「ラストシーンの解釈」ドライブ・マイ・カー 猫しらんぷりさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンの解釈
これは村上作品というより、村上作品を下敷きにして膨らませた濱口監督作品だった。
とくに印象的なラストシーン、これは映画オリジナルのもの。みさきの生きてきた背景を想像するとじーんとする。
——でも、仕方がないわ、生きていかなければ!
ね、生きていきましょうよ。
長い、果てしないその日その日を、
いつ明けるともしれない夜また夜を、
じっと生き通していきましょうね。
運命が私達に下す試みを、辛抱強く、
じっとこらえていきましょうね。
今のうちも、やがて年をとってからも、
片時も休まずに、人のために働きましょうね。
そして、やがてその時が来たら
素直に死んでいきましょうね。
あの世へ行ったら、どんなに私達が
苦しかったか、どんなに涙を流したか、
どんなにつらい一生を送ってきたか、
それを残らず申し上げましょうね。
すると神様は、まあ気の毒に、と
思って下さる。
そのときこそ、あなたにも私にも、
明るい、素晴らしい、なんとも言えない
生活が開けて、まあ嬉しい!と
思わず声を上げるのよ。
そして、現在の不仕合せな暮らしを
懐かしく、微笑ましく振り返って
私達、ほっと息をつけるんだわ
わたし、ほんとにそう思うの。
ほっと息がつけるんだわ!——
(ワーニャ伯父さんより)
気に入った車で、いままで飼えなかった大好きな犬と一緒に、生活したことがなかった国で、、そしてマスクをしなくてはいけない今を生きる。あれはみさきの理想郷なんだろうな。家福が指揮する舞台のワーニャ伯父さんのラストシーンでソーニャがいう、あの世で受け取る素晴らしい世界の希望にかけてるんだろう。
みさきのぶっきらぼうで中に秘める温かな役柄と、このラストシーンはとくに良かった。
ただ…村上原作作品にありがちな性描写のシーンが長いのが好みでなく、原作ファンとしては原作との違いがどうしても気になってしまった。
まったく違うものとして観れば、もっと単純に楽しめたんだろう。