「「わたし」という閉鎖空間」ドライブ・マイ・カー N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
「わたし」という閉鎖空間
原作未読。
村上春樹の作品は「ねじまき鳥クロニクル」と「1Q84」が好きだ。
まずは、そこから感じ取れる村上節が、映画にもにじみ出ていたように感じる。
それだけでも映画化は成功しているのではないかと思った。
ゆえに物語は一筋縄ではゆかない点が大衆向けといい辛く、
ここをどうとるかで評価、好き嫌いが分かれるに違いないと考える。
さて、他者を理解するためには、自身の中に深く潜らねばならない。
なぜなら理解を試みる自身を理解することが、前提だからだ。
その「自身」を「愛車」「演劇」という閉じた空間に投影させた主人公は
そこにあらゆる人を出し入れし、自らもまたさらけ出してゆく。
だが最後、閉じられていた自身を理解した主人公は、それらから開放される。
そうなるまでの葛藤の物語と観た。
はたして、いかに。
村上春樹の物語にちょくちょくあらわれる、
どこか知れない深い深い穴の中へ孤独と共に潜りゆき、
突き抜けたところに現れる原風景は象徴的で、
ふまえて、たどり着いたラストシーンにうまく再現されているのでは、と思った。
あの摩訶不思議、抽象的な文章を、と思えばやはり力作と讃えずにおられない。
また岡田さんの危うげな演技にも引き込まれた。
グッドラック! オスカー!!
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