劇場公開日 2021年2月19日

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「「平凡な日常」って、そんなに悪いことなのだろうか? 人生の指針を考える意味でも重要な作品。」ある人質 生還までの398日 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「平凡な日常」って、そんなに悪いことなのだろうか? 人生の指針を考える意味でも重要な作品。

2021年2月18日
PCから投稿

本作は、2013年から2014年の398日もの間、 過激派組織IS(イスラム国)に拘束され捕虜となった実在のデンマーク人を描いていて、デンマークのアカデミー賞(ロバート賞)で主演男優賞、助演女優賞、 観客賞、脚色賞を受賞しています。
作風は、スウェーデン版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009)の監督作品なので、分かりやすく出来は良いです。
このIS(イスラム国)関連は、ニュースで頻繁に扱われていたので覚えている人も多いでしょう。ただ、現実には、「どこか遠くの争いだよね」と冷めた感じでいる人も少なくないと思います。
本作では最後の方で「内戦下のシリアでは100人以上の報道関係者が死亡」と出てきます。
この「最終的に死者が40万人を超えた争い」における悲劇を報道しようと、日本からも報道関係者が向かいました。
中でも2014年にISに拘束され、2015年1月30日に殺害映像がインターネット上で公開された後藤健二さんが大きなニュースになったりと、日本も決して他人事ではないのです。
私は、以前、ニュース番組のコメンテーターをしていた時に、後藤さんがディレクターで担当した回があったりと、それなりに面識がありました。紛争地域によく行っているという事は知っていましたが、まさかの出来事でした。このように世の中は思っているより狭いものなのです。

さて、本作は正直、キツいシーンもあります。ただ、その裏で家族らが追い込まれながらも必死に動いている様は、実に映画的です。そして、その厳しい出来事を映画の中で追体験する終盤に、「君は日常に戻る、退屈で平凡な毎日に」といったセリフが出てきます。
通常、このセリフから何か深い意味を見出すことはできないでしょう。ところが、本作を見ると、視界が大きく広がっていて「いかに深い意味をもつのか」が分かり、様々な事を考えさせられるのです。
そして、ラストへの展開は、実話ならではの深さがあり、感情が大きく揺れ動きます。
もちろん史実の追体験という意味でも大切ですが、私は、何気なく卑下してしまいがちな「日常」を考え直す意味で、とても大切な作品だと思います。

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細野真宏