「淡々粛々と生きていきましょう」ドライブ・マイ・カー @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
淡々粛々と生きていきましょう
生きていきましょう。
ホッと息がつけるまで。
久しぶりに邦画で号泣した。
多分、30歳過ぎて、ひとしきり色々な経験とか人間関係とかを味わっている世代になれたので、この映画を観て響くものがあったのかと思う。
一生懸命に生きるとか、前向きに生きるとか、感動とか失敗を悔いるとか、そんなものがどうでも良くなる世代になったので。
日々を消費するって言葉が身に沁みる歳になったので。
大人になったんだなぁ。
と言う、どうしようもない現実があって、自分の感情ですら飲み込まなきゃ生きていけない分別がつくようになってしまった。
しかし、きっと評価は割れる作品かなと思った。
淡々と繰返される録音テープ
抑揚のない台詞回し
肌色の多いベッドシーン
淡々と進む会話劇
映画を見慣れている層にはウケると思う
アカデミー賞も映画を作る側の人間が選ぶので、ノミネートは納得できる。
近年のアカデミー賞の傾向と対策をバッチリ抑えた、教本のような映画だった。
宗教観
他人種の俳優の起用
身体障害者やマイノリティ層の俳優の起用
その土地でしか語れないエピソード性
CGを使わない生の役者の演技
脚本、伏線の回収や場面展開の奥行き
邦画で世界を視野に入れて作品作りをする時に欠かせない要素がこれだけ散りばめられていた。邦画でこれだけのグローバルな作品が作られたことが嬉しい。
村上春樹が原作と聞いて、正直なところ自分語りの回りくどいエピソードを延々と見せられるのかと覚悟して劇場に足を運んだが、今作では村上春樹節はなりを潜め、良い意味で見やすい映画となっていたと思う。
近年では本当に心に残った作品。
DVDや配信もされていますが、話題作なので劇場で観ることもできます。
2021年度アカデミー賞作品賞にもノミネートされた秀作です。
きっと作品賞を獲ると予想しています。
是非、劇場でご覧ください。