「たけし役にはハンサム過ぎだが、柳楽が大泉とともに好演。劇団ひとりの演出もいい」浅草キッド 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
たけし役にはハンサム過ぎだが、柳楽が大泉とともに好演。劇団ひとりの演出もいい
冒頭、現在のたけしが「あれ、ご本人?」と錯覚するくらいの再現度で登場し、ほどなく特殊メイクだとわかるが、ここでも柳楽優弥が演じているとは気づけなかった(鑑賞後にネットで調べて知った)。
若い頃のたけしを演じるパートは、あの独特な首の動きを筆頭に完全コピーと言ってもいいほどのなりきり演技で役者魂を感じさせるが、難点を挙げるなら柳楽が野性味のあるハンサムに過ぎること。ビートたけしの毒舌は一見平凡な風貌から切れ味鋭く放たれるギャップも面白さのうちだったが(凡庸な外見と内なる狂気というたけしの特性は、のちに俳優業で活かされることになる)、切れ長の目でどちらかと言えば爬虫類系の顔立ちの柳楽にはもともと危険な雰囲気があり、外見と毒舌のギャップを感じづらいのだ。
とはいえ、本作のもう一人の“主人公”であるたけしの師匠・深見を演じた大泉洋とともに、厳しくも人情味あふれる浅草芸人の世界を愛情込めて伝えてくれたことに感謝したい。監督・脚本を務めた劇団ひとりも奇をてらうことなく、じっくり2人の演技と芸を見せることに重点を置き、話の流れもスムーズに構成している。物語構造としては、最近レディー・ガガとブラッドリー・クーパーでリメイクもされた「スター誕生」と同様、エンタメ業界で成功の階段をのぼる若手と没落していく大御所という対照性がわかりやすく、ウェルメイドな作劇と言えるだろう。
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