「さて呉原の話をしようか」孤狼の血 LEVEL2 Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
さて呉原の話をしようか
「昭和」で勝負のピカレスク
舞台は第一作と同じく、破滅の危機を孕んだ幻想都市の呉原。薄暗い街中や室内、店内はヒトとヒトがぶつかり合って、セピア系の夾雑感に満ちていた。そして、あのせわしなく抑揚のないナレーション。
仁義なき戦いの頃は、ナレーションを聞いていきり立ったものだが、今はほんの少し耳障りにも感じました。
私も歳を食いました。
ダークな刑事とサイコなヤクザ
呉原は警察も公安も、古いヤクザも新しいヤクザも全員が暴力頼り。狂気を一切隠さない。そんな中、日岡は仕事のような生真面目さでヤクザと癒着している。目の下の隈と細った肩は、暴力を押さえるには癒着しかないだろう!と言うやるせ無さを体現していた。一見弱々しいダークヒーローは、魅惑的でした。
一方の主役がコテコテのモンスターで、看守の妹から敵対していた組のトップ、自分の組の二代目まで、見るも酷い殺しが続く続く。身代わり出頭のシーンもないまま、大物俳優さんたちをあの世に送ってしまう。もっとストレートな暴力が見たかったのも事実ではあるけれど、サイコに傾けることで、ヤクザの行き着く先を匂わせていたのは、よかったです。
一番の悪者
西野七瀬のあの抑揚のない喋りは、暴力の街で生きる夜の女の風を漂わせて、全然悪くないと思いました。悪かったのは元公安の相棒。部下をすぐ殴り飛ばす上司の刑事よりも、悪い奴。妻もグルとしたら、ショック大きいです。
終盤を彩った二つの「虚無」
西野七瀬は元公安の後をつけて、車道に突き飛ばして殺害する。車道から暗い横町に逃げ込んだ逆光の七瀬も、ヤクザシティ呉原の狂気の一つ。
田舎町の駐在に飛ばされた日岡は、幻の狼狩に参加する。これは締めくくりにはいらなかったかもと思いましたが、姿を現した狼を見た日岡の目つきが明らかに変わった。それでこの作品の狂気に腑が落ちました。