KCIA 南山の部長たちのレビュー・感想・評価
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イ・ビョンホンの名演を堪能し、感慨に耽る
韓国の実話を基にした映画の腹の括り方(覚悟)には毎回感服させられる。1979年10月26日に韓国の朴正煕大統領が、右腕とも言える中央情報部(通称KCIA)部長キム・ギュピョンに暗殺された。大統領はなぜ暗殺されたのか。映画はこの事件発生の40日前から真相にスリリングに、サスペンスフルに迫っていく。 原作はキム・チュンシクによるノンフィクション「実録KCIA『南山と呼ばれた男たち』」。メガホンは「インサイダーズ 内部者たち」で、財閥と政治家の癒着による巨大権力の腐敗を描き高い評価を得たウ・ミンホ監督がとった。「KCIA 南山の部長たち」の全編を貫く重厚なトーン、カメラワークや光と影にこだわった照明、そして79年当時を再現した美術など、そのクオリティは極めて高く、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」(1972年)のような質感と展開に圧倒される。 しかし、何と言ってもこの作品の見どころはキム・ギュピョン部長を演じたイ・ビョンホンの名演に尽きるだろう。「インサイダーズ」でも組んだミンホ監督と息もぴったりで、キム部長の揺れ動く心情を、無表情のようでいて、瞳の奥や表情のちょっとした動き、またその背中で力強く、そして繊細に表現し、説得力を与えている。 パク・チャヌク監督の傑作「JSA」(2000年)で、共同警備区域の若き兵士を鮮烈に演じていたイ・ビョンホンが、20年の時を経て、大統領暗殺者の役を演じているのがとても感慨深い。本国で大ヒットし、ビョンホンが百想芸術大賞主演男優賞を受賞したのも納得である。彼の成熟した名演を堪能でき、韓国史を知る上でも必見の作品だ。
権力はなぜ人を腐敗させるのか
権力を握ると人が変わるのは歴史の必然なのか。韓国の中央情報部局長が現職の朴正煕大統領を暗殺した事件をもとにしたこの作品、かつて同士としてクーデターを起こした大統領と主人公の中央情報部部長は、やがて学生運動の弾圧の是非を巡って争う関係になる。自らの保身ばかり考える取り巻きと同様に、大統領にはかつて国を変えると志して、腐敗と旧悪の一掃を唱えてクーデターを起こした。しかし、長く権力の座に居座り、自らが腐敗と旧悪となってしまう。少なくとも主人公にはそう思えた。国を想う気持ちを忘れた独裁者は国家にとって裏切り者、だから主人公は職責として大統領を暗殺した。歴史は繰り返すというが、高い志を掲げて権力の座についたものもいつか腐敗する、歴史はその繰り返しで様々な人間が実権を握ってきた。 映画は、主人公のキムが国家の行く末を憂う人物として描く。彼の行ったことは暗殺であり、非合法な手段である。しかし、この映画は暗殺の是非は問わない。むしろ、この暗殺行為は歴史の歯車だったのだという感慨すら湧く。
非常に見応えのある現代史の実録モノ
見応えのある実録モノであり、各々の人物の感情のうねりがダイナミックに伝わってくる。単に歴史的事実を並べるのではなく、そこに個々の思惑がどう絡み、いかにして79年のあの日、あの時、主人公が引き返すことのできない橋を渡ることになったのかを、時に針のような鋭さで描く。つまり、感情はダイナミックで、演出はタイト。このメリハリが本作では巧みに機能していて、韓国、アメリカ、フランスという広大な場所移動を抱えながら決してバラバラな印象はなく、さらには一つ間違えると複雑さに溺れかねない相関図をあえて最小限にしたのも効果的。本編が2時間弱に収まっている点も含めて、作り手のアングル設定が非常にクレバーなのだ。そしてやはりイ・ビョンホン。メガネ奥の目の動きで、彼の動揺や思惑、意志、覚悟のほどが推し量れる。さらにはベテラン役者陣との絡み合いによって場面ごとに微妙に温度感の異なる化学変化が醸成されていく様は見事だ。
