ドライブ・マイ・カーのレビュー・感想・評価
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戸惑い・・・
まずこの映画の中で演じられる劇中劇だが、複数の言語やコミュニケーション手段を持つものがその言語のまま一つの劇を演じるというのをこの映画で初めて知ったのだが、実際に演劇の世界ではポピュラーな演出なのだろうか?それともこの映画におけるオリジナルなアイデアなのか?それとも原作に既にこう言った内容で表現されているのだろうか?
もし村上の原作に既にこういった内容でテーマ化されているのであればそこには2007年公開の映画『バベル』の影響を感じずには居れなかった。勿論異なるコミュニケーション手段をとった劇を映像の中に埋め込むという手法はとても高いオリジナリティを感じたが、後半のロードムービーが急にリアリティをなくす設定なのが前半かなりドキュメンタリックなのに対して逆説的に目立って気になった。正直2日間しか猶予がない中で、思い付きであの中古のサーブで冬の北海道へ1日でしかも北陸道経由で行くことのリアリティの無さは塗油距離運転したことのある人間えはあり得ない設定である。ロードムービーは現実の風景の中を現実の時間を掛けて移動するからこそリアリティがあり詩情が生まれる。ここは見終わってからじわじわと不満に感じてくるので正直評価をその分落とさざる得ない。この後に『グリーン・ブック』と言うアメリカのロードムービーを見るとそういった破綻がないのが素晴らしい。とは言え、この作品の持つ総合的な高い芸術性はそれで損なわれるものではない。各演者の迫力がスクリーンを突き破って胸に突き刺さる。
静かな3時間・・☆
原作を読んでいて、あの短編小説をどうやったら 3時間の映画に出来るのか?と
いうのが最初に感じた印象だった。
だが、鑑賞前の雑誌等のレヴューを読んで、かなり多角的に肉付けされた作品に
なっていることを知り、むしろ期待して見にいくことになった。
冒頭の妻役・霧島れいかが主人公の西島秀俊演じる夫の家福に語り出す物語は、
村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」が収録されている「女のいない男たち」の中に
ある「シェエラザード」の中で、女性が語る物語に酷似しているし、途中で登場する
バーのシーンも「木野」という作品へのオマージュのようだった。
しかし、全編を通じて一番印象深かったのは静けさだった。
昨今の邦画にありがちな過剰なまでのBGMがなく、各シーンそれぞれが淡々と
繋がれていく。
そうしているうちに、西島秀俊とドライバー役の三浦透子演ずる渡利みさきと
一緒に過ごしているように思えてくる。
三浦透子が秀逸で、あの無表情の中であらゆる感情が表現される気がする。
多言語の演劇や岡田将生、ラストの北海道へのドライブなど印象的なシーンは
たくさんあるが、それでも静かな映画というのが見終わったあと最初に感じた
ことだった。
村上春樹のファンとか関係なく、映画の好きな人には観る価値がある作品
と思えた。
いつまでも心に残る
手話をふくむ多言語の演劇ってこう観せるのか。
田舎住まいなのであまり舞台を鑑賞することもなく興味もなかったのですが、機会があれば観てみたいと思いました。
西島秀俊、岡田将生の他は知らない俳優さんばかりで、村上春樹原作の三時間の長編。体調も万全でなかったので途中で寝てしまわないか、心配でしたが杞憂でした。
途中で時計見て、あ、もうこんなに経ってるって思ったくらい見入ってしまいました。
どなたかが書かれていましたが、この映画の持つ吸引力。台詞のひとつひとつが大事に作られて発せられている。走行するサーブ。広島市内をはじめ、瀬戸内と北海道の風景。亡くした妻と亡くなった母への想い、罪悪感。助けられなかった、助けなかった後悔。
見終わって何日か経っているが、ラストのドライバーの明るい表情、終盤の舞台のシーン、手話、主人公の涙、いろんなシーンが蘇り、胸を打つ、心が震える。
いつまでもいつまでも心に残る作品。
原作長編をダイジェスト化するより、短編小説を膨らませた方が面白いって、書いてたの和田誠さんだったかな。
約3時間の車の旅
妻を亡くした舞台俳優兼演出家の家福が演劇祭の稽古のため広島へ来る。そこで出会った運転手のみさきと交流する中で自分と向き合う話。
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素晴らしかったです。素晴らしいのはわかる。けれど私のチンケな感性じゃこの映画の1/3の良さもわかってないんだと思う。大絶賛のレビューが多い中分からないものを分からないと言って良いんだということを伝えるために分からなかったとここに書いておく(笑).
