主役ばかりではない。いろんな人に支えられているんですよ」だと思いますが、いろんな肉付けをし過ぎる。
良い素材を使って、普通に作れば美味しい料理が出来るのに、いろんな味付けをし過ぎて、素材の良さを台無しにした。
そんな感じですかね。
TVドラマ版を未視聴なので「こういう作品なんです」と言われればそうなのかも知れませんが、映画化するのにあたり、いろんな余計な事を盛り込んだと言う感じです。
TVドラマ版の放送中に急逝された大杉漣さんの弔う事も意味しての映画化もあると思うんですが、それにしてもどうにもいただけない感じです。
書ききれないくらいの名優が出演しているだけに実は相当豪華な作品で規模的には実は凄い作品でスケジュール調整も大変だろうなと思えるぐらいに奇跡的な作品だと思います。
多分、なんとなくですが、1970年代の東映の大部屋俳優達で結成されたピラニア軍団みたいに味のある個性派俳優集団の作品を作って、平成・令和のピラニア軍団みたいにしたかったのかと。
小沢仁志さんが出演されているだけに余計にそう思えますw
個人的に合わなかったと言えば、そうなんでしょうけど、個人的に合わないと言うだけで済まない感じです。
もう、勿体無い!の一言です。
個人的な見解で辛辣に書きましたが、結構期待してたからこその肩透かしが残念。
ですが、あくまでも個人的な一意見として捉えて頂ければ幸いです。