「生きていかなければ」ドライブ・マイ・カー yumekoさんの映画レビュー(感想・評価)
生きていかなければ
昨年の公開時に見逃していたので、今回のアカデミー賞ノミネートのおかげで、再上映になり、劇場で観ることができたことに感謝。
3時間の長編だし、とても繊細なストーリーなので、家のTVで観ていたら、私の集中力は続かなかったと思う。劇場で観ることで、ひとつひとつのセリフや、役者さんたちの表情をしっかりと受け取ることができ、心がこんなに震えたんだと思う。
村上春樹さんの原作を読み、チェーホフのワーニャ伯父さんの情報も少し調べて劇場に足を運んだ。
村上春樹さんの原作は短編小説なのに、上映時間は3時間って、どうやって膨らませるのだろう?と思っていたら、村上春樹さんの同じ単行本の中の他の短編小説もストーリーに上手く含まれて、さらに内容の濃いものになっていた。
西島秀俊さんをはじめ、役者のみなさんの演技力の素晴らしさ。そして、村上春樹さんの世界観を大切にしながら、より深い世界を描いた素晴らしい脚本!
劇中劇のチェーホフのワーニャ伯父さんの舞台のセリフと映画そのもののストーリーがとても効果的に絡み合い、心の深いところに入ってくる。
多国言語の劇中劇という設定も良かったし、とくに、韓国人の女優さんが、手話で舞台のソーニャ役のセリフを伝えるシーンに何故か涙がこぼれた。面接の時、公園での練習、そして、最後の舞台上でのシーン。言葉にするよりももっと、感情が揺さぶられる。
最後の劇中劇のチェーホフの舞台上のソーニャの手話のセリフ、私も涙が止まらなくなったけれど、劇場内でも鼻をすする音があちこちでしていた。
『仕方がないわ、生きていかなければ!ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。…辛抱強く、じっとこらえていきましょう。人のために働いて、最後の時まで生きていきましょう…』みたいなセリフを手話で。
ここ、泣いていた人たちは、私も含め、人生後半の人が多いのかも?と思った。生きていくのは修行みたいだと感じる今日この頃。とくに、歳を重ねてくると感じる喪失感…。そんな今だから、このセリフを含め、いろいろと考えさせられるストーリーだった。
最後に語られるドライバーの女の子のお母さんの話も、グッときた。
生きる苦しみは、人の温もりで少しは癒される。
うまく表現できないけれど、私の記憶の記録のための感想として。
最後の時を迎えるまで、辛抱強く生きていこう。
グレシャムの法則さん、
コメントありがとうございます。
余韻を味わいたい気持ち、とてもよくわかります。私もこの気持ちを文字にしたかったので、鑑賞後にすぐに書きました。
最近、親や親しい人を亡くしたので、北海道でのハグの前の西島秀俊さんのセリフや、最後の手話のシーンは特に心に響いたのかもしれません。
はじめまして。
私は昨日二度目の鑑賞でしたが、舞台ラストの手話のシーンは、一度目よりもグッときました。「最後の時まで行きて…」の後、神様に憐れんでもらいましょう、ときた時にはなんとも言えない安堵感に包まれました。結局報われないことのほうが多い人生、家族がいようが友達がいようが死ぬときはひとり。
何度も聞いてきたような、そして当たり前のようなことが、これほども胸に響き、しかも突き放されるのではなく寄り添ってくるように伝わってきて…