「見かけ倒し」ズーム 見えない参加者 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
見かけ倒し
見かけ倒しとはまさにこのこと。ちょっと気を引くようなタイトルにつられて見始めたら、最初から駄作の匂いがぷんぷん漂っていました。
本当は、見たいと思っている人に興味を持ってもらおうと、なるべく褒めようと思っているんですけど、いいところが無かった。これはどうしようもない。
たいてい、映画には主人公のクエストがあって、何でもいいけど必ず成功を収める様子がストーリーに入っています。たとえバッドエンドの映画であっても、肝心の悪党は倒した後に主人公が倒れるとか、悪魔の正体を突き止めたのちに、自分が悪に取りつかれてしまうとか、何某かの結論が出るのが映画の本質で、そうでない映画はたいてい成功していません。
この映画には、まずクエストがない。「怖いもの見たさ」でオンライン降霊会なるものに集まった女たちが、ワイン片手にぎゃあぎゃあ叫んでいる様子をただ見せられても、時間の無駄にしか感じません。どうやら手に負えない怪物を呼び寄せてしまったようで、彼女たちはとんでもない災厄に見舞われますが、日本人的感覚だと、例えば漏電が燃え広がって逃げそこなうとか、バスタブにドライヤーの電源が伝わって感電死するとか、何か超自然的なものが働いて、事故なのか呪いなのかはっきりしない怖さを演出していくところでしょう。
ところがこの映画、物理的に悪霊のようなものが姿を現し、彼女たちを叩きのめしていきます。ストレートすぎる…しかも、予算的にカツカツなのか、悪霊はハッキリとは出てきません。「謎の何か」のままです。オンラインで、めいめいの場所から参加している彼女たちを同時多発的にどうやって襲うというのか、映画的にバチっと謎解きでもしてくれたら、見終わった時の感想もそれなりに違ったものだったでしょうが、このモヤモヤは最後まで晴れません。
そして、あろうことか、お話は終わっているというのに、尺が足りないのを埋めるためか、映画のプリプロダクションである、ズームでのカメラリハーサルの様子を強引につなげています。女優たちが素に戻って、監督たちと打ち合わせなのか雑談なのか「話しているうちに、謎の停電とか、予期しないアクシデントが起きて、とても怖い思いをしたんだ」みたいな展開になり、そこで映画が終わるというくだらなさ。だったら、最初からその体裁で、ズームを使ったホラーっぽい映画を撮ろうとしたら、謎の悪霊に邪魔されて災厄に見舞われた映画スタッフというストーリーを貫けばいいのに。という、欲求不満まで抱え込んで映画が終わります。
見せ方と、すごく身近な設定が、おもしろそうだっただけに、残念を通り越して、腹立たしい。ここまでしょうもない映画によく仕上げたな。
2022.2.6