ポゼッサーのレビュー・感想・評価
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あの仕事、なんなん?
意欲的珍作
肉体を乗っ取る殺し屋のアイデアは凄い斬新って訳でもないけど、ジャンル映画として志せば絶対面白いだろうなと思い鑑賞。
対象の肉体からの脱出方法は自らを殺すことらしい。一回目の乗っ取りから仕事人なのに脱出を躊躇して、メインストーリーの二回目でも躊躇する。仕事人として、ダメじゃないかと説教したくなるけれど、それぐらいを負担の掛かる仕事なのですかね。だったら、周りのケアが不十分としか言えない。物語として、起伏やトラブルを作るのは分かるけれど、オープニングで主人公がどのレベルの仕事人なのかを観客に示してから、メインストーリーのトラブルが面白くなるような。大体のスパイアクションってこのお約束を踏襲するように思うけれど、そこが上手くいっていない。そのため、観客としては「あんなに優秀な主人公が苦しめられているのか!」などと思えない。
一回目乗っ取りのターゲットが140キロぐらいの巨漢男性の為、出血量が凄い。実際の医療としてもおそらく、出血量は体重に比例するはず。
元夫と何があったんですかね。そこは具体的には描かれない。二回目の男の時にチラチラ見えた鏡合わせはなんだったんでしょう。私もネットニュースで不適切な画像などのアラートの判断は人力の肉眼によるものと聞いたことがあるので、その影響なんですかね。はっきりした因果などは描かないのは、トムヒの「ハイ・ライズ」を思い出したりもした。
主人公の凶暴化を描くけれど、暴力や残虐さが増長していくのは、自身の身体を誇るためのように現実を観ていると思うが、この監督はそう考えていないようだ。むしろ、他人の肉体に乗り移った不安感が凶暴にさせていると考えているようだ。ヤクザやチンピラの残虐さは自らの冷酷さを身内に知らしめる効果込みであると思うけれど、この作品の残虐さとプロ根性の食い合わせの悪さが気になる。
気色の悪さは否めない…
趣旨を理解して見に行く限り、そこまで低評価にはならないかな
今年66本目(合計339本目/今月(2022年3月度)8本目)。
大阪市では1週間遅れのこの作品。R18扱い(残酷な表現6割、大人の営み4割くらい?ただ、大人の営みのシーン「だけ」ならR15程度でしかかない)ので注意です。そこそこグロい表現も出ます。
内容的に本格的なホラー映画に仕上げてきたなと思う一方、他の方も書かれている通り、「体の乗っ取り」ということを扱う映画で、さらに脳科学やITの話も出てくるので(ホラー映画といっても、これらが核を占めるので、無視はできない)、どちらかというと理系ネタに分類できるのかな…と思います。
また、メタファー的表現やオマージュ的表現も多いです。1度で全てを理解するのはなかなか難しいとは思う一方、2回3回見るか…となると、そもそも論でやっている映画館が少ないのでそこは考え方次第かなと思います。
「(ごまかしのない本格ホラー映画+理系ネタ映画)÷2」というようなタイプで、まぁ今は3月ですが、怖いもの見たい方にはお勧めです。といっても、やはりR18なので、今は飲食物など基本的にフリーな映画館も多いですが、食べるものには注意したほうが良いかもしれません。
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(減点0.3) この映画、そうはいっても、やはりメタファー的な表現もそこそこあります。物語中盤、モノクロテレビで闘牛か何かを見ているシーンも何らかの意味はあると思うのですが、字幕だけ出て日本語の訳がなかったりします(英検2級程度あればOKです)。
趣旨的にも1分あるかないかのところで、そこの翻訳がないのはちょっと惜しい(かつ、メタファー的な要素も結構あるので、この闘牛のシーンの趣旨も理解するのも難しい)というところです(一般的には「翻訳抜け」は0.2程度ですが、「趣旨が理解できなくなる」という意味です)。
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テーマは意外に深い
タイトルの通り、肉体の所有者の話である。意識を乗っ取って、宿主の肉体を自由に扱う。依頼された殺人を実行し、そのあとで宿主を殺せば自殺にしか見えない。何の証拠も残さない完全犯罪だ。まずこのアイデアが見事である。よく思いついたものだ。
製作側には心理学や精神分析、または脳科学の知識があると思う。意識を乗っ取るといっても、無意識を含めた脳の働きのすべてを乗っ取れる訳ではない筈だ。乗っ取る事ができるのは意識の一部と関連する無意識の一部だけだという設定だと思う。つまり脳の働きの大部分を占める無意識は、ほとんど手つかずのままだ。そこが本作品のポイントだと思う。