暗殺決行の瞬間に向けてキリキリと弓が引かれるような緊張感
たまたま大河ドラマ「麒麟が来る」が大詰めを迎えているが、韓国で権勢をふるった朴正煕大統領を側近のKCIA部長が暗殺した事件は、まるで織田信長を明智光秀が討った本能寺の変のようだ。動機は諸説あるが、首謀者に「世のため民のため」という“義”があったとする説に立つ点でも「麒麟が来る」と共通する。 ウ・ミンホ監督は2作前の「インサイダーズ 内部者たち」でイ・ビョンホン(破天荒なヤクザを熱演)と組み、韓国のR指定作品として歴代最高の動員数を記録した。同監督の「スパイな奴ら」も配信で観たが、いずれもケレン味あふれる演出という印象。だが今作は実際の暗殺事件に基づくこともあってか、ソリッドでストイックな演出に徹している。イ・ビョンホンも打って変わって七三に固めた髪に眼鏡でイケメンオーラを封印し、大統領からの理不尽な命令に追い詰められていくKCIAのキム部長を的確に演じた。いくつもの出来事と状況が積み重なり、大統領暗殺という究極の一手に至るまで、場面場面の丁寧な心理描写でじわじわと緊張が高まるさまは、弓がゆっくりとキリキリと引かれていくかのよう。放たれた矢と同様、決行はほんの一瞬だが、そこに至るサスペンスの盛り上がりこそが本作の肝だ。
2020年の韓国で興行収入1位、アカデミー賞選出作。1979年に韓国大統領が韓国のCIAに暗殺された実話がベース。
まず、結論から言うと、本作の出来は良いです。実際に韓国で2020年の年間興行収入1位の大ヒットをしています! しかも「パラサイト 半地下の家族」に続いて、本年度のアカデミー賞で韓国代表作に選出されてもいます。 ただ、決して難解な内容ではないのですが、日本人が見ると、「少し難しい」と感じるのかもしれません。 それは、顔と名前と専門用語と場所が少しややこしいので、置いてけぼりにされるシーンも出てくると思われるからです。 まず、さすがにイ・ビョンホンは有名なので識別しやすいと思います。ただ、彼以外だと似た雰囲気の顔の人もいて、「…ん?」となるシーンもあると思います。 また、名前が、キム部長、パク大統領、パク元部長、クァク室長など、やはり韓国映画らしい名前が多く、登場人物も少なくないため、ややこしくなります。 さらには、タイトルの「KCIA」というのは、韓国のCIA(中央情報部)のことで、政治が舞台なので韓国の政治の専門用語も出てきます。 ただ、あえて言うと、細かいところは無視してもいいのかもしれません。 全体を見てみると、やっぱり面白いと感じられる作品だからです。 本作は、1979年10月26日に韓国の大統領が「KCIA」に暗殺された実話をベースに描かれています。フィクションの部分もありますが、史実を描いていて、ラストでは「実録映像」に変わります。 映画で描かれるのは、「暗殺事件発生の40日前」から「暗殺事件当日」までなので、案外、短い期間なのです。 しかも「韓国版のCIA」なので、韓国だけではなく、アメリカやフランスも舞台となっています。 さらには、意外なところで「日本語」で話し始めたり、「日本の週刊誌」が出てきたり、「日本のお札」が出てきたりもします。 ちなみに、副題の「南山の部長たち」というのは、「KCIAの歴代トップたち」という意味です。 「KCIA」という大統領直属の諜報機関は、大統領に次ぐ強大な権力と情報を握っているため、「KCIAのトップ(部長)」は大統領の次に権力を持っている存在でした。 そして、「KCIA」は南山という場所にあったので、その「歴代の部長たち」は、場所に因んで「南山の部長たち」と呼ばれ恐れられていたのです。 本作では、アメリカの下院議会聴聞会で韓国大統領の腐敗を告発するパク元部長と、イ・ビョンホンが演じるキム部長の2人が登場します。 わずか40日間を描いた作品ですが、「今から約40年前の韓国って、こんな感じだったの?」と、いろんな面で発見や驚きがあると思います。 果たして「イアーゴ」は誰だったのか? これだけでも十分に面白いサスペンス映画です。 なお、評価は、知識の有無で平均3.5~4.5点くらいになると思うので中間の4点にしておきました。
