「ひとりひとりの人生そのものが、ドラマなんだと気付く作品」ドライブ・マイ・カー ぴーちぱいさんの映画レビュー(感想・評価)
ひとりひとりの人生そのものが、ドラマなんだと気付く作品
ドラマチックな展開もなければスリルもサスペンスもない。
やっぱ、村上春樹の小説は難しくてよくわからん
…と、思いながら観ていたが、途中から気が付いた。
そうか、登場人物それぞれの人生の歩みこそが、
「ドラマ」そのものなんだ!
まず、家福の妻・音。幼い娘を亡くした悲しみと、脚本家というプレッシャーから、セックス依存症(だと私は思った)。夫を愛するがゆえに、そんな自分に苦しんでいる。
ドライバーみさきの壮絶な人生。
話せない妻とともに広島へとたどり着いた、韓国人夫婦。
最後にようやく自分の封印してきた感情と向き合うことができた家福。
そして、そのきっかけとなった高瀬の空虚さを抱えた人生。
劇中劇「ワーニャ伯父さん」のストーリーと家福夫婦のストーリーをベースに、
登場人物たちそれぞれの人生が縦糸、横糸となって、織り込まれてゆく。
まるで映画全体が、1枚のタペストリーを紡いでゆくかのよう。
最後にそれが見事に1つの作品として完成したとき、ようやく見えてくる。
ひとりの人間として、「生きる」とはどういうことなのか。
そこには人種も言語も必要ではなく、
ただいつも「感情」が存在している。
…深い!さすが村上春樹。
ラストシーンでは、
家福とみさきのこれからの人生を、想像の余地を残すように終わり、そこもよかった。
このエンタメ度の低い、日本の芥川賞的な映画が、海外でウケるとは正直驚き。
村上春樹作品への愛情と理解は、日本人以上なのかも⁉
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