「【使用して普段の生活も豊かに】」陶王子 2万年の旅 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【使用して普段の生活も豊かに】
僕の田舎の実家の近くには、縄文時代の竪穴式住居跡があって、近所の畑や畦道で、縄文土器の破片や石器が見つかることが多かった。
僕の幼馴染は、鏃(やじり)など鋭利な石器が好きだったが、僕は土器の縄目文様が好きで、破片を拾い集めていたことがある。本当は、よそのうちの畑を掘ったこともある。
僕の父方の実家は、陶芸の窯元で、一時、地震や磁器の台頭、戦争で途絶えていた時期もあったが、今は親戚が再興して、窯を営んでいる。
そんな理由で、僕は陶磁器が好きだ。
自分で教室に通ったこともある。
高価な器も持っている。
高価な抹茶の器を落として割ってしまって何ヶ月も落ち込んだこともあるし、ハンズで金継ぎの道具を買って、金継ぎを試したが、下手で更に落ち込んだこともある。
前に、磁器を生産している窯の方と話をした時に、現代は、皆、器を大切に使うので、割れることが少なくなっていて、ある意味、商売があがったりだとぼやいていたのを思い出す。
中国から伝わり、ヨーロッパで発達した磁器はとても洗練されている。
デザインや色彩は普段使う時の楽しみでもあるが、それだけではなく、使用した後の洗い上がりが、安いものとは全然違うことにも驚かされる。
僕は専門家ではないので、こんな程度しか話題にできないが、是非、様々な器を使って、この映画で語られる2万年の旅路に想いを馳せて欲しい。
コバルトの青も素晴らしいが、陶器に使われる藁灰(わらばい)の海鼠釉(なまこゆう)の青も深い海の底を思わせるようで素晴らしい。
欧米では、現在、洗練された磁器より、素朴な釉薬を使用しない陶器を好む傾向が高まっているという話も聞く。
あまり、形式に拘らず、お気に入りの陶器の器で抹茶をたてるのも心が休まります。
日々使うことで、生活にリズムが生まれたり、豊かさを感じたりすることも出来ると思うので、皆さん、器に目を向けてみて下さい。