夢中になってあっという間に見終わってしまった。
今現在うつ病のわたしがこの映画を観て、こんな世界に日々耐えて出勤できていた人たちがいたことに驚いた、同じ人間とは思えないバイタリティー!というのがまず感想でした。 初めは同じ志しで革命を起こしたのに、いまその大統領は変わってしまった。しかも陰で自分を侮辱して立場を切ろうとしている。それでもその大統領のために戦友を騙して殺してしまうまでしてやったのに。車で連れ去って暗殺するはずが、強くて車の中の雇われ殺し屋を頭に袋を被ったまま手錠をかけられたままやっつけて逃げ出すシーンがかっこよくてよかった、結局殺されてしまったけど…。対立する軍の部長?との揉み合いのシーンも主人公を応援していながら観ていた。主人公は暗殺者で実際に殺人を犯しているけど、この映画で主人公は悪人には表現されていないようだった。当時の韓国の国民の人たちの感想を聞きたいなと思った。
個人の信念の「狂信性」の怖さ
映画「ソウルの春」へとつながる、朴正煕大統領暗殺事件を扱った作品。今作を単独で観ていたらきっとわからなかっただろうと思うことが、ユン大統領の非常戒厳騒動と「ソウルの春」の視聴のおかげで大分理解できた。 ただ、どちらの作品を観ても、やっぱりその時々の軍のクーデターの大義名分が、自分にはよくわからない。反共や北の脅威が強い理由になっている(今回の非常戒厳も)が、日本の植民地支配を経てソ連参戦からの南北分断、その後の朝鮮戦争という経緯を考えると、そもそもの昔に戻る南北統一に気持ちが向かうのは、人々としてごく自然なことのように思うのだが、大韓民国としての体制維持の観点からは、そんなに許されないものなのだろうか。朝鮮戦争のきっかけとなった北の侵攻や、南だけで国家の樹立が急がれたこと、朝鮮戦争の結果の何十万人という犠牲者、形式上は今も休戦状態ということからすると、やっぱり許せない状態なのかもしれないが…。 「モガディシュ」や「宝くじの不時着」の中に見られたような世界を望むのは、自分が傍観者でいられる立場だからなのだろう。 それでもなお、東西ドイツが統一を果たしたように、朝鮮半島の統一の道を探る方向が主流にならないものか、自分はずっとモヤモヤしているので、クーデター自体が、もっともらしいことを口実にした単なる権力闘争に見えてしまうのだ。(実際にそうなのかもしれないけれど) 体制側の腐敗を指摘し「国民のために」とは言うが、朴正煕が起こした5・16軍事クーデターの目指したものが、今ひとつつかめていない自分にとって、イ・ビョンホン演じるキム部長が繰り返し語る「我々が何のために革命を起こしたのか思い出してください」というのが正直入ってこない。 「反乱分子は戦車で轢き殺せ」という警護室長や大統領に対して、苦虫を噛み潰したような表情はするものの、大統領がいみじくも指摘したように、キム部長自身も「目的のためには友人(パク元部長)を殺す人物」な訳で、「何を国益と考えるか」の違いによって、「犠牲にしても仕方がないという相手が誰か」が変わっただけに過ぎないのではないかと思ってしまう。 そう思いながら観ていると、この映画の本当の怖さは、「これが絶対に国のためになる」と思っている個人の信念の「狂信性」なのではと思わされる。