陶王子 2万年の旅のレビュー・感想・評価
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陶磁器の色を発見する過程が面白い
古代中国や縄文時代の「赤」から、中国の「白」、エジプトの「青」、中国の「青/白」、スペインやイタリアでの白に似た色、ドイツ・マイセンでのヨーロッパ初の「白」、フランス・セーブルでの多彩な色、と色を出すためのさまざまな材料、釜などの工夫による高温の出し方などが紹介され、陶磁器における2万年の歴史を振り返るドキュメンタリー作品。
現代ではファインセラミックスとして宇宙船の断熱材としても使われている焼き物。
陶器で出来た人形の陶王子をナビゲーターに、土器から陶磁器、ファインセラミックまでの歴史を学べる。
個人的にウエッジウッドやロイヤルコペンハーゲンなどヨーロッパの食器が好きなので大変興味深く観れた。
最初は白の出し方、続いて青、と大変な努力と試行錯誤を経て色の出し方を発見する過程が面白かった。
のんの声がナビゲーターとして聴けて良かった。
焼き物の好きな人にはオススメです。
至高のエデュケーショナル映画
セラミックのはじまりを写しと捉えていくところが非常にしっくりきて、かなり教育番組的なつくりながらも、一つ一つなるほどと思いながら観賞できました。
教育番組的といっても、アートの要素が満載というかそれで埋め尽くされていたので、ビジュアル的にも楽しめるはずです。
タイトルにも関わっている操り人形の演出に、一抹の不安を覚えましたが、数々のドールには圧倒されました。
取材力とか素材の質の高さは素晴らしいものがありましたが、グラフィックとか合成のされ方があまりにもお粗末だったって印象が・・・
とはいえ、これを見終わって、コーヒーや紅茶はガラスやステンレスではなく、マグなどセラミックで飲みたいという気持ちになりました、味ばかりではなく見た目も気にしながら─。
【使用して普段の生活も豊かに】
僕の田舎の実家の近くには、縄文時代の竪穴式住居跡があって、近所の畑や畦道で、縄文土器の破片や石器が見つかることが多かった。
僕の幼馴染は、鏃(やじり)など鋭利な石器が好きだったが、僕は土器の縄目文様が好きで、破片を拾い集めていたことがある。本当は、よそのうちの畑を掘ったこともある。
僕の父方の実家は、陶芸の窯元で、一時、地震や磁器の台頭、戦争で途絶えていた時期もあったが、今は親戚が再興して、窯を営んでいる。
そんな理由で、僕は陶磁器が好きだ。
自分で教室に通ったこともある。
高価な器も持っている。
高価な抹茶の器を落として割ってしまって何ヶ月も落ち込んだこともあるし、ハンズで金継ぎの道具を買って、金継ぎを試したが、下手で更に落ち込んだこともある。
前に、磁器を生産している窯の方と話をした時に、現代は、皆、器を大切に使うので、割れることが少なくなっていて、ある意味、商売があがったりだとぼやいていたのを思い出す。
中国から伝わり、ヨーロッパで発達した磁器はとても洗練されている。
デザインや色彩は普段使う時の楽しみでもあるが、それだけではなく、使用した後の洗い上がりが、安いものとは全然違うことにも驚かされる。
僕は専門家ではないので、こんな程度しか話題にできないが、是非、様々な器を使って、この映画で語られる2万年の旅路に想いを馳せて欲しい。
コバルトの青も素晴らしいが、陶器に使われる藁灰(わらばい)の海鼠釉(なまこゆう)の青も深い海の底を思わせるようで素晴らしい。
欧米では、現在、洗練された磁器より、素朴な釉薬を使用しない陶器を好む傾向が高まっているという話も聞く。
あまり、形式に拘らず、お気に入りの陶器の器で抹茶をたてるのも心が休まります。
日々使うことで、生活にリズムが生まれたり、豊かさを感じたりすることも出来ると思うので、皆さん、器に目を向けてみて下さい。
ドイツの王様、ヒドイです。。。
ドイツとフランスの争いが勉強になりました。それにしても景徳鎮のあの賑わいは楽しそうでした。エンターテイメントとして成立してて、日本でいうマグロの解体ショーのようなものなんだろうなあと思いました。
後味の悪い作品
2万年におよぶ「人間と器との関わりの歴史」がテーマのようだが、たった110分なのに大風呂敷を広げすぎで、内容が伴っていない。
サイエンスや文明の観点からのアプローチが中心で、文化面やアートの話はかなり切り捨ててられていると思う。
話は、赤、白、青の3色を巡って展開する。短時間で歴史を語るための、大胆な切り口と言えるものの、いささか無理のある話の進め方だ。
冒頭の、“陶器の誕生”以前の人間の食生活のあり方と、「粘土+砂」による“陶器の誕生”のところは良かった。
また、二段窯化による高温焼成の実現や、回転台による幾何文様の誕生の話など、前半は面白かった。
コバルトで絵付けされた器が、高温で釉薬が透明化し、冷却過程でコバルトが発色する様子を収めた映像は初めてで、勉強になった。
しかしその他は、総じて内容が浅い。
題材の取捨選択の基準もよく分からない。多くの重要なことが抜け落ちている。
古代エジプトのファイアンスという珍しいテーマを取り上げたのを観て、「おっ!」と感動したのだが、結局「水酸化カルシウムを使うと作製できた」みたいな単純な話で、具体性に乏しい。
また、「赤い焼き物は、炎や血の色」など、一個人の意見であって、客観的とはいえない見解も目立つ。
せっかく、のんがナレーターをやっているのに、今一つ彼女の良さを聞くことができない。
せめて「陶王子」という人形を使っているのだから、ストップモーションで動くマイセン磁器みたいな、メルヘンチックな構成にしても良かったと思う。
後半に進むほど、つまらなくなってくる後味の悪い作品だった。
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