「劇団ひとりの愛が優しさに化ける空気、新年1発目から滝のように泣いた、、」浅草キッド たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
劇団ひとりの愛が優しさに化ける空気、新年1発目から滝のように泣いた、、
ビートたけしの半生ではなく、彼の血となり骨となった師匠から浴びた「生き様」をありありと魅せられた気がした。劇団ひとりの愛と暖かさが涙になって止まらなかった。
もともと劇団ひとりの『青天の霹靂』を観たとき、もう涙が止まらなくて「この人の作品は、なんて人柄で心を突き動かすのか…」と衝撃を受けた。だから、正直周りの評判を聞いて、これ絶対泣くやつ、とは思っていた。だが、その何倍も泣いた…。その理由はやはりビートたけしの凄みも去ることながら、師匠と共に磨かれた「天才の片鱗」が透けることが大きい。栄光と影…変わりゆく時代。最後まで舞台芸人で居続けようとした師匠と、天才・たけしがそう在る為に選んだ、テレビというフィールド。その対比の中に変わらない人の関係性が心を強く打つ。
熱心に研究し、モノマネにならないように意識されたビートたけしは柳楽優弥にしか出せない香り。その一方、舞台一本が故に資料もほぼ残っていなかったという深見千三郎は、大泉洋のユーモアによって色づいている。そして何より門脇麦。ドラマ「火花」然り、彼女がミューズになることにただならぬ安らぎを覚える。バレエ経験からくる堪能なダンスにほれぼれ…。しかも、香る程度の役回りだから何ともニクい。あと、『青天の霹靂』に出ていた風間杜夫が出てきたときは凄く嬉しかった。思わず声が出るほど。笑
舞台からテレビに変わったあの頃のように、テレビがメディアの第一線ではなくなる日も近い。それをNETFLIXのコンテンツでやるのだから、そこはなんとも皮肉の効いた話。だが、こうしていつかテレビも懐かしくなる日が来るような気もする。だからこそ、師匠のように最後まで全うする人もいれば、自分の生き様が表現できる場を生き続けるたけしのような人もいる。そしてそこにはきっと、脈々と受け継がれているものがあるのだと思う。なぜなら、「笑わせる人」芸人の本質は変わらないのだから。
情報7daysニュースキャスターでビートたけしはこの作品を「感動したけど、やっぱドラマだよね」と評していた。「こんなものじゃない、もっと酷いこともあった」と。彼はどんな世界を見てきたのだろうか。改めて凄みを感じると共に、死に物狂いで追えば叶うと信じきってみる事がいかに難しくてカッコいいかに気づいた。いい映画で2022年を初められてホントに良かった。