(そうした点でいうと、「ソウルの春」でも、今作でも、自分の欲望にまっすぐな人物として描かれる全斗煥は、逆の意味で清々しさを覚えるくらいだ) 今作の中で、朴正煕は度々「君のそばには私がいる。好きなようにしろ」というセリフを口にする。パクもキムも南山の部長たちはそれに従い、良かれと思ってしたことの揚げ足をとられて失脚していってしまうのだが、その人が判断基準になる人治主義の手法が、こうして全斗煥に継承されていったんだなというのは、よく見てとれた。 というように、すっごく面白かったとまでは言えないが、改めて色々考えさせられた映画だった。 本筋とは外れるが、お酒が本当に美味しそうに描かれていて、マッコリのサイダー割、やってみたくなった。
盗聴
ハズレ無しでおなじみ韓国の実録路線映画。政治的信念や正義への思いと、死の恐怖との間で引き返せない道へと進むKCIA部長を描く。イ・ビョンホンいいね。/コッポラ『カンバセーション……盗聴』でもそうだけど、盗聴は人をおかしくするね。聞こえない方がいいことってあるね。
極上サスペンス
韓国映画にありがちな間抜けなキャラが出てきて ノイズとなることなく(直情的な奴は出てくるが、間抜けではない) 終始緊張感のある演出で、最後のその時へ迫っていく。 イ・ビョンホンの演技が素晴らしい。 史実でも義憤説と私情説どっちもあるらしいので 最後の描き方もよかった。
韓国のバックボーンを感じる
実際にあった大統領暗殺事件 男性ばかりの政治組織 18年続く独裁 映画化できたことが、ある意味、韓国の今なのだ 歴史的背景を知ることが、その国を知ることにつながるという 当たり前のことに気づかされる
大統領閣下のお気に入り
韓国映画強化月間、第3弾は「KCIA 南山の部長たち」! 韓国映画に疎い私でも、ご存知!イ・ビョンホン。かの名作JSAはリアルタイムで劇場で観ましたから。 自分の好きな政治もの、情報機関ものなので、評価が甘めになっている可能性大ですが、予想に反して、国家の陰謀とかそういう大それた話ではありませんでした。韓国の歴史を知らなかっただけですけど・・・。 ワシントンでのアメリカ議会の公聴会、パリでの工作活動など、政治もの、情報機関もののエッセンスは入れつつも、ほとんど3人の男の心理戦というか愛憎劇というか。 「大統領閣下のお気に入り」になれるかどうかが出世と生死を分けるという非常に狭い世界の話。 KCIAのキム部長の凶行は、国家国民を思ってのことですか?苦悩するヒーローのような描かれ方をしていて、イ・ビョンホン贔屓だとそう見えてしまうかもですが、どうもそんな深遠なお考えと冷静な判断で閣下を暗殺したようには思えません。 ほとんど、感情的、発作的な犯行でしょう。彼は閣下の暴走を止めたかった。あの頃の閣下に戻って欲しかった。自分の話を聞いて欲しかった。歪んだ愛情なのかもしれません。 情報機関のトップとしてのキリッとした表情と出で立ち。打ち震える感情が表に出てくるのを必死で堪える苦悶と緊張の表情・・・。イ・ビョンホンの演技が堪りません。 情報機関員らしくスマートに仕留めず、拳銃の弾切れとか、血糊で滑るシーンを入れてくるあたり、彼の発作的凶行と動揺ぶりの生々しさが伝わってきて、演出にも唸ります。 しかし、私はやはり目がおかしくなったのかもしれません。 「密輸 1970」でも同様の現象に陥って困ったのですが、イ・ビョンホンがずっと遠藤憲一に見えました! こうして評価の高い韓国映画を観ると、どうしても邦画と比べてしまって彼我の実力差というか、政治でも何でも恐れず描く映画界の度量の差というものを見せつけられる気がします。日本の映画界は、何か恐れているのか?忖度しているのか? いつか日本でもこのような権力の「暗部」に真正面から切り込む映画を観たいと願います。大衆ウケしなくてもいいから!
