「「新事実」というよりは「答え合わせ」に近いかな」トゥルーノース 思いついたら変えますさんの映画レビュー(感想・評価)
「新事実」というよりは「答え合わせ」に近いかな
実際に北朝鮮に足を運んだ人や、運良く脱北できた人達の肉声での証言は現在某Tubeにゴロゴロ転がっている。この、世界的に見てもブラックボックス化された国家について、より生々しい情報が欲しいならそちらを掻き集めた方がダイレクトではある(ゴシップ色が強い編集のは避けた方がいいと個人的には思うけど)が、絵的なディテールを付随したことでそれが「どうむごいのか」がぬくぬくと暮らせている我々にも漸く伝わる側面は確実にある。本作はCG・音楽ともにそれ程予算を注いだようには感じないが、その中で伝えるべき感触を的確に伝える努力は最大限認められる。
この映画はオリジナルキャラクターである青少年の心の機微を追うドラマ仕立てにはなっているしそっち中心にレビューを書こうと思えば書けるが、さほどエンタメを主食として観るようにできた作りではないと思った。観た人が今まで聞きかじった情報のジグソーピースをこの映画の空欄にはめ込んで、朧気ながらその国の実像を俯瞰した様な体験ができるかが肝要だと思う。
まあ最低限「首都とそれ以外の地域は生活レベルが格段に違う」程度の知識があれば引っかからずに観れると思うし、余裕も尊厳も奪われた中で人はどう振る舞うか、寄り添うか、奪うか、その両面を共感せざるを得ない条件のもとに描いたのはちゃんとしてると思う。
個人的には...本作の主な舞台は一番末端の暮らしである収容所であり、冒頭は平壌の富裕層の家が垣間見えるが、その中間の農村暮らしやそこで目を光らせる軍人の様子、或いは脱北後~移民成功までの映像などが描かれなかったのは少し心残りだ。外国人拉致者だとか将軍至上的教育の輪郭はサワリ程度だが拾っているのでやろうと思えばできたと思うんだが...ただ現状のバージョンでも画が保つギリギリの長さだったので、何でもかんでも詰めて料理を間違うと逆に全部が伝わりにくくなる恐れはあるし、今のままでも充分雄弁な映画ではある。