スウィート・シングのレビュー・感想・評価
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監督の実子である姉弟の存在感に目を奪われる。
アレクサンダー・ロックウェルが、映画学校の教え子たちをスタッフに、実子のラナ・ロックウェルとニコ・ロックウェルを主演に描いた完全インディーズのロードムービーだ。いや、ロードムービーパートは後半であり、劣悪な環境で生きる子供たちのピュアネスを描いたファンタジーとも言える。
とにかくこの映画は、ラナとニコに惹き込まれずにいられない。よくもまあ実の子供をここまで役者として輝かせられるものかと感心するばかりだが、とりわけ演技だけでなく歌も披露して作品の世界観を体現するラナには映画を支える覚悟があったように感じられる。
モノクロのざらついた画面に時折カラー映像が挿入されるのだが、その変化に特に脈絡が感じられるのも、なんだかプラスに作用している。理屈だけでは作れない創作のひとつの形なのだと思う。あとこの映画だけでなく『ミナリ』やケリー・ライカートの諸作に出まくっているウィル・パットンは、ある意味でインディーズ映画の天使な気がしてくる。
この映画での酒に溺れるどうしようもない好人物というキャラクターは、ウィル・パットンのキャリアでも最高の役柄だと思うので、数少ないパットンファンは必見だと思いますよ。
☆☆☆★★ 画面から宝石が輝いている…かのような映像の数々。 嵌る...
☆☆☆★★
画面から宝石が輝いている…かのような映像の数々。
嵌る人にはめっちゃ嵌る作品かも知れない。
それを認めつつ、個人的には今ひとつピンと来ない作品でした。
若い頃にシネアストを気取ってイキっていた自分だったならばどうだったのか?って気はしますが💦
ところで、ラストシーンに登場したある女性。
「あれ?誰だっけこの人」…って思ったのですが。
エンドクレジットにはプロデューサーとしてある女優さんの名前が。
それがあの〝 ジェニファー《フラッシュダンス》ビールス 〟
ひょっとして彼女だったのかなあ〜?
クレジットの役名には名前は無かったんだけども…
観終わって直ぐにWikipediaを確認。
本当にアレは彼女だったのか?の情報は得られず。
でもこの監督さんと過去に結婚していたのですね。
何故彼女の名前が?って謎は一応解けました。
あの最後に映る女性が彼女だったのか?の真贋は不明ですけども。
2021年12月5日 キネマ旬報シアター/スクリーン1
いい雰囲気しかしない
冒頭のショッピングモールのシーンでもうこれ絶対いい映画だと確信。というか絶対好きなタイプ。貧しいながら必死に生きる人たちの描写を見ると涙出そうになっちゃうのよね。ニコがほしがってたオモチャのマシンガンをちゃんとクリスマスプレゼントにあげるのとか、それをアルミホイルで包むのとか何故かうるうるしちゃう。お父さんが無理やりビリーの髪切るのも酷いけど乱暴とか虐待の感じはしなくて直前に行きずりの不良たちに髪がステキだって声かけられたのがフリになってて描写が丁寧!エンドロールで二人の名前がロックウェル、プロデューサーにサム・ロックウェルの名前があったから彼の子供か!と興奮したけど監督の方のロックウェルの子どもたちでしたね。二人ともとても良い雰囲気。パパとママ、ママとその彼氏、トレーラーの夫婦みんな黒人女性と白人男性のカップルなのは監督自身を投影してるのかしら。でもあんな酷かったママがしれっと戻ってくるのはちょっと解せないですけどね。
スウィートシング=愛する人
キネマ旬報推奨だったこともあって、観に行きました。
スウィートシング=愛する人なのだけれども、恋愛映画って訳じゃない。家族愛、友情。そういうもの。
素敵なのは、愛を伝えるべき両親から子供への溢れんばかりの愛、ではなくて、子供からの「ダメな両親であっても、親。会いたいな」という気持ちが、うっすらと、しかししっかりと流れている映画だってこと。
ラナ・ロックウェルの魅力
