林檎とポラロイドのレビュー・感想・評価
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記憶喪失が蔓延する世界で…
記憶喪失が蔓延する世界、リンゴが好きなこと以外の記憶をなくした男が[記憶回復プログラム]で次々と与えられるミッションを行っていくのだが……という記憶喪失もの。
しかし、観終わってもスッキリはしない…(^^;
確かに、ホラー映画を観るミッションで知り合った同じ境遇の女性との恋愛ものにも見えるが、その愛をはっきり女性に伝わったか…というと微妙。
奇妙な映画を観ながら、「これは何か凄い結末が待っているのか?」などと期待しすぎたかも知れない。
一回ぐらい観ても良いかも知れないが、オススメできる映画には見えなかった。
【”消えゆく記憶の中で如何に人間としての尊厳を守れるのか”。クリストス・ニク監督がオリジナル脚本で撮影したデビュー作。独創的な世界観の元、展開されるストーリー描写は秀逸である。】
■バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていた。
覚えているのはリンゴが好きなことだけ。
男は治療のため、回復プログラム“新しい自分”に参加することに。
毎日リンゴを食べ、さまざまなミッション
・自転車に乗る
・仮装パーティで友達を作る
・ホラー映画を観る
・バーで酒を飲み女を誘う
彼は、人間の尊厳を失う事無くこなし、新たな経験をポラロイドに記録していく…。
◆感想
・フライヤーによると今作品のクリストフ・ニク監督は、リチャード・リンクレーターの「6歳のボクが、大人になるまで。」や鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の「女王陛下のお気に入り」の助監督を務めた方だという。
作品を観ると、リチャード・リンクレーターの人間性肯定の姿勢が、しっかりと貫かれ、ヨルゴス・ランティモスの独自な世界観の如き、架空の世界が見事に描き出されている。
・男は、ホラー映画を観た際に知り合った女性と、バーに飲みに行くが、SEXはしない。(したことにするが、ポラロイドカメラには収めない。)
彼は、回復プログラムを指示する人たちに、従うが人間性を越えた行為には自制心を持って、及ばない。
<今作は、哀愁とユーモアを漂わせつつ”どうすれば記憶を失っても人間としての尊厳を守れるか”という切実な問いかけを鑑賞側に投げつけてくる。
クリストフ・ニク監督の次作は、この作品に惚れ込んだケイト・ブランシェットがプロデュースし、キャリー・マリガンが主演でハリウッドで製作が決定したそうである。
実に楽しみである。>
喪失と再生の物語
映像が美しく、無駄なものが省かれた服装や室内の装備などがとても素敵。
光の加減や生活音の心地よさに浸ってゆく。
奇病のため記憶を失い、それにより居場所を失った人々に施される奇妙な行動療法の滑稽さに時々笑ったり、目頭が熱くなったり静かに感情が揺らいでいた。
冒頭からそうではないかという予感がしていて、多分それは当たっている。
ラストシーンまでの流れがとても自然なことと、主人公の中年男性の無表情がミスリードを上手く誘っていて、お見事。
ヒントは至るところに散りばめられているけど、仕掛けに目隠しされてわかりにくいかも。
観たあとにそれらを思い返してみると、とても切なくて辛くて、でも優しい気持ちになる。
機会があったら映画館でも観たい。
忘れてしまう、忘れたい、忘れたくない
個人的にものすごく刺さり、エンディングのあとしばらく自分でも驚くほど涙が溢れて止まりませんでした。
静かで奇妙でシュールで寂しくて、優しい映画です。
人間はどうしても(忘れたくないことも忘れていいことも)忘れてしまうし、逆に忘れたいことを忘れられない。忘れてしまうということは辛く苦しく、「忘れていってしまう」苦しみの只中にいるくらいならいっそ全てをすっぱり忘れられれば良いのに人間の記憶はそう都合良くはない。そうした苦しみの中で、しかし忘れたくないと想うことの美しさ・ひたむきさを描いた映画だと受け取りました。