大統領の殺し文句がすごかった。
凄かった。 最後20分ほどは自分の心臓の音が聞こえそうだったわ、ヘッドホンしてみてたから。 夢中で観てしまった。 大統領の部下を掌の上で転がす時に使うセリフが何ともいえない。何があっても味方だよ、と言われているようなもんでしょ。 時の権力者にそんなこと言われたら、そりゃグラグラするよな。。 そして太鼓持ちが過激だと、注がれる油の量が半端ないから燃え上がり方も激しいな。 彼がずっと可燃材料を投下し続けるから、大統領も自分の火種を全然穏やかに消せず、冷静に冷やそうとするキム部長の声が届かないのがしんどかった。 先に『ソウルの春』を観てからこちらを観たのだけど、本当に激動の時代だったのね。 事実は小説よりも奇なりは上手く言ったものだわ。作り話じゃないところがすごい。
今日の仲間は明日の敵
「ソウルの春」を観に行こうとレビュー見てたら、まずこの映画を観た方が時代背景が解って良いと書いてあったので鑑賞。 せっかく革命を起こしても、権力を持つとみんなダメになるのね。 今日の仲間は明日の敵。
「ソウルの春」を呼ぶ暗殺、しかし民主化は遠かった
2024年封切りの「ソウルの春」を鑑賞後、映画.comレビューでお勧めがあり、ネトフリにて鑑賞(ちなみに2024年9.19で配信終了です)。 なるほど、1979年12.12粛軍クーデターはこの暗殺事件が伏線となり、「南山~」には後半で意味深な行動をするチョン・ドファンと見られる将軍(国軍保安司令官)が出てきて、納得!でした。 ソウルの春を見ていなくても、純粋にサスペンス映画として面白く、イ・ビョンホンやイ・ソンミンの演技が素晴らしかったです。 個人的には、クァク・ドウォン扮するパク元KCIA部長もよかったです。亡命者の悲哀と精一杯の強がり、自分がやってきた非道な拷問や暗殺を知っているだけに同類の影に怯える恐怖感覚など、真実味が半端ではないです。これは、民主化を勝ち取った今の韓国映画にしか出せないリアリティです(当時ではとても描けなかったが、今は史実をもとにフィクションとしてふくらませることができる)。 ところで、暗殺場所ともなる宮井洞(クンジョンドン)の接待所=安家=は、なぜか日本風の座敷です。床は畳だし障子も日本的。旧日本軍の施設と関係があるのでしょうか? 暗殺より少し前の宴席で、日本陸軍出身のパク大統領とキムKCIA部長が、「あの頃はヨカッタ」と日本語で語り合うシーンがあります。良くも悪くも日本軍時代に共有した原体験と自意識が、韓国の軍事政権の中に色濃く残っていたのだと感じられました。 「ソウルの春」でも感じましたが、韓国軍事政権の中に脈々と流れている戦前の日本帝国陸軍の亡霊を見た思いです。「維新体制」という言葉は、まさに「昭和維新」を意識したものだったのでしょう。 パク閣下の御前密室会議で、釜山や馬山の民衆デモに空挺部隊を派遣して鎮圧するという話が出て、キム部長は動揺します。KCIA部長として米国と交渉し、5.16革命から18年を経て、もう野蛮な虐殺で鎮圧する時代ではないことが、現実感覚としてわかっています。それを防ぐ理由もあって彼が暗殺を決心したというのは、本当かも知れません。 しかし結局、やがて別の形で空挺部隊が市民を虐殺します。光州に飛び火した民主化運動は全斗煥らによって弾圧され、193人(諸説あり、行方不明等で2千人を超えるとも言われる)市民が軍に殺されることになります。 日本ではすでに、45年前の歴史の一コマとなってしまった感がある事件ですが、韓国の人々には決して忘れることができない事実だから、こんなリアリティのある映画ができるのでしょう。 20世紀を通じて日本と韓国で繋っている東アジアの「鬼子=軍事独裁」の恐怖です。
このタイトルで観る気起きないよ。
お隣の国の政治ものは、マジでヤバい。何度クーデター起こせば気が済むのか。そもそも軍部のクーデターで民主主義なんて無理よ。汚職、腐敗が蔓延るに決まってる。そして、これに懲りず二匹目のドジョウが現れるのも世の常。こうして負のループが始まる。