マサチューセッツ州で暮らす15歳の少女ビリーと11歳の弟ニコは、父と一緒に暮らしていたが、普段は優しいが酒を飲むと問題の父親が強制入院させられることになった。身寄りのない姉弟は、家出した母イヴを訪ね、着いたらDVの彼氏がいた。彼氏のボーから暴力を振るわれ性的虐待を受け、母からも邪魔者扱いされたので、そこから逃げ出し、そこで出会ったマリクを含めた3人で 再び父の元へ旅する話。
クソ両親と母親のクソ彼氏、なんとかならんのかいな、って観てた。
この作品はビリー役のラナ・ロックウェルの魅力に尽きる。弟役のニコとマリクもまぁ良かったが、やっぱりビリーだ。
ボーやイプに殴られた時の表情が良かったし、歌も良かったし、川で泳ぐ姿も良かった。
監督の実子らしいが、また観たいと思った。
ジミ・ヘンドリックス
今、アメリカではコロナが感染爆発している。
しかし、報道などでは、日本ほど問題視していないように思われる。
アメリカでは、それ以前に子どもの虐待、アルコール・ドラッグなどなど、もっと深刻な問題が山積みだったのだ。
白黒の中に入るカラー映像はコダックフィルムのようで、非常にきれい。A24のようだった。
頭にバンダナを巻いたマリクはジミ・ヘンへのオマージュなんだろうか。
そしてビリーは大阪なおみさんに見えた。
美しく残酷な
なんとも美しく残酷な、現在のリアルな「Stand by Me」。
それにしても恐ろしいほどの貧しさだし、救いがあるのか、救いだと考えて良いのかもよく分からない…
監督の実子だという姉弟が美しく、父親役のウィル・パットンがまたしても素晴らしい…
【”哀しみの中の、微かな光に誘われて”不器用で、愚かしき両親を持った姉弟の一夏の冒険を描く。姉ビリーが美しい声で歌うビリーホリデイの歌や、ヴァン・モリソンの”スイート・シング”が余韻を与えています。】
ー ビリーとニコの父親アダムは、普段は優しいが酒に呑まれる毎日。典型的なアルコール依存症である。酒に呑まれた時には、ビリーの髪を無理やりカットしたりする。
一方、母親イヴはそんな夫を見限って、愛人ボーと暮らす。
アダムは、アルコール依存治療のため、一夏を病院で過ごすことになり、ビリーとニコは母親の恋人の家で一夏を暮らすことになるが、ボーも相当に愚かしき男で、ビリーとニコ、そして知り合った少年マリクと3人でマリクの父が居るという南部を目指す旅に出るが・・。-
◆感想<Caution !内容に触れています>
・今作は15歳のビリーの視点で描かれる。殆ど、美しいモノクロームで物語は映し出されるが、夢のあるシーンでは鮮やかなカラーに変わる。印象的な技法である。
そして、それは同時にビリーとニコが直面する厳しい現実を観る側に訴えかけるのだ。
・場面切り替えの手法も懐かしき方法が取られている。
・愚かしき両親を持つビリーとニコだが、彼らはめげる事は無い。学校にも殆ど行けないが缶拾いなどで、お金を稼ぐ日々。逞しいのだ。
・ビリーとニコは母親の恋人ボーの家で一夏を暮らすことになるが、この男も相当に愚かしく、弾みで仲良くなっていた少年マリクはボーを刺してしまう。
・母親に虐待を受け、施設に10年入っていた少年マリクも合流し、3人は、愚かしき大人たちから逃避するように、一夏の冒険の旅に出るのである。
・キャンピングカーで暮らす年配の夫婦にキャセロールの夕食に誘われるも、警察のパトロールが来て、逃げ出すマリク。響く銃声・・。
■ラスト、アダムは病院から退院し、イヴも漸く”目が覚める”。
再び、4人が家族として、一つ屋根の下で暮らして欲しいなあ、と思った希望あるラストがとても良い。
<厳しい現実を、常に前向きに受け入れるビリー、ニコ、マリクの姿が印象的な作品。
ビリーが美しい声で歌うビリーホリデイの歌やヴァン・モリソンの”スイート・シング”が作品に余韻を与えています。>
<2021年12月25日 刈谷日劇にて鑑賞>
やっぱり間違いなし!ビリー・ホリデイのソックリさん以外は。
16mmの粒子の粗い画像が妙にリアルで今日的なイメージを放っていた。
場面転換のアイリス・アウトもレトロ感ではなく新鮮さを感じた。
とにかくカメラワークがいい。
子供たちの目線で撮るよう心掛けたようだが、60代の監督の作品とは思えなかった秘訣は、そのへんにあったようだ。
それにストーリーがラナとの共作らしいから、そのへんもユースな視点のベースになったのだろう。
