「善行貯金する男」僕たちは変わらない朝を迎える odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
善行貯金する男
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主人公、藤井薫は脚本家で映画監督、半ば同棲中の女優、宮崎寧々から飲み会の席で別の男との結婚を告げられる。薫に思い当たるしくじりや不倫でもあったのか、淡々と受け入れ、なんと祝いの言葉さえ口にする。
そのくせ仲睦まじい回想シーンの挿入など未練たっぷり、挙句にキャスティング中の女優を飲みに誘うなど本音がさっぱり伺えない。
薫の脚本「はなればなれ」を読んだプロデューサーから男女の別れ話を描きたいならもっと本音で語れと揶揄される。映画の展開自体がその脚本をなぞっているかのようなややこしい描き方、まさに観客の声を代弁するかのような指摘だが、映画はお構いなしに進んでゆく・・。
寧々も傷つけまいと気遣っているのか別れの本音を語らないからもどかしい。果たして二人の間に何があったのか謎は謎のまま。ロマンティックな悲恋というティストは名作「ラ・ラ・ランド」とも似ているがチャゼル監督との手腕の差は歴然。
冒頭、主人公が出勤途中に倒れている自転車を立て直すシーン、これだけで薫が公徳心の厚い善人であることが伝わりますので感情移入し易くなると優れた演出に脱帽しましたがほどなくそれが主人公の善行貯金の一環だったと明かされます、まったくつまらぬ蛇足を付けたものです。
挙句にその貯金を餞別代りに寧々のタクシー代に使っていました、なるほど、そういう子供じみた男だから見切りをつけたのかしら・・。それとも、薫は根の優しい善い人だから去る人を追わず責めもせず優しく見送りたかっただけという落ちかしら・・。
作家性の強い映画なので短編だから耐えられましたが、苦手な難解な映画でした。
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