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妻の語る新しいドラマのストーリーに、『ゴトーを待ちながら』『ワーニャ伯父さん』が本作の登場人物達の感情とリンクしていて、さらにみさきの語る過去の話、高槻の語る家福の妻との話、色んな作品内物語が倒錯していって段々とフワフワしてくる。
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このフワフワ感何となく記憶にあるなと思って見ていたら思い出す、家族旅行に行った時、車の中で窓の外を見てぼーっとしてた感じ。みさきの運転の安定感がそのままこの映画の心地良さに繋がる。(私が見た回は近くに4DXのスクリーンがあったから床が結構揺れて本当に車に乗ってるみたいだった)3時間あるけど終わった後そこまで疲れた感じはなく、あ、もう家に着いちゃったんだって感じ。
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あとはディスコミュニケーションの話でもある。家福の演出は役者がそれぞれ母国語を話すので、役者同士相手が何を言っているのか分からない。さらに、家福とみさきはもう亡くなってしまった人と話すことが出来ないことに少なからずわだかまりを抱えている。
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最終的に家福は、コミュニケーションをするためにはまず自分の言葉に耳を傾けるべきだと気づく。(これを聞くと「テキストに自分を差し出す」って意味も分かるような分からないような)そこで私も同時に、この映画が分からないならまずは自分と対話せよってことなのかなと腑に落ちました。
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美しく重層的
濱口竜介監督のこれまでの作品から感じていた、人間の深さと複雑さと不可解さ、様々な事柄が重層的に表現される映画の奥深さを、本作では予想をはるかに超える厚みで感じた。こんなに素晴らしい映画を創ることができる監督の力に心底驚いた。
絶望と隔たりががあるからこそ希望のかけらを信じようとする人間の姿は、あまりにも美しい。同監督の2015年の『ハッピーアワー』も5時間越えのわりに時間を感じなかったが、本作はさらにというか全く、3時間があっという間だった。観終わってすぐにもう一度観たくなったし、何度も観に行きたい映画。観るたびに気づくことがまだまだありそうだ。本作を同時代に新作として観られたことに感謝したい。映画というもののすばらしさにも改めて気づかされた。それほどまでに凄い映画。
「静寂」と言う表現の美学、的な。
正直なところ、濱口竜介監督は苦手。村上春樹も殆ど興味無し。3時間もある映画も最近苦手(ポンポ症発症中)。韓国嫌い(ただし政治的なとこだけ)。SAABも嫌い(カッコ悪いです)。最近「カンヌ」と聞くとジンマシン(ベルリンよりマシです)。もうね。ネガティブ要素が列なしてます。
が。
西島秀俊と三浦透子は好き。撮影地は地元広島。あとですねー....ポジティブ要素って、そんだけ?
撮影地が広島だって知らなかったら、確実にスルーしてたと思うんですが。久しぶりに見た「文学作品」でした。「文芸」じゃなくて「文学」。これは良かったです。
台詞は少なめ。演技の抑揚はリアルで過剰演出無し。音楽は有りません。この、文章を噛み締めながら読み進めている様な感覚になる「情報密度の疎」の心地良さですよ。
劇中劇は家福の内心暴露。故に、おざなりに描く事無く、雑に流さず、丁寧な描写が続きます。ユナと家福の舞台のラストには、ハート打ち抜かれましたがな。このシーンは俺的映画史に残る場面になりました。
喪失の怖からの逃避。抑圧への恐怖からの脱出。行動せず、黙り込み、結果として見殺しにしてしまったのは「己のココロ」。別に、立ち向かえだの闘えだのと、勇ましいことは言わず、「それでも生きて行くしかない」と言う流れから、明るい未来がちょっとだけ見えると言うのが好き。
良かった。とっても。
それでも原作は読まないけどw
撮影地の件。広島FCの紹介によると、家福と渡利の2人がユナ夫妻に招かれた家は「クアハウス湯の山」って事になってますが、違います。クアハウスに、あんなログハウスはありません。タレコミによると、湯来の、とある有名な場所近辺の、個人のお宅の模様。Google Mapで確認しましたが、かなり風景が変わっているものの特定は可能でした。ここは、野次馬気分で見物に来られても迷惑なんで、そっとしておこうと言う配慮からでしょうね。