暗殺を正当化する様な映画は本来良くないと思うのだが、こんな映画よく作れたなと、興味深々で見てしまう自分がいる
ウ・ミンホ 監督による2019年製作(114分/PG12)韓国映画。
原題:The Man Standing Next、配給:クロックワークス。
朴正煕大統領が暗殺された事件自体はぼんやりと記憶にあるのだが、KCIAトップが実行犯人であったとの認識は無く、この驚くべき本事件の背景を描いた本映画を、大いなる興味を持ちながら視聴できた。
事件は1979年10月26日。射殺の実行犯人で死刑となるKCIA部長キム・ギュピョンを韓国トップスターイ・ビョンホンが演じていることに、まず驚かされる。
朴大統領の独裁者としての圧政は有名であるが、この映画でも自分に逆らう民衆は殺しても良いと言った大統領のセリフが頻発し、KCIA部長の行いに同情出来る描かれ方となっていた。「いつでも君の側にいる。君の好きな様にして良い」という大統領の部下への狡い言葉も、凄く印象的。
娘の朴槿恵大統領が罷免(2017)された後に作られた映画とは言え、経済発展させたと評価する人間もいる大統領の言行をここまで辛辣に踏み込んだ描写にも、日本映画との比較でかなり驚かされた。
まあ理性的には、テロで大統領を殺害した犯人の行為を正当化する様な映画は民主主義を信奉する立場からは強く否定すべきとは考えるが、ただ何故殺したのかはとても知りたいところで、それに応えたものではあった。単純な正義心からだけでは無く、ライバルへの嫌悪感や自己排除への恐怖、そして憎しみも感じさせられた点では、多少の客観性は感じられた。
監督ウ・ミンホ、原作キム・チュンシク、脚本ウ・ミンホ イ・ジミン、
撮影コ・ラクソン、美術チョ・ファソン、音楽チョ・ヨンウク。
出演
キム・ギュピョンイ・ビョンホン、大統領イ・ソンミン、パク・ヨンガククァク・ドウォン、イ・ヒジュン、キム・ソジン。
劇場公開日:2021年1月22日
『アノコロハヨカッタ』人間と言うモノの憐れを謳った物語。
内容は、1979/10/26に起きた韓国大統領パク・チョンヒ(61)が側近のKCIA(韓国中央情報部)部長キム・ジェンギュ(54)に殺害される事件が起きるまでの40日間を描いた物語。韓国大統領は、何故殺されたのか?一体その時韓国では何が起こっていたのか?本編では当時韓国の軍事独裁政権の首領パク・チョンヒの圧政に義憤を募らせた事を動機としているが真相は未だに解明されていない。一体何があったのか?韓国にまつわる歴史が今幕を開ける。。。 印象的台詞は『アノコロハヨカッタ…×2』と大統領(閣下カッカ)とKCIAキム部長の二人きりで胸襟を打ち明け酒を酌み交わす場面の台詞。その昔、元戦友でありチング(親友)だった袂をわかった人々への思いを込めた日本語が切なかった。彼等の青春時代は1945/8/15迄の戦中で、その後劇的な変化の渦に飲み込まれる。戦時中に教えられた言葉が彼等のアイデンティティの発露でもあり本音を語り合う時には日本語がでてしまう。同じ時代を生きたい同志として変わり果ててしまった現在を儚んでる様に感じられ胸に迫る。 印象的な場面は『君の側には私が居る君の好きな様にすればいい』無気力に話す大統領の魂の抜けた言葉を話す場面。その2年前1974/8/15光復節(日本からの独立記念日)に起こった大統領暗殺事件『ムン・セグアン事件』で、側にいた妻が流れ弾に当たり殺される。自分を狙った銃弾で殺された妻を横目で見てからは、人が変わった様に暗殺を恐れる様になり、理髪師は特別な人だけにし、枕元に拳銃を忍ばせていたと言う程の怖がりぶり。当然政治には無関心になり上記の言葉を口癖の様にしていたと言う。そんな背景がサラッと演技で説明されていた所が印象的な場面です。