「「すんぺぇねぇよぅ」。そう子供たちに声をかけてくれるお年寄りが、昔はどこの町どこの家にもいたような気がします。」岬のマヨイガ もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
「すんぺぇねぇよぅ」。そう子供たちに声をかけてくれるお年寄りが、昔はどこの町どこの家にもいたような気がします。
民話・伝説・伝承。 古くからの言い伝え。
そういったお話は基本的に好きです。 (…コワイの除く)
この作品も予告を見て気になっていました。
久しぶりの映画館で観るのはこれにしよう
というわけで鑑賞しました。
◇
予備知識無しで観たのですが、
単なる民話ベースのお話では無いみたい という事が
冒頭のシーンですぐに分かりました。
東日本大震災で被災した街の中を
岬の家に向かって歩くおばあさん。
そして二人の少女。
高校生の女の子 (ゆい) は家出中に被災。
家出の理由も訳ありらしい。
小学生の女の子 (ひより) は両親を事故で失い
引き取られた先の親戚の家で被災。
そしておばあさん。
不思議な力を持っているらしいのですが
おばあさんが二人の女の子に声をかけ
岬の先にある家で、3人暮らしが始まります。
不思議なことが色々と起こる岬の家。
そこでおばあさんの話してくれた昔話。
# 昔、アガメと呼ばれる海蛇の化け物がおったずもな。
# 人の心の寂しさや哀しさを食い物にして育ち
# その土地から人を追い出そうとしたのじゃが
# マキリの力で封印されたんだと。
どうも、その化け物=アガメが
震災で傷ついた人びとの心を食べて
復活したらしい。
おばあさんは、かつてアガメを封印した刀
「マキリ」 を使い、アガメに立ち向かう。
しかし
アガメは震災で傷ついた人たちの心を取り込んで
ずっと強大に なっていた。
おばあさんが危ない。
どうする? 少女二人
>たたかう
>にげる
逃げちゃダメ 逃げちゃダメ
できることをやらなきゃ
こうして
少女たちも自分たちのできることで立ち向かう。
ひよりは、笛を吹き
ゆいは、破魔矢を放つ
さあ どうなる。
この世界は救われるのか?
…
とまあ
災厄に負けちゃダメ という
メッセージはしっかりと伝わってきました。
キャラがちょっと地味な感じで
派手な展開は無いですが
親子で観てもいいかもしれない
そんな佳作です。
ゆいもひよりも いい子です。
本当の家族以上の家族ができて、良かったね。
◇ あれこれ
マヨイガ
漢字だと 「迷い家」 (…たぶん)
もし自分が迷い込んだとして やはり
何も持ち出さない(出せない)かなぁ
#バッドエンドのフラグが立ちそう です… ←ビビリ
ふしぎっと
漢字だと「不思議っ人」 (…たぶん)
別に「もののけ」でもいいのでは? などと
思ったのですが よく見ると
「お地蔵サマ」 がいらっしゃいます。
うーん。
やはり「もののけ」ではダメか
お地蔵さま
人びとを救済してくれるありがたい仏様。
民話の世界でおなじみです。
#岩手県大槌町が舞台なので
釜石大観音を出演させても良かったかも
⇒ いなくなると目立つからダメ?
岩手県大槌町
どこかで聞いた気が…
と思ったら
「風の電話」 がある町でした。
パワハラ父 (たぶんモラハラも)
ゆいの父。
母親が出て行った理由って
こいつでしょう ほぼ間違いなく。
自分より下で弱い (と思った) 相手には強気。 けれど
ゆいちゃんの張手一発に沈む。 …弱っ
◇最後に
「アガメ」にも事情があったのだろうよ と
これも供養しようとするおばあさん
周りに対して優しい気持ちにさせてくれる
そんなエンディングでした。
どっとはれ。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
今晩は。
「風の電話」 がある町・・。そうなんですよね。
もりのいぶきさんがレビューを挙げられた映画のラストで描かれた土地です。
私は、東北で学生時代を過ごしましたので、哀しいですが、あの出来事を暗喩でも扱った映画は出来るだけ観ます。
そして、宮本常一さんや、多分今作のベースになっている柳田國男さんの民俗学が好きなモノにとっては、面白き映画でもありました。
”もりのいぶき”というお名前、元山男としては、凄く好きです。では。