「戸惑い・・・」ドライブ・マイ・カー mark108helloさんの映画レビュー(感想・評価)
戸惑い・・・
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まずこの映画の中で演じられる劇中劇だが、複数の言語やコミュニケーション手段を持つものがその言語のまま一つの劇を演じるというのをこの映画で初めて知ったのだが、実際に演劇の世界ではポピュラーな演出なのだろうか?それともこの映画におけるオリジナルなアイデアなのか?それとも原作に既にこう言った内容で表現されているのだろうか?
もし村上の原作に既にこういった内容でテーマ化されているのであればそこには2007年公開の映画『バベル』の影響を感じずには居れなかった。勿論異なるコミュニケーション手段をとった劇を映像の中に埋め込むという手法はとても高いオリジナリティを感じたが、後半のロードムービーが急にリアリティをなくす設定なのが前半かなりドキュメンタリックなのに対して逆説的に目立って気になった。正直2日間しか猶予がない中で、思い付きであの中古のサーブで冬の北海道へ1日でしかも北陸道経由で行くことのリアリティの無さは塗油距離運転したことのある人間えはあり得ない設定である。ロードムービーは現実の風景の中を現実の時間を掛けて移動するからこそリアリティがあり詩情が生まれる。ここは見終わってからじわじわと不満に感じてくるので正直評価をその分落とさざる得ない。この後に『グリーン・ブック』と言うアメリカのロードムービーを見るとそういった破綻がないのが素晴らしい。とは言え、この作品の持つ総合的な高い芸術性はそれで損なわれるものではない。各演者の迫力がスクリーンを突き破って胸に突き刺さる。
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