配信開始日 2021年12月9日

「滲みでる「北野武愛」」浅草キッド CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0滲みでる「北野武愛」

2022年1月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

芸の世界で天下を取った男。その「ひょっとするとひょっとする」才能を育て上げた幻の浅草芸人。最近ではめっきり聞かなくなった芸の世界での師弟関係が熱く描かれる。

タケシを演じる柳楽優弥は、憑依芸とすら思えるほどに北野武。演技なのかモノマネなのか…と、そのギリギリのラインの台詞回しに若干の毛恥ずかしさは感じるが、そのイタコっぷりが逆に深見千三郎という人間の「芸人」としての凄味を彩る。

「笑われるな、笑わせろ」
「芸人だったらいつでもボケろ」

自分の信じる道で、ひたすら真剣に人を笑わせる浅草の師匠の姿は只々格好良く、その背中をしっかりと追う弟子のタップステップが胸を打つ。

そんな師弟の愛はもちろんのこと、やれるかどうかギリギリの関係性を演じた門脇麦も流石。そして何より、自らの「北野武愛」を描き切った劇団ひとり監督に拍手。原作を愛する第三者がしっかりと描き、巨匠本人が本作に立ち入らなかったからこそ「浅草キッド」がエンターテイメントとして成立したのだと思う。

あとは主題歌「浅草キッド」の早期アナログレコード再販と、本作の映画館上映を祈るばかり。

LADA