マーメイド・イン・パリ

劇場公開日:

マーメイド・イン・パリ

解説

パリの街で恋に落ちた人魚と恋をすることができなくなった男の恋愛ドラマ。老舗のバーでパフォーマーとして働くガスパールは、ある夜、傷を負い倒れていた人魚ルラを見つける。美しい歌声で男たちを魅了し、恋に落ちた男の命を奪っていたルラは、ガスパールの命も奪おうとする。しかし、過去の失恋により恋する感情をなくしてしまったガスパールには、ルラの歌声がまったく効果がなかった。2人は次第に惹かれ合っていくが、ルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らなければ、命を落としてしまうという。

2020年製作/102分/G/フランス
原題または英題:Une sirene a Paris
配給:ハピネット
劇場公開日:2021年2月11日

スタッフ・キャスト

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(C)2020 - Overdrive Productions - Entre Chien et Loup - Sisters and Brother Mitevski Production - EuropaCorp - Proximus

映画レビュー

3.5奇妙で可愛らしい小世界を巧みに彩った幻想譚

2021年2月25日
PCから投稿

夜な夜なパリの川辺では不思議なことが起こる。おそらくこれが東京やニューヨークやロンドンだと全く成立しないのだろう。パリだからこその幻想譚。怪奇性と童話性を絶妙に混ぜ合わせたストーリー、カラフルな色遣い、キャラクターがなぜかしっくりくる。また、大風呂敷を広げすぎない設定に好感が持てる。そうやって世界観をしっかりとコントロールしているように思えるほど、本作は切なくて独特で、可愛らしい。そうそう、音楽やダンスといったパフォーマンスも魅力の一つ。素晴らしい芸術は人の心を根こそぎ奪うものだが、ここでは美しい人魚の歌声が文字通りに人間の命を奪う。そんな感情と結果があらぬ角度で結びつくところも面白ければ、愛を失った主人公がその特性ゆえ彼女の歌声や想いを逆にしっかりと受けとめることができるのも捻りが効いている。どこもかしこも奇妙なことばかり。だが、裏を返せば実にストレートなラブストーリーなのかもしれない。

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牛津厚信

3.5設定は「人魚姫」でテイストは「アメリ」

2021年2月18日
iPhoneアプリから投稿

楽しい

そもそも人魚は、ホメロスの「オデッセイア」に登場し、18世紀になるとアンデルセン童話の「人魚姫」として広く知られる悲恋のヒロイン。陸に上がったマーメイドが人間の男と恋に落ちるが、やがて彼女は海に帰らなければならないという設定は、多くのアーティストのクリエイティビティを刺激。ロン・ハワードはダリル・ハンナとトム・ハンクスでファンタジーラブコメの「スプラッシュ」を作り、ディズニーはアニメ・ミュージカルの「リトル・マーメイド」(実写化も決定)を製作した。共通するのは夢と恋と笑いだろうか。しかし、このフランス映画はちょっと違う。マルチアーティストとして活躍するマチアス・マルジウ監督は、その歌声で男たちを死に至らしめてしまう人魚と、失恋の痛手から2度と恋はしないと決めたウクレレ奏者の男を主人公に、ままならない恋愛の奥義をフランスのエスプリをたっぷりと含ませて描いている。シチュエーションは「人魚姫/ファム・ファタール版」で、テイストは「アメリ」。特に1950年代を意識した美術と、監督自身が作曲した音楽が目と耳に刷り込まれる。コロナ禍の影響でパリでは公開後わずか3日で上映打ち切りとなった本作が、日本では少しでも多くの観客の目に触れて欲しい。今こそ、人々はファンタジーを欲しているのだから。

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清藤秀人

4.0主人公と半人半獣の異種恋愛の物語類型をなぞるが、ポップでキュートな仕掛けはさすがフランス流

2021年2月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

広く捉えるならギリシア神話や日本神話の頃からある「異類婚姻譚」の一種だが、近現代の社会に人魚が現れる実写映画に限定するなら、アンデルセンの「人魚姫」を現代的にアレンジしたトム・ハンクス&ダリル・ハンナの「スプラッシュ」がこのサブジャンルの定型を確立したと思う。人魚と人が恋に落ち、街でしばしの逢瀬を楽しむが、科学者や軍といった敵による拉致の危機が迫り――というパターンだ。「シェイプ・オブ・ウォーター」は「スプラッシュ」の男女の設定を入れ替えて(男が半魚人、女が人間)終盤の展開もほぼ完コピーだったし、この「マーメイド・イン・パリ」もかなり「スプラッシュ」に近い筋ではある。

もちろん本作には、人魚のルラが歌で男を魅惑して死なせる(ローレライ伝説からの着想)、ガスパールが過去の失恋(ハートブレイク)で心が壊れているためルラの歌で死なないなど、気の利いたアレンジもある。そして何より、「アメリ」やミシェル・ゴンドリー監督の諸作、比較的新しいものではセーヌ川の船上レストラン/バーが重要な舞台になる点で本作と共通する「ロスト・イン・パリ」などのように、フランス映画で時折見かける、ポップでキュートな美術や仕掛けが物語を巧みに盛り上げ、オリジナルな魅力を高めている。

本作が初の長編実写映画となるマチアス・マルジウ監督は、デビュー作がアニメーション映画「ジャック&クロックハート 鳩時計の心臓をもつ少年」だそうで(予告編だけ見たが、デフォルメしたキャラ造形とダークな雰囲気がティム・バートン監督っぽくていい感じ)、本作のオープニングなどでもその才能を垣間見せる。今後の活躍が期待される多才な映像作家だ。

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高森 郁哉

3.5パリの河には人魚がいるのだ

2024年6月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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Mr.C.B.2

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