なので今でも韓国の料理店では、オマカセや好きな様に等のメニューがあるそうです。 印象的な演出は、戦車(M48砲塔が椀型で丸く可愛い)を実際に道路に持ち出した演出です。国が支援してないと出来ない演出には驚きました。アメリカ🇺🇸やフランス🇫🇷の撮影も現地で行っており凄いお金のかけ様に映画に対する意気込みが、正比例する様に伝わってきました。 コリアゲート事件から始まる今回の物語り複雑怪奇な話ばかりで調べれば調べるほど理解不可能になる問題でした。『権力の堕落』キプニスが述べた様に強大な権力は自分の首を絞めてしまうのかもしれません。その昔、ギリシャ🇬🇷ではシーザーに対してブルータスが、日本🇯🇵では織田信長に対して明智光秀が、アメリカ🇺🇸では全米トラック協会事件・映画『アイリッシュマン』M・スコセッシ監督がある様に同じ構造の飽きない繰り返しで、劇中でもシェイクスピアを引用される様に其れでも憑かれた様に振る舞う人間の性を複雑に表した面白い作品です。 いかんせん、編集が矢継ぎ早でテンポが異常な程早いので脳みその処理が追いつきません。取り残される可能性が大の作品は、観ている人を信じ切っている様に感じました。 レビュータイトルの謳について書いて終わりにしようと思います。 大統領が歌っていた歌『荒城の跡』1922李エリス歌手(99)最近まで存命であられた事。この事件の後に流行した歌『忘れられた季節』1982イヨン歌手は現代の荒城の跡とも呼ばれる作品です。色濃く残った事件は歌い継がれ、やがて忘れ去られ、又同じ様な事件が繰り返される。そんな歳月の無情さ寂しさ亡国の懐かしさを人は繰り返しを謳ってるように感じます。 長々とレビューを書いてしまいました。もしここまで読んで頂けたならご苦労様です。ありがとうございました。あなたの時間を少しでも拝借した事に申し訳なくも感謝しかありません。
❇️スッテンコロリンシーンがすごく好き!
KCIA 南山の部長たち 🇰🇷韓国 🔷過去の全体の流れ 1961年軍部がクーデターを起こし、新たな政権中央情報部を設立し力をつけ朴正煕の長期政権を支えた。 🔶あらすじ 韓国大統領の次に権力のある中央情報部を批判するアメリカに賄賂を配り問題に挙げられていた!その主犯は朴正煕だと元幹部のパク暴露しマスコミを味方にしていた。 この騒ぎをを終わらせる為、韓国情報室長のキムが聞き込みや元幹部から情報を集めていくと、大統領閣下の裏工作が明るみになっていく。 大統領閣下とともに革命を起こしている来たキキムジェギュの失意や閣下との溝が大きくなっていく暗殺実話ストーリー! ◉80C点。 ❇️スッテンコロリンシーンがすごく好き! ★彡きっと現場検証て滑った後があったんだろうと思わせる名シーンでした。 ★彡やりたい放題になっていく大統領。 影響がうまい側近の格上げ。 徐々に差が開くキムさん。 なんか切なくて良かった。 1️⃣1979年の朴正煕暗殺事件を基にしている。 2️⃣『君のそばには私がいる!好きな様にしろ!』★彡中々のキーワード 3️⃣実話とはいえよく映画にできたなぁ? ★彡悪態ぶりの大統領がエグい! 4️⃣転ぶシーンは必見かと思う。 ★彡きっと実際に転んだと思われるシーンが妙にリアリティを感じさせました。 5️⃣ラストのエンドロール前の解説もわかりやすかった。
朴槿恵の父親
実話が元だそうだけど、すごくリアルだった。歴史が詳しくないから知らなかったけど、韓国にこんな時代があったんだと知った。 もちろん演出はあるんだろうけど、大統領は本当にクソやろーだった。自国の汚点とも言えそうな部分を、よく映画化したと思う。最終陳述を見ると、ノンフィクションに近いのではないかと思えた。 朴槿恵が逮捕されてなかったら、なかったのかな。今となってはだけど、娘はよく大統領になれたものだ。 評価:3.6
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