それにしても、ラナとニコはいい。
二人とも演技が素晴らしいのは勿論なのだが、それ以前にフィルムに映っているだけで素晴らしく絵になっていた。
特にラナの魅力的な瞳、あのウェイヴィなヘアは、ずっと目に焼き付いている。
前作で、やはり二人を起用した似たようなストーリーの日本未公開の作品があるようだが、是非そちらも観てみたい。
そして出来れば、また二人を起用して、もう一作つくってほしい。
そして、音楽の選曲も全部よかった(特にBrian Eno!)のだが、しかし…
あまりにも似てないビリー・ホリデイのソックリさん、アレはチョットなんともなんとかしてほしかった。
監督メッセージ付き
まず、子役が監督の子供(素人)だということに驚かされた。歌も上手いし、演技もむしろ上手い部類の子達だったと思う。
一部カラーにした映像については、監督が言うようにどのシーンも絵画のように美しく、見惚れてしまうようなものばかり。
美しく優しい映画、大好き。
児童の権利に関するジュネーブ宣言について
第一次世界大戦で多くの子どもが命を失ったことの反省として、子どもの適切な保護を謳う「児童の権利に関するジュネーブ宣言」が国際連盟で採択されたのは1924年のことで、以下はその全文。
1 児童は、身体的ならびに精神的の両面における正常な発達に必要な諸手段を与えられなければならない。
2 飢えた児童は食物を与えられなければならない。病気の児童は看病されなければならない。
3 発達の遅れている児童は援助されなければならない。
非行を犯した児童は更生させられなければならない。孤児および浮浪児は住居を与えられ、かつ、援助されなければならない。
4 児童は、危難の際には、最初に救済を受ける者でなければならない。
5 児童は、生計を立て得る地位におかれ、かつ、あらゆる形態の搾取から保護されなければならない。
児童は、その才能が人類同胞への奉仕のために捧げられるべきである、という自覚のもとで育成されなければならない。
1989年には、国際連合で『児童の権利に関する条約』が採択され、日本も1994年に批准している。
私が読んだ解説本には『これにより「保護される存在としての児童」から「固有の人格や権利の主体としての児童」という児童観への転換を示すことになった』との記載があるのですが、今思うとそう書いた人は楽観的過ぎたようです。現実的には、〝保護される存在〟としてもまったく不十分です。
アメリカの場合、経済格差に加え、差別や酒やドラッグの問題も複層的に絡んでくるので絶望的にすら見えてしまいます。ただ、親の更生施設に関しては、財源的にも備えがあるのですね。
被虐待児童の数的な比較で日本とどちらがましなのか、私には分かりませんが、親や家族が立ち直るチャンスを行政が用意していることで、それなりに具体的な救いや希望が見えることもあるように思えます。
その歌を聴かせて
問題を抱える大人達に振り回され、行き場を無くした姉弟とひとりの少年とが織り成す旅路の物語。
序盤は、普段は優しいが酒が入るとどうしようもなくなる父親との描写。
髪を我慢するビリーに心が痛む。そして姉を守ろうとするニコ。ただ悪者にするのではなく、父さんは悲しいんだ・・・って、11歳でそれがわかるなんて、泣かせるじゃないか。
父親が強制入院させられてからは、感じ悪い愛人(?)に影響されまくってる母親との描写。
ボーは純粋悪として、母親も併せてダメになっているのが哀しい・・・。
さもなくば暴力も厭わない暴漢の為に良い顔しろとか、あんた仮にも親でしょ・・・。
親子の形は十人十色でしょうが、ここは味方になって欲しいですよね。
ボー&ママは論外として、また父親と暮らしても、酒で地獄をみるだろうしなぁ。。
行くも帰るも修羅ですね。。
それでも、お互いを支え会うビリーとニコの姿は美しい。2人を助けてくれたマリクもまた、彼の物語があったようで・・・。
母親は最後ムシが良すぎると思ったけど、子どもでも、大切なものを守るために生きるたくましさと、哀しくも美しいモノクロの風景に心を打たれた作品だった。
色付くのは心が安らいでいるとき??
んで、最後になんか音がしませんでした?
何か意味があるのかな?
