「手探りしながら進むんだ。 みんないろんなことを抱えながら。」川っぺりムコリッタ humさんの映画レビュー(感想・評価)
手探りしながら進むんだ。 みんないろんなことを抱えながら。
ちょっとぶっきらぼうだけどさっぱりして快活な南。
てきぱきと大家をこなし、娘を明るく育てる気丈さの裏に、ひとりになれば亡き夫の遺骨を骨壷から取り出し記憶のなかの温もりに抱かれる。切なさをエネルギーにかえているしなやかに逞しいひと。
飄々と他人の領域に来て無類の人懐こさを醸し出す島田。どうやら辛い過去をもち酒に酔っては泣きだし、ふと言いかけてためらう。ああみえて自分のこととなると密かに抱え込むナイーブな部分もある。
子連れで墓石の営業をする礼儀正しく真面目そうな溝口。普段のつつましい暮らしぶりがうかがえる特別な日のすき焼きのシーンには他人への優しさも表れている。どんなときも淡々とした口調は、彼が彼らしくいるために必要で、父子で生きていく上でだいじな拘りのようだ。
マイペースで動じず淡々としている島田の幼ななじみの住職。無表情で人相は悪いが他に媚びたり立場を利用することもない。裏表なしの性格は時に敵をつくり生きにくい時間も重ねてきただろう。
寺に島田が山田を連れて立ち寄ったとき、山田が父の遺骨を捨てようとしたのを見かけたとき、弔いのときなどのシーンで、口数も少なくアピールこそしないのだが本質への直感力の鋭さがあるように思える。
社長。はっきりしてて、多少空気を読まずに前のめりな印象が暑苦しくもある。しかし、あれこれと山田に配慮する姿は情に厚く、他人を見捨てない優しさが溢れている。今となっては珍しいが、昔そこら辺でたくさんあった、親戚でもないのに「親戚以上やや兄弟未満」のつきあい方を地でいく姿は、山田をなんとか励まし軌道にのせてやりたい責任感あふれる叔父のようだ。
職場の先輩、中島。
新入りがきてもあまり笑顔もみせず他人にも自分にも厳しそうな雰囲気。不必要な語りもサービス精神もみせないが、肝心なところだけは押さえて見逃さずさらりと伝えてくれるような姉御肌のようだ。山田のように度々気に迷いがある場合、その塩加減だったり、茹で加減だったり、しめ加減で、タイミングよくサポートしてくれる存在は結果的に背中を押してくれるとおもう。それを単刀直入に、しかも後腐れなくできるひと。相当な芯がある彼女のいままでの道のりを匂わせる。
そんなみんなにいつのまにか寄り添われることになる主人公・山田。
親との絆が薄い生い立ちに翻弄された少年時代。挙げ句の果てに詐欺に加担した前科者という烙印は深い負い目となる。自分でつくった暗い影の範囲にひっそりと収まる暮らしをしようと選んだ新天地が「ハイツ ムコリッタ」だった。
そう、ひっそりと…を望んでいたが
ひっそりとはいかなかった〜!
川っぺり界隈には濃ゆい出会いが待っていたのだ。
山田がそこに住み始めて間もなく、
役所から実父の死の連絡を受けるが長年かかわりがない為、ピンと来ない。遺骨引き取りにも全く義務的で100歩譲って消極的。骨まで愛おしむ南さんとは180度の差で夜な夜な光ってみえる壷に慄いて捨て去ろうとするくらいだ。
それを住職に見つかりとがめられ、改めて散骨しながらみんなで賑やかに弔うことになるのだ。また、図々しく風呂に入りにくる島田のおかげ?で、牛乳を飲む時の父を思い出し親子のつながりを感じたり、誰かと食べるご飯の美味さ、畑仕事で自然の恵にあやかる喜び、河原のホームレスの人々のきままさを選んだ暮らしや南親子と溝口親子の自分にはなかった関係性など、毎日、目から鱗のことばかり。天涯孤独の諦めモードだった山田だが、彼らに出会い次第に笑顔を増していくのだった。
みんな違う
生まれてきた場所、
生きてきた場所、
生きる場所。
そこで
他を受け入れ
自分を弛め
働き、食べ、眠ろう。
いつも
ニュートラルな自分でいれるように。
手探りしながら進むんだ。
みんないろんなことを抱えながら。
…作者はこんな時代だからこそ
伝えたかったのかなと思う。
川っぺりムコリッタ
そこにあるのは
まるで
誰かと誰かがつながる
原点回帰の応援歌だ。
あたたかくじんわり
心地よくくせになるものが
溝口さんのむすこの弾くやさしいピアニカの音色とともに胸のなかに残った。
コメントを有り難うございます。そんな言葉を頂くと恐縮で、カチコチに固まります 笑笑
こちらこそいつも、humさんの、深い深い所から発せられる言葉に感服しております。今後ともよろしくお願いいたします。
満塁本塁打さん
そうですね〜クーラーはやっぱり欲しいですね^^;
そして、
ぽつんと小さい机の上に
炊き立てごはんと塩辛。
手をあわせて心をこめて
いただきますのあの顔。
しあわせがみえましたよね…。
イイねありがとうございました😊。おっしゃるとおり「実際にはあり得ない理想郷」で良かったですね。ただ現実には難しい距離感ですが・・緒方直人の社長の「まさに叔父さん」実際の同じ屋根の下に住む「父親」では無いので・・かなり鬱陶しいおせっかいな部分もあるのですが。グイグイ善意を押しつけて・・まさに「叔父さん」でした。😊💻パソコンも、スマホも📱、ゲーム🎮も本📚や雑誌【📺テレビもでしたっけ❓】何にも無い生活、帰ってそのシンプルさが清々しくて、羨ましかったです。ただ、クーラー空調だけは欲しいですね。長文すみません。失礼します。🙇♂️