劇場公開日 2020年12月4日

「寛容と変化がテーマのスター競演ミュージカルの味わい方」ザ・プロム 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5寛容と変化がテーマのスター競演ミュージカルの味わい方

2020年12月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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プロムナイト。この高校最後の年にキャンパスで開催される卒業パーティは、生徒たちにとって晴れの舞台。従って、これまでも度々青春映画のネタになって来た。「アメリカン・グラフィティ」((73)「グリース」(78)「25年目のキス」(99)etc。しかし、なんと言っても強烈だったのは、クラスメートたちから阻害されてきた少女が、プロムクィーンに選ばれた直後、それが悪戯だと知って怒りの超能力でパーティ会場を焼き払う「キャリー」(76)だと思う。TVシリーズ「glee」(11)にもプロムを登場させたライアン・マーフィの最新作は、しかし、同性愛者の女子高生がそれを理由にプロムへの参加を禁止されるという、今そこにある問題をテーマにしている。彼女が受ける屈辱感と疑問は、もしかしてキャリー以上かもしれない。LGBTQ+マターはそう簡単に焼き払うことができないだからだ。そんな高校に新作ミュージカルが酷評された上にクローズとなった出演メンバーが、差別撤退を掲げて(実はイメージ挽回を狙って)乗り込んで来る。見せ場は勿論、舞台組を演じるメリル・ストリープやジェームズ・ゴーデンやニコール・キッドマン等によるド派手なパフォーマンスだ。2人のオスカー女優に当代一の芸達者コーデンを揃えたマーフィ(監督&製作)の吸引力はすごいと思うが、ポイントは、主役の女子高生が投げかけた波紋が、いい意味で周囲に変化をもたらしていく後半の展開にある。寛容と変化。それがなににも増して本作の新しさだ。娘を拘束しようとする頭の固いPTA会長を演じるケリー・ワシントンの美しさが、煌びやかな共演者たちの中一際目立っている。

清藤秀人