「【”苦し事や哀しい事や、愉しい事が偶に起きる”普通”の日々の積み重ねで、人生は出来ている。”25年に亘り、一人の男が一人の女性を想う姿を、世の変遷を背景に描き出した作品。】」ボクたちはみんな大人になれなかった NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”苦し事や哀しい事や、愉しい事が偶に起きる”普通”の日々の積み重ねで、人生は出来ている。”25年に亘り、一人の男が一人の女性を想う姿を、世の変遷を背景に描き出した作品。】
ー 大人になるって、どういう事だろう。
様々な苦しみや、哀しみや、楽しかった経験を積んで、歳を重ねる事を言うのだろうか・・。ー
◆感想
・佐藤(森山未來)が、七瀬(篠原篤)と、夜中に酔っ払ってゴミ置き場に突っ伏すシーンから物語は始まる。七瀬は言う。”8割の人間は塵だ。残りの2割はカスだ・・。”
佐藤は言う。”けれど、1%は良い人が居ると思うよ・・。”
ー このシーンが、ラストに連関している。
そして、佐藤の21歳からの人生が、時系列を逆行しながら描かれる。見事な構成だと思う。
それにしても、森山さんの21歳から46歳(私事で恐縮であるが、ほぼ同年である・・。)を何の違和感もなく演じ切る姿には、素直に参ったと言わざるを得ない。
ダンサーとしても活躍する森山さん自らの節制の賜物であり、彼の演技力が存分に発揮されている数々のシーンにも魅入られる。ー
・TVのテロップを制作する会社で、忙しく働く佐藤は、婚約者(大島優子)とも破局し、ズルズルと無目的に生きている。且つての仲間だった関口(東出昌大)は、TV会社の下請け仕事に見切りをつけ、オンライン学習塾を立ち上げ、新たな道を進み始めている。
ー 佐藤が、最初に出来た恋人かおり(伊藤紗莉)と、永遠に別れるとは思わずに、別れた坂道の二股で、且つての彼女の姿を思い出すシーン。
”次に会った時に借りてた、CD返すからね・・”
佐藤が、未だにかおりの事が忘れられない事を示しているシーンである。この二股のシーンは複数回、描かれる。ー
・佐藤は、バブルの中、新宿のオカマバーを経営する七瀬の店で飲んだり、羽振りの良いどこか怪しい男佐内(平岳大)のおごりで飲んだりするうちに、女性とも関係を持つが・・。
ー このシーンで、”8割の人間は塵だ。残りの2割はカスだ・・。”と言う言葉が楽し気に語られる。ー
・忙しい日々を過ごす中、夜バイク事故を起こした時に、助けてくれたヤクザの男(奥野瑛太)が、その後鉄砲玉として、逮捕されるシーン。
ー この作品は、こういった些事を描くことで、厚みを持たせている。ー
■時代は、ドンドン遡り・・
・佐藤と、かおりが文通を通じて、出会うシーン。
二人が交わす手紙はドンドン増えていく。佐藤はそれを生きる楽しみにしている。
そして、初デート。初のラブホテル。
ー 伊藤紗莉さんの魅力が、全開である。
佐藤が頑張って、ポール・スミスのシャツを着てきた時に、近くの男も同じシャツを着ている時にさりげなく言った言葉。
”無理して高いモノを買っても、他人と同じだと・・。”
そして、彼女は古着屋で仕入れたインド風のシャツと自分で彩色したスカートを履いているのである。
二人でオザケンの曲を聴きながらのドライブ。
いつの間にか眠ってしまったかおりの、無垢な寝顔。
佐藤が、何時までも彼女の事が忘れられない気持ちが、同性として良く分かる。
彼女は、無理に飾らないし、偽らない。思った事を素直に口にする。打算が無い。
その後、佐藤が出会った女性達との決定的な違いがそこにある。
だが、彼女はある日、忽然と佐藤の前から姿を消し、2011年、インスタグラムで佐藤の前に現れる。且つて彼女が言っていた”普通”の結婚をして、子供もいる。ー
・コロナ禍の現代。
佐藤は、時代と折り合いをつけ、今や会社の上位役職に付いているようだ。
だが、彼はいまだに独身である。
そして、久しぶりに若き頃から、佐藤に密かに思いを寄せ、一緒にクッキーを作っていた七瀬に出会う。
ここが、冒頭のシーンである。
だが、彼はタクシーで自宅に帰る途中、タクシーを降り、且つての初恋の女性かおりと最後に分かれたあの坂道の二股に立つ。そこには、かおりの姿があった・・。
ー 非常に巧い構成である。佐藤の一途な気持ちが伝わって来る。ー
<名匠、犬道一心監督が描き出した、一途な男の恋物語である。
今作のタイトルは、「ボクたちはみんな大人になれなかった」であるが、
私の中では、
「ボクたちはみんな、小狡い世間ずれした大人にならなかった」である。>
<2021年11月7日 刈谷日劇にて鑑>
共感のコメントありがとうございます😊
森山未來20歳役を本当に違和感なく演じていて、素晴らしかったです!
奥野瑛太さんは同じ道産子で応援している俳優さんです。
映画37secondsで男娼役で出ていて、そこから注目しています😃
映画、空白、すばらしき世界、ドラマでは最愛と、活躍してますよね
コメント有難う御座いました!
フリッパーズギターとか懐かしいです!( ; ; )
私はドップリ小沢健二に衝撃を受けCD全部買ってました(笑)
この映画は40.50代にはかなり響きますよね!
こんな我ら青春に戻す映画を度々観たいもんですね。
なんだか便利になった時代ですが、昔の方が色々浪漫があったなって今になって思いました。