タネは誰のもののレビュー・感想・評価
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食に関する重要なテーマ
種苗法改正が国会で議論されているようだ。 ブランド品を守るという趣旨のようだが、知らないうちに登録されてて自分で種を取ってはいけない、ってなる可能性も有るそうだ。 単純に反対とか賛成とか言えないが、両面から問題がある事を知り、議論を注目していく事が大切かと思う。 食に対する重要なテーマなので、多くの人にこの作品を鑑賞してもらい、関心を持ってもらいたいと思った。
メディアからの情報
法律が変わるときや、何かしら問題に対面した時、ものすごくメディアが取り上げるものもあれば、全く取り上げないものがあると感じる。 だから、え?日本でこんなこと起きてるの??と思うときが多々ある。 この映画もそう。 法律に関しては聞いたことがあったけど、中身までは詳しくは知らなかった。 ただ、農家にとっては打撃を受けるんだろうなぁとは思っていたけど、でも、単純にそれだけではないんだということがわかった。 もっと、もっと、日常的に情報を得なければならないなと感じた映画だった。
1種、2肥、3作り
少し前、この映画の山田プロデューサーの著書「タネはどうなる?!」を読んだが、自分には何が問題なのか、何を信じればいいのか、正直なところよく理解できなかった。 しかし、現在、半数の都道府県で改正種苗法に“対抗”するための条例が制定あるいは制定予定であり、客観的にみても異常な状況であることは、自分にも分かる。 例えば、「品種」と「特性」は異なるらしい。また、(不当にも廃止されてしまった)種子法と種苗法の違いも、素人には分かりにくい。 食物という最重要問題にもかかわらず、国民的議論が盛り上がらないのは、政府によるメディアコントロールもあるにせよ、話にピンとこないことが一因ではないだろうか。 あるいは、農業団体の既得権益を打破する政策だと、勘違いしている国民も多いのではないか。「公共財なんて、“民間”にどんどん解放すべき」などと騙されると、酷い目にあう。ここで言う“民間”とは、普通の農家のことではないからだ。 この映画を観て、そのあたりのことが、自分なりにクリアになった気がする。 何より良いと思ったのは、農家や研究所などの“現場の声”が、映像としてダイレクトに聞けたことだ。 どんなに議員や学者や評論家が、書いても、語っても、それだけでは国民は判断に困るのである。 マスメディアが取材しても、政府に“忖度”して、農家の本音はなかなか出さないであろう。ドキュメンタリー映画だからこそ、可能なことだ。 映画は、山田プロデューサーが、静岡(函南町)から始まって、茨城(笠間市、大洗町)、北海道(芽室町、北竜町、当麻町)、種子島、栃木(大田原市)、埼玉(三芳町)、広島(東広島市)など、各地を回って聞く話で構成される。 特に印象的だったのは、三芳町の農家の話であった。 農業は、「1種、2肥、3作り」と言うそうだ。 タネを人任せにするのはアマチュアであって、品質第一のプロのやることではないという。 そして、仮にコストをかけてタネを買って、何年もかけてその土地にあった品種を選んでも、種苗会社が採算に合わないとして売らなくなると、突然手に入らなくなるリスクを抱える。 仮に“国内”品種が保護されても、今のスキームでは育成権者が儲かるだけで、普通の“国内”農家にはデメリットしか残らない。 各地の気候や土壌に根ざしたタネの改良は、個々の農家の企業努力の最たるものだろう。資本力のない普通の農家は、タネを他者に握られてしまえば、高品質で競争力のある作物の開発はあきらめざるを得ないはずだ。 ドイツでは、バイオテクノロジーを使わず、「交配又は選別」のような“自然現象”に基づく“本質的に生物学的な”育成だけで得られた作物に対しては、特許権が及ばないという。 EUのルールにも縛られているドイツでできて、日本でできなくなるのはなぜだろう? 国内品種の保護が“本当の”目的であれば、関係の無い作物まで“登録”で制約されないように、他国のように例外規定を整備する必要がある。 デメリットを修正しようとしないのは、TPPやRCEPなどの枠組みを推進するため、農業を犠牲にしようとしていると考えざるを得ない。 自分もまだ完全に理解できてはいないものの、種子法廃止から種苗法改正への一連の流れが、「売国」政策であることは、おそらく間違いないと思われる。