ちょろっと追記。前田多美さんを発見した話。
ホテル(宇品の広島プリンスと言う事になってる)のバーのカウンターで西島秀俊さんと岡田将生さんが話している場面。カウンターの端に座っているカップルの男が、岡田将生さんの写真を撮り、岡田将生さんがクレームを付けに迫ります。そのカップルの女性役が、前田多美さんだったと思います。露出が地味で一瞬だったので見落としそうになりましたが。また、何かの作品で、もっとたっぷり拝見したいです。
人生を歩む〜それぞれの想い
永く連れ添った夫婦らしからぬよそよそしさを冒頭から感じつつ鑑賞。二人には埋められない悲しい記憶が…。
脚本家の妻音(霧島れいかさん)を深く愛しているが故に動揺を隠せない舞台俳優で演出家の家福(西島秀俊さん)と、挑むような眼差しで想いを語る俳優高槻(岡田将生さん)との車内でのシーンが強く印象に残る。
ミステリアスな物語を紡いだ音の想いとは。
家福に頼まれ雪に埋もれた地を訪れたドライバーのみさき(三浦透子さん)が、ラストに見せた表情に救われた。
映画館での鑑賞
映像旅
原作を読む代わりにカンヌ受賞作を見ようと。他の村上春樹作品は読んでいるので、だいぶ忠実に映像化されているのではと思いました。途中まで、村上春樹はやはり逸脱してる部分がある(平たく言えば、頭おかしいなこの人)と思ったが、あるシーンでちゃんと回収したというか、村上春樹が自分の逸脱した部分を受け止めていたので安心して見続けられた。
こんな言い様ですが村上春樹好きなので、きちんと描かれて見続けられたのは嬉しかったです。とある歌詞を借りるなら、ぼくの心のやらかい場所をぐっと掴んでくるので、刺激が強いのですよね。でもまた読んじゃう。
夫婦親子の擬似的な対話と、虚構(嘘)を作る演出家や俳優という装置。他の村上春樹作品にもロードムービー的なものはあるが、本作が映像化されたのは必然だったように思う。手話がとくに、視覚的に説得力がありました。
役者さん達の演技は概ね安心して見られて、特に岡田将生さんは達者すぎる俳優の役にハマっていた。大豆田とわ子と〜の後なのでギャップがそう思わせるのかもしれません。
三浦透子さんの、無駄な要素が一切無い(煙草ぐらいか)キャラクターが光って見えました。
演劇も、ドライバーのいる遠回りなドライブも、自分以外が居て成り立つ、かつ一見生活に必要がないことが懐かしく、光って見えます。映画も文学もですね
感情を抑えたテキストに、呼応するもの。
心に残った箇所を:
ワーニャ伯父さんの劇中のセリフ、
苦しくても生きていくの、そして静かに死ぬの。
にグッとくる。韓国手話のなんと饒舌なことか。稽古では自分の体を使って表現していた手話を、なんて苦しいんだと吐露する家服さんを包むように語りかける、その大きな温かさ。
生きていたら23歳、娘の年のドライバーと、
北海道へ。そこで妻が本当は自分に真正面から関わって欲しいと思っていたことに気づく家福。それまで全ての感情を抑えできた彼が、遅すぎると泣きながら、後悔する、そして
今を見すえていく。妻の声のカセットにかぶさるようにドライバーに問いかける後半の車内、それは妻がいた過去から今、未来へと視点が移っていくことを示しているのか。
車内でタカツキが語る妻の話も圧巻、自分は空っぽだと言いながら、そこには濃密なものがある。だからこそ彼は、彼女といる時間、彼女の脚本に憧れたのだろう。
赤いサーブが何度もトンネルを抜けて走り続ける。サンルーフから突き出したタバコ、唸る車内、そして無音の世界へ。妻の抑えた台詞を読む声が届かない雪の世界へ。
妻が淡々とセリフを読む声と、家服が感情を抑え込んできた日常は呼応している。お互いを気遣い失いたくないあまりに、自分を差し出せないできた日々を象徴するかのよう。
3時間の長さを感じさせない映画だった。
冒頭から意味不明だった
酷評になる。最近見た映画の中では面白くない順位の上位に入れてしまった。
とにかく冒頭の奥さんのひとり物語りが意味不明過ぎてすでに見る気が失せていき…
テンポが遅く3時間は長すぎる。飽きてしまってしょうがない。
原作が村上春樹と知ったのは最後のテロップでだが、なるほどどうりで。何を考えてるかわからないミステリアスな女性が出るはずだ。
コンペティションを目指して作ったのだろう一般鑑賞者にやさしくない(意味不明、長い、展開遅い、話に深みがない)内容と表現。
久しぶりに映画館で見たがもしネット配信だったらすぐ見るのをやめてしまったかもしれない。
なかなか…
予告で想像していたのとは少し違ったかも?
