「【”奴らの憎悪に負けたくない・・”と獄友は言った。全編を尋常でない緊迫感が覆う中、”人間の矜持と究極の家族愛””平凡な日常”の尊さを描いた作品。”ISISの実情”に踏み込んだ、意義ある作品でもある。】」ある人質 生還までの398日 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”奴らの憎悪に負けたくない・・”と獄友は言った。全編を尋常でない緊迫感が覆う中、”人間の矜持と究極の家族愛””平凡な日常”の尊さを描いた作品。”ISISの実情”に踏み込んだ、意義ある作品でもある。】
■今作の素晴らしき点
<Caution! 以下、内容に一部触れています。>
・今作の様な事件の際に、ジャーナリストの”自己責任”を追及する声が上がるが、デンマーク人の駆け出し写真家ダニエルはシリア自由軍の影響下にあると思われた非戦闘地域に取材に行き、台頭していたムジャヒディンの一部の過激派グループが、
-そしてそれがISIS(Islamic State of Iraq and Syria)に変容して行く・・ー
その地を支配し始めていたために、人質になった事がキチンと描かれている事。
(2013年5月頃)
これは、これまでのISISの所業、もしくはシリア内戦を描いた「バハールの涙」「ラッカは静かに虐殺されている」「プライベート・ウォー」「シリアにて」などの作品では、描かれていなかった事である。
・ダニエルがISISに拘束されてからの、過酷過ぎる日々の描き方。それは、彼が囚われていた廃校になった小学校の教室で自死しようとした程であることが、きちんと描かれている事。
又、国際法を完全に逸脱しているISISの捕虜達に対する態度。
・デンマークは、テロに屈しない姿勢を取っているため、ISISの巨額の身代金を支払わない。そのため、ダニエルの家族は、マスコミに公にされないように密かに、身代金を調達しようと奮闘するシーンの数々。
ここも、これまでの物語とは違う点であるし、ダニエルの家族、恋人の心の重圧がキチンと描かれており、それ故に、観ている我々は、シリアでのダニエルの過酷な日々と並行して、デンマークのダニエルの家族の過酷な日々も、見せられるのである。
身代金を中途半端な額で提示したがために、ISISの誇りを傷つけ、更に高額な身代金を要求されるダニエルの家族。
人質救出の専門家アートゥア(そんな職業が有るほど、現地では日常化しているのであろう・・)の助言も空しく、時間だけが過ぎていく。
憔悴していく、ダニエルとその家族、恋人の姿。
・ダニエルの収容所に、新たに、アメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーが連れられて来るシーン。
彼は、常にユーモアを忘れず、弱音を吐かない。
そして、誇りを忘れかけていたダニエルにも勇気を齎す。
アメリカ人であるがゆえに、殺される危険が最も高い筈なのに・・。
その明るさは、彼の
”家族への揺るぎない愛と、自らの尊厳を保つ。”
と言う信念に基づくものであろう。
凄い男である。
・ISISの最凶の男、ジョンが人質の一人をあの忌まわしきオレンジ色の服を着せられた、ダニエル達の前で射殺するシーン。
最凶であるはずの、彼の銃を握る手が、小刻みに震えている。
その前の ”最初に人を殺した後は心が重くなる・・” という言葉。
ISISの男達も”人間である事”が、きちんと描かれている。
・ジェームズ・フォーリーが自らの行く末を知っているかのように、ダニエルに託した家族への愛が溢れる言葉・・。
- ここのシーンが、あのジェームズの最期と、アメリカでのジェームスの葬儀の際に、家族たちにダニエルが”暗記した”彼の言葉を述べるシーンには、涙が溢れた・・。ー
・ダニエルの母が、身代金を集めるために行った事。”母は強し”である。
そして、漸くかき集めた身代金により、ダニエルが、姉アニタと再会するシーン。
<ISISに捕らわれた、ダニエルを始めとした捕虜たちの過酷な日々と、ダニエルを救出しようと、大変な重圧の中、懸命に身代金を集めようとする家族、恋人の姿。
2時間18分間、尋常ではない緊迫感の中、物語は進む。
ダニエルが亡き友の遺志を継いだかのように、彼の家族に彼の遺した言葉を伝えるシーンで涙し、ラストのテロップで、暗澹たる気持ちになりつつも、ダニエルが今でも報道写真家として、活躍している事実を知った時には、別の感慨に襲われた作品。
ニールス・アルデン・オブレブ監督の新たな傑作であろう。>
おはようございます。
金沢にはISISという医療技術専門学校があります。
同じ名前になってかわいそうです・・・
テロリストが生まれた背景だとか、そのあたりも描いてほしかったな~と贅沢な文句を言ってみたくなりましたが、逆に家族愛を中心にしたおかげで涙することもできました。
歴史の中に埋もれてしまいがちな、裏事実を描いた作品がもっと世に出るといいですね。勉強になりました。
こんにちは☀️
実話ベース、社会勉強兼ねて必ず観たい映画、チェックインですね👍
場所違いですが「象〜」振り返って感じたのは、あの「間」はやはり必要だな。根気は要りますが観る価値はあると思います。時間のある時に😆お邪魔しました!
コメントありがとうございます!
そんなに仰って頂き大変恐縮です。だって、こちらに登録&コメント始めたのは新解釈三国志擁護というふざけた理由ですもの(笑)
新作映画、多岐に渡りご覧になっていらっしゃるようで頭が下がります。フォローさせて頂きますね。
レビュー楽しみに拝見させて頂きます。今後とも宜しくお願い致します。