「驚異の“顔芸”」トゥルーノース Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
驚異の“顔芸”
東京国際映画祭2020で鑑賞した。
童謡の「赤とんぼ」が流れるので、何故だろう?と思ったら、主人公の一家は「在日朝鮮人の帰還事業」で北朝鮮に渡ったのだという。
2ヶ月以上前なので、かなり忘れてしまったが、今でも鮮明に覚えているのは、キャラクターの“表情の豊かさ”である。
一見すると、一昔前のCGで、お世辞にも美しいとも、滑らかとも言えない。大げさな表情はしないし、身体の動きも少しぎこちない。
ディズニーなどの、目・口・眉毛などのパーツを大きく動かして、分かりやすい表情を作っていく、人形的なCGとは異なる。
にもかかわらず、微妙な表情や目線や身体の動きで、感情が伝わってくるのだ。怒り、悲しみ、傲慢、そして飢餓・・・。
観ている側の“日常感覚”が呼び覚まされるためかもしれない。同じ東アジア人であることは、表情を読み取る助けになっている。
また人物だけでなく、荒れた収容所のようすや、寒々した月夜など、“環境”の表現も真に迫っている。
アニメであることによって、表現は純化され、実写にありがちな作り物っぽい“嘘くささ”がない。
長編にもかかわらず、クオリティは一貫しており、妥協の跡がない。
映画の内容は、過酷な環境で生き抜く人々を描いた、リアルで恐ろしいストーリーである。“看板に偽りなし”だ。
そして、「ネタバレ厳禁」と言えるだろう。
ラストで「えっ?!」となることは、請け合いである。
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