日本の農作物の安全性が脅かされている
昨年(2019年)の7月に鑑賞したドキュメンタリー映画「SEED〜生命の糧」では、モンサント(現バイエル)のような巨大多国籍企業が農民から種を奪った経緯が描かれていた。強力な除草剤を開発、販売し、その除草剤に耐性を持つGMO(遺伝子組換植物)を開発して特許を取る。GMOは知的財産として保護される。ということは農家の自家増殖が禁止になるということだ。既にインドでは禁止になっていて、農家は毎年モンサントのような巨大多国籍企業から種子を買うしかない。その際にモンサント社製の肥料と農薬もセットになっている。貧しいインドの農家は借金をして買うが、自然に左右される作況のために借金が返せない場合もある。インドでは毎年15,000人の農家が自殺している。そういう作品だった。 日本ではどうなっているのかをわかりやすく伝えるのが本作品である。2018年の種子法の廃止と2020年の今年まもなく採決される種苗法の改正に対するアンチテーゼが主体で、日本の農作物の安全性が脅かされていることについて、元農林水産大臣の山田正彦さんが中心になって解説している。簡単に言えば、安倍政権からスガ政権へ続く自民党は、日本国民の健康をアメリカに売り渡しているということである。 上映後には山田さん本人が登壇して、来る11月17日の種苗法改正法の成立に向けて全力で反対行動をするとのこと。御歳78歳の山田さんに座り込みは堪えるだろう。 仕事や用事を抱える我々には座り込みは出来ないが、次の選挙に向けて、国民の健康を脅かす化学薬品まみれの農作物やGMOを排除する政治家に投票することは出来る。誰に投票するか迷った場合は、この基準で判断すればいい。問題なのは、こういう大きな問題をテレビや新聞が報道しないことだ。 確かに知らなければ反対もできないが、少しでも関心を持てばインターネットその他ですぐに調べることが出来る。知ろうとしない国民に支えられ、スガ内閣の支持率は57%と高水準で推移している。日本国民は、子供がアトピーになったり奇形になったりしても構わないという政治家に未来を委ねたいのだろう。国民は自分たちのレベルに合った政治家しか持てないという原則は未だに真実であり続けるのだ。
タネは死者からの贈りものであり、生けるものだけのものではない
そもそも「タネは誰のもの」なのか。 社会的、経済学的、哲学的な問いだ。 正直、日本の農業をめぐってこんな議論がなされているとは全く認識していなかった。恥ずかしい限り。 今生きている私たちだけではなく、これからの未来に生まれてくる人にとっても影響を及ぼしそうな食料安保の問題でもある。 なぜ政府は種苗法改正を急ごうとするのか。 農家の「自家増殖」を禁じるなかで、なぜ法改正は日本の農家を守るためという論理展開になるのか。日本に数多い零細農家を潰して、農業の生産性拡大、農業法人化を進めていくことが本当の目的ではないか。 全国の農家を政治基盤にしていた自民党の姿は今はもうそこになく、新自由主義の旗印に特定の法人や個人に利権を集中させ、日本経済をさらに劣化させていく姿しかみえてこない。 農家の自家増殖は、豊かな農作物の多様性を守り、広く後世の農家にも伝えていくもの。 今を生きる人だけのものではなく、「死者」が残してきた遺産であり後世に伝えていくべきもの。商社や化学メーカー、農業メジャーのカネ儲けの所有物ではない。 原村監督はフラットなポジションでこの作品を作ったとのこと。法改正の動きがある今、多くの人が観て関心を持ち、私たちの食の未来を議論していきたい。
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