「【”哀しみの中の、微かな光に誘われて”不器用で、愚かしき両親を持った姉弟の一夏の冒険を描く。姉ビリーが美しい声で歌うビリーホリデイの歌や、ヴァン・モリソンの”スイート・シング”が余韻を与えています。】」スウィート・シング NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”哀しみの中の、微かな光に誘われて”不器用で、愚かしき両親を持った姉弟の一夏の冒険を描く。姉ビリーが美しい声で歌うビリーホリデイの歌や、ヴァン・モリソンの”スイート・シング”が余韻を与えています。】
ー ビリーとニコの父親アダムは、普段は優しいが酒に呑まれる毎日。典型的なアルコール依存症である。酒に呑まれた時には、ビリーの髪を無理やりカットしたりする。
一方、母親イヴはそんな夫を見限って、愛人ボーと暮らす。
アダムは、アルコール依存治療のため、一夏を病院で過ごすことになり、ビリーとニコは母親の恋人の家で一夏を暮らすことになるが、ボーも相当に愚かしき男で、ビリーとニコ、そして知り合った少年マリクと3人でマリクの父が居るという南部を目指す旅に出るが・・。-
◆感想<Caution !内容に触れています>
・今作は15歳のビリーの視点で描かれる。殆ど、美しいモノクロームで物語は映し出されるが、夢のあるシーンでは鮮やかなカラーに変わる。印象的な技法である。
そして、それは同時にビリーとニコが直面する厳しい現実を観る側に訴えかけるのだ。
・場面切り替えの手法も懐かしき方法が取られている。
・愚かしき両親を持つビリーとニコだが、彼らはめげる事は無い。学校にも殆ど行けないが缶拾いなどで、お金を稼ぐ日々。逞しいのだ。
・ビリーとニコは母親の恋人ボーの家で一夏を暮らすことになるが、この男も相当に愚かしく、弾みで仲良くなっていた少年マリクはボーを刺してしまう。
・母親に虐待を受け、施設に10年入っていた少年マリクも合流し、3人は、愚かしき大人たちから逃避するように、一夏の冒険の旅に出るのである。
・キャンピングカーで暮らす年配の夫婦にキャセロールの夕食に誘われるも、警察のパトロールが来て、逃げ出すマリク。響く銃声・・。
■ラスト、アダムは病院から退院し、イヴも漸く”目が覚める”。
再び、4人が家族として、一つ屋根の下で暮らして欲しいなあ、と思った希望あるラストがとても良い。
<厳しい現実を、常に前向きに受け入れるビリー、ニコ、マリクの姿が印象的な作品。
ビリーが美しい声で歌うビリーホリデイの歌やヴァン・モリソンの”スイート・シング”が作品に余韻を与えています。>
<2021年12月25日 刈谷日劇にて鑑賞>