人間は平凡な一日でも、200回ほどは何らかの選択をしている。その殆どは無意識が行なっているらしい。朝起きて最初にトイレに行くのか歯を磨くのか、そういったことは殆どが無意識によって決められている。なんとなくというやつだ。
無意識によるなんとなくの行動がたくさんあるのであれば、無意識も乗っ取らないと、肉体を自由に扱えない場合が生じる。それが本作品である。乗っ取ることができなかった無意識は宿主が所有者である。乗っ取っている意識と、宿主の無意識とが対立してせめぎ合う。ある意味でアイデンティティの戦いと言ってもいい。これは両方にとって苦しい。
殺し屋にとって、殺す対象は仕事を処理するだけだから躊躇なく殺せる。しかし殺しのために利用する人間を殺すのは、少し引っかかる。そこへ宿主の無意識が意識に流れ込んで来たら、パニックだ。
本作品はそのあたりを上手に表現してみせた。SNSの匿名性に個を埋没させる現代人が、特殊な機械と通信技術によって個を乗っ取られようとする危機に対して、どのように対応できるのか。
簡単な構図の作品であるが、テーマは意外に深い。斬新なアイデアとともに、印象に残る作品となった。
バイバイ🙋ドバイ
作品に身を委ねてみる
ビジュアルの奇抜さ
わかりにくいというお話。
意識を乗っ取ったはずの主人公・女性殺し屋のタシャと、乗っ取られたはずの男の意識が混ざって、
「どっちの意識が主なのか」
「殺意の源泉はどちらの意識なのか」
をあえて曖昧に見せる演出なので…
観客を混乱させることと。
精神世界の可視化(ビジュアル化)と。
自我なんて所詮他人の影響から逃れられないので、それが本当に自分の意思なのかわからないのが常じゃないかという問いかけと。
ってあたりが目的なのかなぁとか思いながら鑑賞。
それにしたってビジュアルが常人には思いつかない奇抜さで、かつ物語そのものが異常。
思いついても、普通はやらないよなという視覚効果を狙うあたりに、若さゆえの暴走というか、怖いもの知らずな青臭さも感じたりして。
とりあえず殺害予定ターゲット女性と、中身は女性殺し屋な男性のベッドシーンは倒錯的で、なかなかクルものがあったので、そこは好き。
スランプ?
不愉快+意味不明=後悔
70年代タッチの大人のエログロホラーサスペンス
ブランドン・クローネンバーグ監督のホラーサスペンス映画。
本作は父デビッド・クローネンバーグ初期の作風にかなり寄っており、オマージュや意識した等のご意見も散見するが、自分としては「父親と同じ路線を引き継ぎますよ」といった宣言のように思えた。
何だかよくわからない装置や機械の細かい造形へのこだわりや、精神が不安定で病んでいく様子などを上手に演出しており「戦慄の絆」に近いものを感じた。
主演のアンドレア・ライズボローは神経質で闇が深そうな雰囲気が強烈で、作品の醸し出す異様さと怖さの中核を担ったが、この人体重の増減とメイクで物凄く綺麗な時と怖い時の落差が激しく見える面白い女優さんだと思った。
VFX全盛の時代にあえてCGを使わず、特殊メイクとリアルな映像にこだわり、おそらく狙い通りに70年代風モダンホラーの不気味な雰囲気を上手に出すことに成功し、若干画面が暗く認識しにくい箇所があったものの、映像作品として総じて面白く観させてもらった。
ブランドン・クローネンバーグは次回作を観ようと思える贔屓の監督にリストアップすることにした。
"脱出"
思ったよりは全然面白い。
クローネンバーグの子供ってだけで運が悪いのに態々映像作家になってしかも同じジャンルの映画を撮るなんて変態的なマゾヒストとしか思えない。
内容も表社会の下に蠢く裏の存在とかアイデンティティクライシスとかクローネンバーグ的。肉体の主導権の奪い合いとか『スキャナーズ』のラストを思い出した。
飽きずに観れたし、面白かったと思うし、ストーリーもまぁこんな感じなんやろなと、6〜7割位で理解しておくのが正しい観方だと思う。
ただなんつうか、クローネンバーグという呪縛に自縛している気がしないでもなかった。つくづく不憫である。
ただ、女の趣味は親父さんの方が良いな。
追記:
そうか、ジェニファー・ジェイソン・リーは『イグジステンズ』か。インプラントを使って他人の体(物語)にジャック・インするのが似てるなぁとは思ってたんだよな。
何だかんだ言ってそういう目配せを入れてくるのって親父の威光を笠に着てる感は有るな。
ノーランが撮ったりジェームズ・ワンが撮ったりしたらもっとエンタメでもっと面白くなるんだろうが、この位の面白さがちょうど良いんだろうな。
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