シンプルなのに個性的
音楽と演出と、16ミリフィルムで撮影したという画質の処理が、とてもカッコ良く
非常に好みの作品でした。
こちらの監督の作品は初めてでしたが、他のも観たくなりました。
決して、良い環境とは言えない子どもたちですが、
その中でも、自分にとっての“スウィートシング”を見つけ大切にし、拠り所として強く未来に踏み出していく。
観終わった後、少し前向きな温かい気分。
家内制手工業的なところが、余計に温かさを倍増させているのかな…
とても、シンプルなのに、個性的で佳き作品にでした。
ビリーの眼差しと歌声
殆どの人間は状況に弱いから、自らを痛め、さらに弱いものを痛める。
そんな世の中で三人の兄弟は自分で生きていこうとする。
悲しみと希望を持った、ビリーの眼差しと歌声が映像に溶け込んでいる。
【無題】
ロックウェル監督のインタビュー・Q&A映像付きの上映だった。
きっと、こうした親子の光景は世界中のあちこちに沢山あるんだろうなと思ってしまう。
この作品には説明はあまり要らないような気がする。
親のアルコール中毒や、DVには苦しくなるが、こんなことじゃなくても、誰でも、自分の親に、嫌なところの一つや二つあるだろう。
逃げ出したくなることだってある。
やられたらやり返したくなるのも当たり前だ。
でも、この姉弟の逃亡冒険譚には陰鬱さはない。
そして、やっぱり親子は親子なのだ。
終盤の悲劇は切ない。アメリカ社会の歪(ひずみ)を示しているような場面のようにも思える。
でも、人々は家族を中心に寄り添って生きているのだ。決して陰鬱ではなく、可能な限り明るくやり過ごそうとしているのだ。
また良い日が来るさ。
Q&Aで、監督は、これからもインディーズ作品を作り続けていきたいとする一方、日本やジム・ジャームッシュ、欧州の国が資金を提供していた時代と違って、今は、どうしてもハリウッドのお金が必要な状況になりつつあると言っていた。それでも、低予算だけれど、インディーズ作品にこだわりたいと。今作の、子供二人は監督の実の娘と息子で、髪を切る場面は、自分自身でも切なくなったと言っていた。
そんな監督ならではの、良い作品だと思う。
1週間限定で、「In the soup」の上映もありましたが、出来たら併せて。でも、もう少し延長して、皆に観せたらどうかと思う。
良い映画
Filmarksの「2021年10月第5週公開映画の初日満足度ランキング」で1位となっていたので、ちょっと気になって観てきました…レイトショーで21時半上映開始は少し遅いけど、次の日休みだしね。ミニシアター系の作品は早めに観ておかないと、知らない間に昼間の上映時間に変わっていたり、最悪終わってたりするし…。
で…。
正直、良い作品だとは思ったけど、今の僕にはあまりハマらなかった。
何か既視感のあるストーリーや設定だったし、虐待される子どもがちょっと可哀想で、観ていて辛かった。
それでも、
映像は綺麗だし、なんと言っても劇中で何度かかかるヴァン・モリソンの"Sweet Thing"は最高に良かった(Karen Darltonも良かった笑)。
気になる方は、どうぞ!笑
66歳には、きつい映画だ。
どこかの映画評に高評価が出ていたので、観てみた。結果はこのとおり。高齢な私には既に感受性が錆びついて共感する事ができなかった。作り込んだ脚本や画面構成及び音楽が好きな私には、即効、感覚的映像をとらえるこの監督とは相性が悪い。
観終わって、置いてきぼりをくらったような気がする。
ビリーの眼と髪と歌声
問題山積の大人たちー父親、母親、母親の愛人ーから逃げる旅。嫌な思いをいっぱいしてるのに、なんだか明るくて元気で楽しんでたまに悪さをしてお互いを大事にしてたまに水の中に入ったりもして。
懐かしい感じと新しい感じがしてかっこいい映画だった。音楽もカメラのシャッターが閉じて次の場面に進むのも素敵だった。
ビリーの眼は美しく優しい。それが恐れや悲しみの眼差しになると自分も辛くなった。豊かな髪の艶はモノクロでも充分に伝わる、美声と歌詞の気持ちと一緒に。ニコ、かわいかった。お姉ちゃん思いのニコ、弟思いで学校でのニコを見て安心して微笑むビリー。
最近見てないタイプの映画で良かった、少し眠かった所もあったけど。パーソナルだけどユニバーサルって感じがした。
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