「吐き気します」ドライブ・マイ・カー 車エビ太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
吐き気します
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もはや村上春樹の使い古されたメタファーの映像化に吐き気さえ覚えるようになってしまった。彼の若いころの新鮮さや奇抜さは失われ同じモチーフの使いまわしに読者は飽き飽きしているのではないか。どうしてこの作家を拾い上げるのか疑問に思ってしまう。さらに悪いことにはチェーホフのワーニャ叔父さんを見せかけの多様性の表現に利用したことだ。浅はかで底意の見える表現だ。ワーニャ叔父さんをこのような村上作品に持ち込んでしまったことはロシア文学に対する侮辱ですらある。
映画としては最低だが、唯一救いがあるとすれば岡田将生という役者を発見したことだ。あとの役者はミスキャストと断言できる。西島は映画「トニー滝谷」の時のようにナレーション俳優であるべき。霧島れいかやその他は何の魅力も感じなかった。そして何よりもひどかったのはあのサーブ900のひどいドアの音である。これほどガラクタな車はないのではないかと思うし、誰の車を借りたのか多摩ナンバーにはあきれ返った。さらに映像で示された妻の他人とのセックスシーンを目撃する主人公の芝居はおぞましいほど吐き気を覚える。このような頭の中でこしらえた理解不能な人物の描写は作家にその責任を問いたい。まったくのどうしようもない創作で、しかも何の意味もなさない。
まことに唾棄すべき作品であった。
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