「【記憶をめぐる…】」記憶の技法 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【記憶をめぐる…】
抑揚のない演出に好き嫌いはあると思うが、原作のおそらく意図するところを、丁寧に伝えようとすることが感じられる。
多分、映画の途中から、そんな大事件なのであれば、早く検索すれば良いのにと思う人も多いと思う。
記憶の検索ワードという表現も出てきて尚更だと感じる。
自分もそうだった。
だが、自分の記憶の奥底に潜むキーとなる出来事から、呼び起こされる記憶と、検索して得られる情報には明らかに違いがあると、途中、気がつく。
それは、普段生活する中で、記憶に留めて自分の言葉で話す人と、検索を多用するだけで、上部で話す人の説得力の無さの違いにも感じることに近い。
実感が異なるのだ。
凄惨な事件を背景に、華蓮が自ら封じ込めた記憶には、自分にしか解き放つことが出来ない何か鍵となるピースが必要だった。
華蓮の、
封じ込めた記憶、
取り戻したい記憶、
二つの家族との葛藤と、
生き残ったという事実の裏に潜む真実と記憶。
華蓮をあなたと呼ぶ怜の、
忘れたい事実と、
封じ込めることのできない記憶。
金魚屋の青年の、
向き合い続けた事実、
良心の呵責と、
すがって来た記憶。
これらの対比が、凄惨な場面を描かずとも、淡々と綴られる物語のなかで、観るものの心を締め付けて行く。
僕達、人間だけが持つ、記憶をめぐる出来事と、僕達だけに与えられた記憶をめぐる葛藤を表した佳作だと思う。
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