冗長という意見(レビュー)を多々見るにあたり、そのとおりかな…と思った。
交通事故や最後の韓国でのシーン(何故、韓国? 北海道では?)は微妙な気がした。その他、なくても良かったシーンもあり…。
ただ、その割に時間を気にせず観れた気もする。
北海道に行くのは良いとして、戻ってくるのにも時間がかかる訳で、そこを無視していることや、演出家にはドライバーをつけるのに、俳優にはつけないのね…というか、運転させないように劇場近くで缶詰めにしないんだ…という部分にも違和感を覚えたかなぁ…。
主人公が、妻の最後に話したかった(聞けなかった)話にこだわっていたのかと思いきや、あんまりこだわりがなかった気もして、これもこんなものかなぁ…と何かしら納得感がなかった…。
色んな解釈がありそうだが、自分ならどうするか?と考えると、なかなか、難しい話なのかも知れないと思った。
すいません。未消化です。
長さを感じさせない、素晴らしい作品。
タイトルから、ロードムービーで、車の持ち主とドライバーの物語だろうと、想像してたら、全く違ってました。
都内に暮らす夫婦、旦那は舞台俳優兼演出家、妻は脚本家。2人はとても仲良しで、セックスをしては一緒にアイデアを詰めていた。ある日、旦那が仕事の都合で予定外に帰宅すると妻が男とやってた。旦那は見て見ぬ振りをして生活を続けていた。それも幸せを守る為だよね。分かる気がする。そんな生活が続いていたのに妻が突然死。そこで一部が終わり2年後の二部がスタート。
舞台は広島、俳優を辞めて演出家としての仕事で2ヶ月程の滞在予定だ。そこのルールでドライバーは本人以外の人がやらなければならず、若い女性が彼の担当になる。
あら、これ、ドライブ・マイ・カーじゃなくて
シー・ドライブズ・マイ・カーじゃね?て思いながら観てると、だんだん分かってきた。
彼がクルマに乗るたびに死んだ妻の声を聞いているのも、吹っ切れていないから。
マイ・カーって自分の人生の事だったのね。この前観た映画はセーリングだっけどな。
だからマイカーはサーブ900ターボ、彼の生まれた年と同じ型なんじゃないかな。若手の役者が乗ってたボルボは新しかったもんね。なぜどちらもスウェーデン車なのかは謎だけど、人生の厳しさと環境の厳しさを重ねたのかな?
劇中劇もビックリ!字幕付き多言語の舞台、それに韓国語の手話まで!!
主役の西島秀俊もメッチャ良かったけど、1番共感できたのは、岡田将生演じる若手俳優、多分彼は元妻の相手。恋愛感情とは別にエッチをしたりする。空っぽで、自分をちゃんとコントロールできない奴。それ、俺じゃん!
とにかく、人生は大変。順風満帆かと思えば故障したり事故ったり。あちらの世界に行ったら、神様に、自分はとっても苦しみましたと、胸を張って言いましょう。
ん?最後は伏線あっても良かったんじゃないかな。
喪失からの再生の旅
個人的に村上春樹氏(俗に言うハルキスト)が好きなため、気になり観賞しました。
端的に言うと、妻を失った主人公の再生の過程を丁寧に描いた作品です。
なかなか村上春樹の世界観って映像にすると残念な印象になることが多いのですが、監督がうまくそのイメージを拡げていて、3時間の長尺にも不思議なほど耐えることが出来ました。特に広島から北海道までのロードムービー的な動きのある映像は、2人の心情が発露される部分も重なっていき、この映画の1番の見所ではないでしょうか。
観に行く基準としては、西島秀俊さんのファンの方(ベッドシーンが多いので、西島さんの裸体を拝めます笑)
村上春樹ファンの方、あとはフランス映画のようにエンタメよりも文化芸術映画が好きな方にはオススメです。
ちょっと吃驚の出来の良さ
暗喩が凄いです…!
