「ちょっと今まで観たことのない映画」ドライブ・マイ・カー tackさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっと今まで観たことのない映画
3時間とあって、なかなか踏み切れずにいたが、近所で再上映とあって観に行ってみた。
3時間は、思ったほど長く感じられなかった。
場面展開が激しいわけでもなく、1シーンがめちゃくちゃ長い。
情報量が詰め込まれているわけでもなく、時間にしてはシンプル。
なので、決して疲れた、とか飽きた、は全然なく鑑賞できた。
この映画はちょっとこれまで私が観てきた日本映画の中では異質であった。
まず、セリフ回し。戯曲の舞台が本作の主題だけあって、セリフが日常会話とは違う。
通常日本語は文法のように『~です』『~なんだ』のような形で終わらず、『~ですし』『~ですよ』とか『~なんだよね』『~だから』みたいな語尾が多く使われていると思うが、この映画はほぼ文法通りのセリフ。台本と言うより、やはり戯曲的だと思う(実際台本読みのシーンがあるがそこも面白い)。
また、上に挙げたように、1シーンが長い(1カットではないが)。本当、舞台のようにかなりセリフを詰め込まなければならなかっただろうな、と思うほど長い。
以上のようになかなかこういった手法の映画を見たことがないので、ちょっと驚く。
そういった意味では、この映画は新たな体験として凄く良かった。
ただ、のめり込むかとか、気持ちが入るかと言われるとそうでもない。
私を原作を読んでいないから大それたことは言えないが、正直40代の夫婦の性愛を芸術的に語ることにやや嫌悪感を感じる。性や愛を、あまりに芸術的視点で捉えていたので、ここは私の文化偏差値では付いていけなかった。
あとはラストシーンが意味不明であった。何を言いたかったのか正直わからなかった。
カンヌで高評価を受けたが、監督自身、おそらくそこは狙って作ったような作品だった。
あまり詳しくないが、フランス映画っぽい感じもしたので。
もう一回見れるか、というとちょっと厳しいかな。
三浦透子のほぼ表情の変わらぬ演技は素晴らしかった。