全体的に肝心な言葉が少なく、観ている側はこれってどういうことなんだろう?これってもしかして……?と探り探り理解を深めていく作品です。だからこそ、色々と繋がった時に濁流のように主人公の苦しみ、悲しみ、愛が押し寄せ、心がぐちゃぐちゃになりました。
そしてこうした人間の記憶のままならなさ、みたいな話を、写真などの外部デバイスによる記憶の保存は本当の意味では記憶の保存たりえないのでは?ということに繋げているのは見事な構成だと思います。シュールな治療を通じて、体験そのものより写真を撮影してその体験を記録しようとすることが大事になってしまうばかばかしさがあらわになる問題提示の仕方、好きです。
パンフレットに載っていたCINEUROPAの評で、チャーリー・カウフマン、ミシェル・ゴンドリー、スパイク・ジョーンズなどの世界観を彷彿とさせるとありましたが、チャーリー・カウフマンとスパイク・ジョーンズの大ファンである自分に刺さったのも道理かもしれません。しかもクリストス・ニク監督は自分が大大大好きなヨルゴス・ランティモスの助監督をやられていたということで……。映画館でなんとなく見かけてなんの前情報もなく観たのですが、ある種刺さるべくして刺さった映画でした。
シュールなジョークを後から振り返るとそれが効いてくる、みたいな仕掛けが好きな人間には刺さる。
※元々ネタバレ注意にはしていますが、以下は映画の核心部分に触れるので改めて注意です。初見は絶対にネタバレのない状態で観てほしい映画なので……。
自分は薄々大切な人を亡くしたのかな……?と思いながら観つつ、お墓のシーンで愛する人の死を確信して以降もうすでに号泣していたのですが、最後林檎を食べるシーンで……タイトルや話やら、全てが押し寄せて滂沱の涙……。
薄々気づいてはいたが改めて突きつけられるとびっくりするほど泣いてしまった、というのだと(完全に個人的な感想でしかないんですが)シックス・センスを初めて観た時のことを思い出しました。個人的には一番観た後の感覚が近いのはシックス・センスです。
林檎は記憶力保持に良い、ということを元に、忘れたい、忘れたくないという苦しみをここまで素晴らしいシーンとして仕立てたのは見事としか言いようがありません。
とにかく林檎を買うのを急いでやめてオレンジを買うシーンからのラスト林檎を齧るシーンの流れがたまらない、大好きです。
また、主人公はどの段階から記憶が戻っていたのか?または最初からそもそも記憶を失っていなかったのでは?ということについては、監督はあえてそこを色々な解釈ができる形で描いているのかな?と自分は思いました。これはもう何周か観たら変わるかもしれない意見ですが……。
今の自分は最初から記憶を失ってはいなかったが、苦しみによる抑圧(ないし防衛本能)で記憶や自我を失っていると言って良い状態ではあったまま揺れ動いていた、という感じかなと思っています。自分を制御できていないような印象を受けるシーンがままあったので。
なんであれ忘れたまま(本当は忘れていないにせよ)でも、これは嫌だったんだな、とか後から振り返ると全てのシーンが立ち上がってくる構成は本当に素晴らしいです。
追記:
DVDにて二度目の鑑賞(2022/11/26)
二度目で分かった状態で観てみると、やはり初めから全く記憶を失っていなかった、という解釈で良いのではという気がしました。
愛しいヒゲモジャと林檎
表情の少ないヒゲモジャが可愛く見えてくる不思議!
林檎めっちゃ食べたくなるし、
プールのシーンも好き。
レトロなインテリア、車、小物たちも好き。
SONYのラジカセ?みたいのありました。
記憶テストの時の医師たちもかわいい。
この不思議な世界観、好みでした。
今の気分にもちょうどよかった。
ちゃんと最後までよかった。
これがデビュー作とは。
ケイト・ブランシェットが惚れ込んだと言うことですが、今後の作品も楽しみです。
これ見てから、林檎を買いがちです。
ホントは、どうだったのか?
彼はプログラムを利用したのか?
それとも、しだいに思い出したのか?
観るものの想像力をかきたてる作品。
一夜限りのアヴァンチュールを彼は受け入れたのか?そうであってほしくないような、そうだったら辛い過去から距離を置けるのか?