原作の村上春樹作品は未読ですが、予告が何となく懐かしいというかノスタルジーで観ようと思っていた本作!!
車好きとしては、SABBが懐かしく「走るやろなー」が第一印象。
ストーリーも重厚で、演出の一つゞが意味を持っていて、観賞後は心地よい疲労感でした。
俳優では、岡田将生が良かったです。俳優が俳優の役というのは難しいor簡単なのだろうか…(*´Д`)この年代の俳優で今後期待したいと思います♪
タバコのタイミングや子供の事、頬の傷など各所に爆弾があると思いました。(私のオツムでは、あと2回観ねば理解が…笑) 私自身未婚ですが、結婚したら1日2回は、“目薬をささないと”と思いました◡̈
激しいのが好きな方は、無理かもしれません。後、お腹は空いて無い時に!(無音シーンが多々あります。お隣の女性が盛大にお腹鳴ってました(´・ω・`))
是非ご観賞下さい。
直ぐに映画館に駆けつけろ!
掛け値なしの名作。直ぐに映画館に駆けつけろ。
3時間を超える作品だから、上映前に必ずトイレに行って用を足すこと。
上映初日に鑑賞したかったが、村上春樹の原作をまだ読んでおらず後回しにした。原作を読んで、それほどの作品と思わなかった。これでカンヌ国際映画祭で脚本・脚色賞を取れるものかなと考えていた。
見終わって、66歳になる私が涙目になった。
映画は原作を超えて、素晴らしい名作になっているのだ。原作をにくいほどに脚色を与えて、素晴らしい作品になっている。主人公を俳優から俳優兼演出家に変更している。その妻も脚本家に変えている。その他脚色が全てに当たっている。おまけに、チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」を絡ませて、見事と言うしかない。これで作品賞を獲得できなかったのは、その作劇法が欧米人に合わなかったからではないか。丁寧に作られたのが、受けなかったのか。でも、日本人らしくて良い。
ちょっと残念に思ったのは、地滑り後の現場での西島秀俊の演技。感情が籠もっていないように見えた。寒さのせいかなと思った。欠点はこれぐらいか。北海道へのドライブ中、無音になる場面があった。これも効果的だった。時間が止まったのように感じた。
織り重なる人、劇中劇、妻の脚本、現実、多層構造のリアル
・余計な要素が多いとの指摘もあるが、この映画で描かれる人間がそもそもテーマとして余計な要素から成り立っている事を突きつけてる。純な要素だけで人はできてない事が、震えさせる映画だなち。
・演じる俳優がバラバラの言語を話す演劇の妙味。
言語が棒読みから感情を乗せる事が劇中劇でも本編でもなされていて、あたかも登場人物が棒読み的ステレオタイプから背景のある影も毒もある立体になっていく事が浮き彫りななる。しかも、それは言語自体で説明不能なものも含む。見事に体現してた劇中劇。
映画や意味を直線的な説明で観るなら、批判しか出ないかもしれないが、
でも、主人公も運転手も岡田も妻も、みんな余計な要素を含んで生きている。
その余計なモノの摩擦が、人生に与える大きさに苦しくもあり、救いでもあり。
そういう立体化された人間劇に震えた。
なんだか引き込まれる
好き嫌いが大きく分かれる映画。一部が終わりキャストクレジットの入れ方がすごく良い。今までは全て前フリでこれから何が始まるのかって感じで引き込まれる。全体を通しての抑揚のないセリフだからこそ淡々と見れるし流石の演出。これがテレビや下手な映画みたいな感情爆発分かりやすいセリフまわしだと絶対に白ける。脚本もあまり抑揚がない分感情を乗せる演出を取りがちだがそこは監督の手腕だと思う。
西島も三浦も役を作って来てるって感じがせず素晴らしい。変わり者同士が惹かれ合って行く感じが良い。
最後の手話メッセージもラストに相応しく見応えがある。現実と劇中劇のリンクも前半と後半にあり伝わる。
撮影や絵の構図が素晴らしくだから観ていられるってシーンも多々ある。監督、役者、カメラ等などすべてが噛み合って素晴らしい映画になっている。映画の教科書を作るならこの作品は載せないとって作品。
全790件中、661~680件目を表示