劇場公開日 2020年12月4日

「売名でも偽善でも良い変化をもたらすならありか」ザ・プロム 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0売名でも偽善でも良い変化をもたらすならありか

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

社会運動へのコミットは個人の名声を高めるのに利用できる。そういう偽善はよくないという意見もあれば、売名だろうとなんだろうとそれで助かる人がいればいいじゃないかという意見もある。
本作の主人公、ディーディーはブロードウェイの往年のスターだ。新作が酷評され、このままではいけないと、人気回復のために保守的なインディアナ州で同性愛を公言した女子高生が、プロムに参加できるようにするキャンペーンを勝手に張ることを思いつく。意気揚々と高校に乗り込んできて、私たちが遅れた価値観のあなたたちの目を覚まさせてあげるよ、みたいな態度で騒動を巻き起こす。
鼻につく態度であることは間違いない。しかし、騒動がきっかけで多くの人が考えを見直すきっかけを作っていることも事実である。ただ、少し言葉で言われただけで、保守的な価値観で育った人々があれほどコロッと変わってしまうものだろうか、という疑問は持った。ライアン・マーフィ監督の願いも込みでそういう物語にしたのだろうと思うが。ジェームズ・コーデン演じるバリーの存在がマーフィ監督的にはキモなんだろう。
ミュージカルシーンは抜群に楽しいし、芸達者な役者が揃っているし観ていて飽きない作品だった。

杉本穂高