幸運の女神のレビュー・感想・評価
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厄介ごとも2人なら
【あらすじ】
ローマに暮らすアルトゥーロとアレッサンドロはゲイのカップルである。ある時、旧知の女性アンナマリアが2人の子どもを連れて2人のアパートにやってくる。アンナマリアは病気の疑いがあり、その検査入院の間、子どもを預かってもらうつもりでいた。
このカップルは付き合って長いが、お互いに浮気をし合い、関係は冷え切っていた。そんな中の子守りという重責に、関係はますます悪化。アルトゥーロが長年関係を持っていた浮気が明るみに出るといよいよ終局を迎えるが、家を飛び出すすんでのところで、アンナマリアが病院から一時的に戻ってくる。自身の最悪の事態も考えた彼女は、子どもたちの後見人としてアレッサンドロを指名するつもりでいたが、まさにアルトゥーロと別れるとなった状況では受け入れることが出来なかった。そこで、シチリアの母に預けることを提案する。
アンナマリアの母は厳格で、兄弟とともに虐待とも言える仕打ちを受けていた。その母に子どもを預けることを拒否する彼女であるが、他にすべもない。アレッサンドロとアルトゥーロの2人は、アンナマリアが回復するまでの間だけという期限付きで、子どもたちをシチリアへ連れ立つが、間も無くアンナマリアは亡くなってしまう。
再びシチリアを訪れた2人を待っていたのは手厳しい祖母と、部屋に閉じ込められた子どもたちの姿だった。アレッサンドロとアルトゥーロは2人を引き取り、一緒に暮らすことを決める。
【感想】
鑑賞後、登場人物たちの今後が幸せなものになるように願ってしまう、そんな映画。主人公を始め、出てくる人たちのキャラクターがとても魅力的だった。同性愛、浮気、虐待、病気と死。この映画が取り上げるテーマはこんな風に言葉並べれば仰々しいけれど、そんな重さを感じさせないさらっとしたものにしているのは、随所に散りばめられたユーモアなんだと思う。思わずふっと笑える自然な笑いがこの映画には溢れていて、それがなんとも愛らしい。
特に、ゲイのカップルが主人公ではあるけれど、ゲイゆえの苦悩とか偏見といったものにフォーカスせず、ただひとつのカテゴリとして描かれている(ように感じた)のが新鮮だった。終盤、2人がマリアアンナの母の元を去るときに女中が言った「あなた方は厄介ごとを抱えていて...」という言葉があるが、これも破局を迎えようとする2人の関係について言ったことで、何も2人がカップルであることを指すものではないのだと考えた時、なんだか理解が進んでいるんだなと思った。日本でもおっさんずラブは相当に受け入れられているようなので、それと同じ感覚なんだろうか。
「厄介ごとなら一つも二つも同じ」と、再び屋敷に戻る決心をするシーンはとても勇気づけられるものがあるが、無事救出?となった後のなんとも浮かない顔をする4人の表情がまたなんともいい。勇気や勢いでやったことには後悔が付きまとう。けど、その勇気が湧いてくるのは、1人でいるからではなくて、大切な人と一緒だからなのだろう。そしてその勇気に報いるのは、最後に4人が海の中でおまじないをし合う笑顔である。どうか、4人が幸せに暮らしますように。
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