謎だらけだけど、心の機微が描かれているようにも思える。
どういう内容なのかが気になって観たのですが…。私の理解が及ばない作品でした。観る人を選ぶ作品なのかもしれません。
ポスターや予告映像を観て
気になったので鑑賞したのですが…
困りました。
普通、観た作品に対して涌いてくる
何らかの感情。 たとえば
楽しい とか
哀しい とか
面白い とか
怖いよ とか
そういったものが、何も頭に
浮かんでこないのです。 う~ん …。
前衛的な作品の場合、鑑賞者の
感性に合うか合わないか、があると思うのですが
この作品に関しては何とも。。
ときおり
この作品を思い出しつつ、2週間経過。
本当に何もなかったか、記憶に残らなかったのか
と、さらに自己探求。
う~ん。 … うん?
ひげ男 ?
あぁ。
主人公のカオ ですか。
う~ん確かに。
やたらとアップの場面が多くて
目立ってました。
主人公だけでなく
登場人物(男)にやたら 「あごひげ」 のキャラが
多かった気もします。
というわけでこの作品は、
「ひげ男を満喫する作品」 だったと言うことで。
(…では無いと思いマス)
…
ともあれ
何とも言いようの無い作品でした。
これから他の方のレビューを見て回ろうと思っています。
何か重要なコトを見落としていたりするのかも。。
最後に
もう一つ思い出しました。
主人公のひげ男さん。
病人の口元にスープのスプーンを持っていくスピード
「速すぎ」
あれでは、飲み込む時間が…
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
哲学的。ただ、それだけ。
罰ゲームだがな、こりゃ全く。
あー、忘れたい、忘れたい、忘れたい。
リンゴ食うの止めよ。
やっぱヤメタ。
忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない。
リンゴ食おう。
と言う、男の葛藤しない葛藤の、物語らない物語り。
多国籍合作に名作無し。のワタクシ的法則通りの眠たい映画だった。と言うか、寝た。かなり。
面白くなかった
記憶を失った男は、治療のための回復プログラムに参加した。毎日送られてくるカセットテープの内容に従い、様々なミッションをこなしていった。そんな中、同じく回復プログラムに参加してる女と出会い、親しくなった。新しい思い出を作るためのミッションによって、過去が徐々にわかってくるという話。
なんだかよくわからないストーリーで面白くなかった。
ポラロイドというと
《メメント》思い出すのね。記憶も絡んでるし、ポラロイド使うから。
記憶を無くした人にやらせることがエグいよね。なんの意味があるのか。
治療方針に則ってやってるだけと割り切ってるのに、気持ちは残ってしまうとかいいね。
主人公は記憶なくしてないね、これ。
なくした振りをがんばってやってるけど、所々で、記憶を持ってる痕跡が出てしまう。
かなり早めに勘づいてしまう
記憶喪失者が多発する世界。
その中で主人公も記憶喪失になり、更生プログラムに参加する。
時に誤魔化しつつもプログラムをちゃんとこなす主人公が微笑ましいが、このプログラムが中々容赦ない。
問題になるよ普通笑。
コスプレパーティーでの知り合いいますか?のシーンは笑った。
ただ、記憶喪失うんぬんとにかく主人公の挙動がおかしい。
それも含めて、観ていてかなり早めにあることに気付いてしまう。
その実は…の部分が明らかになるのが面白さの一つかなと思った。だから、もう少し分かりづらくして、後で分かるようにしても良かった気がする。
林檎は意外と長持ちする
記憶喪失が蔓延する世界という設定でありながらオカルトやSFでないのは面白い。
記憶の回復プログラムを遂行していく中でストリッパーや犬のシーンなど、ん?と思わせるヒントがあり、オレンジでかなり確信に変わり、そういえばあのシーンもと思い出す。
最後のミッションで喪失を受け入れる決心をしたラストは前向きで良い。
かなり好きな作品。
リンゴの食べ方の違いとトイレですることの難しさ
いきなり記憶喪失になる人が増えている世の中。彼らへの支援が確立されているのは面白い。眼の前の人が記憶喪失だなとわかると皆が救急車を呼ぶ世界。なんかやさしい。
そんな記憶喪失になったうち、身元不明のままの人が受けるプログラム。新しい自分を作り上げていこうとするものなのだが、これが少し不思議なもの。カセットテープでミッションが送られてくるところからして不思議。それにクラブのトイレで誰かとセックスしてこいってミッションは相当ハードルが高い。こんなミッションこなせないなと思いながら観てしまった。
