「コメディ要素9割なので、コメディです!」ザ・スイッチ shunsuke kawaiさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディ要素9割なので、コメディです!
学校でイケてない主人公がいじめられた結果、悪役になって同級生を次々と殺しまくるという設定は、『キャリー』や『クリスティーン』なんかのスティーブン・キング原作のホラー映画が思い浮かぶが、最後には、いじめられっ子も、いじめる側に回って悪いことした償いの罰をきちんと受けて後味の悪るーい結末で締めくくられるホラー然とした映画であった。
『ザ・スイッチ』はグロシーンはまずまずあるが全然怖くない。グロはアメリカでは大衆に広く浸透した描写なのだろうか、みんな慣れっこな感じで自然と調和している感がある。先のシシー・スペイセクやキース・ゴードンのような痛々しいほどの見るからにいじめられっ子ではないし、友達もいるし、服装がダサいといわれるだけで実は可愛い。パッと見わかりづらい微妙なイケてなさはある意味リアルかもしれない。
いじめられっ子の怨念やその痛々しさがないのは、ホラーとコメディとの絶妙な融合を指向する映画だから、というよりも、コメディアンのヴィンス・ボーンが主演である点で一気にコメディになってしまうから。
恐怖と笑いは相性がいい。『エルム街の悪夢』のフレディだってコメディセンス抜群なのに、残酷な殺害方法とあのただれた顔がホラー要素を一気に強くしている。
一方、『ビートルジュース』は霊界の話で、明らかにホラー要素満載。それにビジュアルはホラー寄り。なのにコメディアンのマイケル・キートンが演じているからコメディに一気に振れてしまう。
ホラーとコメディの絶妙な組み合わせがどこをどうしたら、ホラー寄りになるのか、コメディ寄りになるのかを考えさせられるが、コメディアンが出たらそれはコメディになるということを思い知らされる映画だった。ヴィンス・ヴォーンは全く怖くない。
だからこそ、これで怖かったら?と、その意外さを期待したが、やっぱり全然怖くない。でもコメディも大好きなので、めちゃくちゃ面白い!ホラーとコメディの融合は、悪魔の毒毒モンスターシリーズやサム・ライミの『死霊のはらわた2』やピーター・ジャクソンの『ブレイン・デッド』、エドガー・ライトの『ショーン・オブ・ザ・デッド』なんかのグロ描写満載映画がコメディとの親和性が高い。というか、ホラーコメディと素直に言えばよし。ホラーとコメディとの相性というより、具体的にはグロとコメディとの相性と言ったほうが正確かもしれない。