映画「ブレードランナー」でレプリカントと人間の違いは記憶だから、思い出に関する質問をしていくうちに人間ではないと判定できるテストがあった。それくらい人間にとって記憶は大事なもの。それがなくなってしまうのは全く違う人間になるってことだ。
でも、違う人間でいた方が幸せだったってこともある。とても皮肉的で悲しい結末だった。
たんたんと進む展開に結構退屈してしまったのも正直な感想なのだが、観終わった印象はそこまで悪くない。それにしてもリンゴの食べ方にも文化の違いって出るんだなと違うところで感心してしまった。
自分を作っている、「記憶」
突然記憶喪失になってしまう奇病が蔓延する世界。発症すると救急車で運ばれて「新しい自分」になるための様々なミッションをこなしてはポラロイドに撮ってアルバムに溜めていく…というギリシャ作品。「記憶と自己形成」ということを一緒に考えさせられる。淡々と静かな感じもすき。
記憶がまったくなくなると、クリスマスが何だかも、この食べ物を自分が好きかもわからない。それって「自分」なのか?自分のかなりの部分を記憶つまり経験が作ってるんだと気付かされるよね。そして、この主人公、もしかして何か辛いことでもあって発病したフリしてた?とも思った。そう考えると、冒頭で頭を打ち付けるような行動をしていたのもしっくりくる。忘れたい人、忘れたい記憶があるのかな。
最後に、記憶にいいと言われる林檎を食べているのも象徴的。
暗い気分に浸りたい人向け
時代が80年代のような感じで、カセットプレイヤー、オープンリール、ポラロイドカメラなどが使われる。今ならスマホで全部済む。記憶喪失が流行り病のようになっている。記憶を回復するためのプログラムがひどい。特に余命短い人と仲良くなって亡くなったら葬式に出るなど、あんまりだ。
楽しいところや好きなところが全然なく、とにかく暗い。暗い気分に浸りたい人向き。
ネタバレすると主人公は奥さんに先立たれて悲しみのあまり記憶喪失を偽装している。
意外に謎を解くスタイルか
自然に疑問が湧いて解答が提示される。
まず、謎の音。
近所の犬。
何故、林檎?
何故、ポラロイド?
何故、自転車?
映画の紹介にある記憶喪失が蔓延する社会とあるが、作中ではそこまでではなく、どうやら感染もないらしいことがすぐにわかる(感染がないので周りの人がとても親切)。
ポラロイドは仲間を見分ける識別信号として役に立つ(携帯電話のカメラでは役に立たない)。
歌が下手とかダンスが上手いとかは意味がなかったかもしれない。
歌が下手なことより歌詞を覚えていることが大事なんだが、やはり下手な歌は上手い歌より気になってしまう。
物語中盤で薄々気が付くようになっているが、最後に謎がとけて半分はスッキリする。
特殊な社会問題とそこで起きるドラマという構造はつい最近みたポゼッサーよりこちらのほうが随分とスッキリ昇華されている。
日常生活に散りばめられる悲哀
いきなり記憶がなくなる病が蔓延してる世界でのお話。その前提を頭に入れて鑑賞した方がいいです。それがないと「ん?何が起きてる?」ってなっちゃいます。僕がそーでした(笑)
さて、本作。シリアスと思いきや何気に笑えるんですよねー。特に治療ミッションへの取り組みについては、なんだか4コマ漫画を見てるみたい。しっかりオチがあるんですよね。そんな「クスっ」を散りばめながら物語が進むのですが、それ以上になんとも悲哀が漂うのです。その悲哀はなぜ漂うのか?というと・・・ってところが本作のミソかなぁって思いました。
人間って過去の嫌なこと、悲しいこと、辛いことっって忘れちゃいたいけど、不思議に覚えてますよね。楽しかった事以上に(これは個人差あるかな?)もしかしたら、楽しい成功体験よりもネガティブな出来事の方がもしかしたら「自分らしさ」があるのかもしれないです。思ったことを考えなくやったら失敗したとか、自分の考えを押し通したら失敗した・・ってありますもん。まぁその積み重ねが成功につながっていくわけですが。
そんなことを考えていると、本作の主人公が治療プログラムを通してちょっとずつ自分というものに触れていく様はそれが要因なのかなぁ?なんて思ったりして。どうなんだろうなぁ。そう考えたら、世の中って悲しみや辛いことが溢れているのかな?・・・あぁ、記憶喪失になりたくなってきちゃった。
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